写すだけ万葉集

海蔵寺まで秋みつけに行って来ました.夏から咲いている花の加え,タマスダレ,シュウメイギク,さらにはシオンといった秋の花もしっかり咲き始めていました.コムラサキも色づいて秋の風情.そして,海蔵寺といえば萩.山門脇の萩は,咲き始めたばかりでしたが,境内の株は,かなり開花が進んで,三分咲きといってよいかと思います. 萩原を朝たちくれば枝はさもをればをれよと花咲きにけり 和泉式部  萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなき 源実朝  

午後,鎌倉海蔵寺まで散歩. 夏の名残を残した花たちに加え,秋の花も咲き始めていました. ハナトラノオは夏から咲いている花ですが,タマスダレは秋の花. タカサゴフヨウは夏の花.トキワマンサクは春の花ですが,秋にも咲くようです. シュウメイギクは…

秋の夕(ゆうべ)・秋の夕暮(ゆうぐれ)を詠った短歌  東京は真夏日.西日本は猛暑.「秋の夕暮」に思いをはせることがなかなかできません. さびしさに宿を立ち出でて眺むれば何処も同じ秋の夕暮 良暹  寂しさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮 寂蓮  心なき身にもあはれは知られけり鴨立つ沢の秋の夕暮 西行  見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮 藤原定家  おどけたる一寸法師舞ひいでよ秋の夕(ゆふべ)のてのひらの上 与謝野晶子

今日は,「秋の夕(ゆうべ)」「秋の夕暮(ゆうぐれ)」の短歌を取り上げようと昨日から決めていたのですが---- 厳しい残暑がつづきます. 東京は真夏日.西日本は猛暑.9月の最高気温を示したところもあるようです. https://tenki.jp/forecaster/deskpart…

立秋/秋立つを詠んだ短歌  明日は立秋.「とても秋とは言えない」と,評判の悪い日です.しかし,夏至と秋分の中間点.太陽の運行は,着実に秋を目指しています. 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行  秋立つと人はつげねど知られけりみ山の裾の風のけしきに 西行  かの青き空のかがみにあらはれてさやかに秋の来たるを見ずや 太田水穂  秋立つは水にかも似る/洗はれて/思ひことごと新しくなる 石川啄木  針箱はなつかしきもの秋くれば針の光りの身をそそるかも 今井邦子

今日は大暑の最後の日. 晴れていながら時々雨がザーッと降るといった1日でした.奄美大島付近に停滞している大きな台風の影響が,鎌倉にまで及んでいるようです. 昨日今日は,「大暑の末候:大雨時行 たいうときどきにふる」に合致しているとも言える日で…

雷を詠んだ短歌 暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.雷を表す日本語としては,古くは「いかずち」もしくは「なるかみ」が一般的だったようです. 雷神(なるかみ)の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ 柿本人麻呂  逢ふことは雲居はるかに鳴神(なるかみ)の音に聞きつつ恋ひわたるかな 紀貫之  鳴神(なるかみ)の鳴らす八鼓(やつつみ)ことごとく敲(たた)きやぶりて雨晴れにけり 正岡子規  岩根ふみ天路(あまぢ)をのぼる脚底ゆいかづちぐもの湧き巻きのぼる 斎藤茂吉

大暑のほぼ中日の今日8月1日. 昨日までと同様,暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.東京は正午頃よりとのことでしたが, https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2023/08/01/24498.html 鎌倉は午後2時過ぎから1時間以上,稲妻と大雨に見…

浜木綿の蕾が一つ,見事に開きました.鎌倉おんめ様(大巧寺)の浜木綿です. み熊野の浦の浜木綿いはずとも思ふ心の数を知らなむ 源実朝  もろかりし妻のいのちをおもひおれば浜木綿の花に虹のいきほふ 川田順  夕立の雨をしのぎて浜木綿のつぼみ持てる茎ふとぶとと伸ぶ 植松壽樹  はまゆふのそよがぬ闇の汝を抱き盗人のごと汗ばみにけり 高野公彦

このところ,毎晩通るおんめ様(鎌倉大巧寺)には浜木綿があります.今年は三つの蕾がつきましたが,一つは咲き終わり,残りは二つ. そして,今日通りがかったとき,一つのはまだ蕾のままでしたが--- 一つが見事に開きました! 浜木綿の語源は,「浜に咲く…

シダレヤナギ/ヤナギ (キントラノオ目の植物8) 多くの日本人がイメージする柳は,シダレヤナギかと思います.学名はSalix babylonicaですが,バビロンにこの柳はありません.聖書の詩篇137篇の冒頭に記載されている木(ヘブライ語からするとポプラを意味する)が柳だと長く誤解されていたため,babylonicaが種小名となりました.万葉集に詠まれていることから,日本へは奈良時代後期までに渡来していたと考えられます.春さればしだり柳のとををにも妹(いも)は心に乗りにけるかも 万葉集

キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています. 今日は,シダレヤナギ(枝垂柳)/ヤナギ(柳) https://en.wikipedia.org/wiki/Salix_babylonica ヤナギは,スミレとともに,キントラノオ目の中で最もよく目にする植物でしょう. ヤナ…

花菖蒲を詠んだ短歌  ハナショウブは,野生するノハナショウブを改良した園芸種.ノハナショウブは,幻の花花かつみの候補とも(をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ恋もするかも).ハナショウブの育種は,江戸時代にさかんに行われ,現在は,日本だけではなく世界に広がっています. 花菖蒲かたき蕾は粉しろしはつはつ見ゆる濃むらさきはも 木下利玄  濃艶に咲きて日に照る花菖蒲風ふきくれば紫に揺る 大岡博  咲き萎えて摘み捨てられし花菖蒲泥のうえにてなお濃むらさき 久々湊盈子

昨日訪れた横須賀しょうぶ園では,沢山の種類のハナショウブを楽しむことができました. ハナショウブは,日本に野生するノハナショウブを改良した園芸種です. ニッポニカによれば https://kotobank.jp/word/ハナショウブ-1577863 はじめに沢山の品種が生み…

柘榴(ざくろ)の花を詠んだ短歌  宝戒寺の庭に柘榴の花が咲いていました.他の花ではなかなか見られない朱色で,吉岡幸夫氏ははねず色のはねずを柘榴としています. 長かりしわが昏々(こんこん)を照らすごと柘榴は朱(あけ)の花に満ちたり 木俣修  つやつやと青きに交るくれなゐの柘榴の花よ雨はあがりて 千代国一  まなじりを上げておもえば短か夜を柘榴の花の散りつくす風 馬場あき子  力あるくれなゐを虚空(そら)に開くかな柘榴の花となるを得しかば 稲葉京子

今日は,昨日の寒い雨から一転して,暖かな晴れた1日.夕方散歩は,少し早めに出て,宝戒寺まで. 本殿横の柏槇は,いつ見ても立派です. 鎌倉の寺院に多い樹木.大きさでは建長寺や円覚寺に及ばないものの,樹形の美しさではどこの木にも引けを取りません.…

卯の花/ウツギを詠んだ短歌(再掲)  3種のウツギ属の赤花ーベニバナバイカウツギ・サクラウツギ・サラサウツギーが,この五日間ほどの間に,全て開花しました! どれもかわいらしい花です. けふも又のちもわすれじ白たへのうの花にほう宿と見つれば 紀貫之  五月雨もむかしに遠き山の庵(いほ)通夜する人に卯の花生けぬ 与謝野晶子  卯の花のこぼれ咲く崖のした道をいくばく登りて小鳥のこゑ澄む 北見志保子  高舘(たかだて)の卯の花清水なつかしも晴れゆく風に土の香の立つ 馬場あき子

バイカウツギが,一輪,咲きました.大好きな花で,毎年楽しみにしています. 5月は,卯月.卯の花の季節ですが,バイカウツギはウツギ属ではなく別属のバイカウツギ属. わが家には,このバイカウツギ以外に,ウツギ属の花が4種あります. 既にほぼ咲き終…

センダン(栴檀)/オウチ(楝)の花を詠んだ歌 栴檀の花が咲いていました.上品な花.古来短歌に詠まれてきたのがよくわかります. 妹(いも)が見し 楝(あふち)の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干(ひ)なくにも 山上憶良  ゆふぐれになりつつのこる明るさに楝花咲く下にて遊ぶ 岡麓  羽根そよがせ雀楝の枝に居り涼しくやあらむその花かげは 北原白秋  栴檀はうすむらさきの雪のごと花咲きてしあわせなりしかの日よ 石川不二子 

鎌倉本覚寺(日朝様)の境内には,センダン(栴檀)の大木があり,花が咲いていました! 近くで見るのは初めてです. とても上品な花. 古来,多くの歌人に取り上げられてきたのがよく分かります. また,詩人三木露風も「せんだんの花のうす紫/ほのかなる…

鶯を詠んだ短歌  姿を見せないことが多いウグイスですが,鳴き声は古来から愛されてきたウグイス(同属のフィリピンウグイスは似ていますが異なる鳴き声です)は,万葉の頃から歌に詠まれてきました. 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも 大伴家持  うちなびき春さり来ればひさぎ生ふる片山かげに鶯ぞなく 源実朝  あたたかき心こもれるふみ持ちて人思ひ居れば鶯のなく 伊藤左千夫  世をかへてあらたに君を恋ひむ日も同じ声もてうたへ鶯 川田順

春から初夏は,鳥の鳴き声を特に多く聴くことができるように思います. 昨日,観音崎公園を歩いたときにも聞こえてくるのですが,鳥の名前は分かりません. 唯一分かるのが鶯. 今の時期,鎌倉の山道や山沿いの寺院でも鶯の鳴き声をたくさん聴くことができま…

杜若を詠んだ短歌(一部再掲)  アヤメと違って古くから歌題となっていたのがカキツバタ.アヤメ,カキツバタの他,エヒメアヤメ、ノハナショウブ、ヒオウギアヤメ、シャガ、ヒメシャガ、ヒオウギが日本に自生するアヤメ属です. かきつばた扇つかへる手のしろき人に夕の歌書かせまし 与謝野晶子  かきつばた一つ残れる紫に梅雨(さみだれ)の池みなぎらんとす 土屋文明  かきつばたふふめる莟(つぼみ)待ちてわがひとり淋しむ六十年を 福田栄一

昨日,アヤメを詠んだ短歌を紹介しました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/04/24/235550 アヤメは日本人に長く親しまれてきた割には,短歌に取り上げられたのは近世以降. それに対し,古くから歌題となっていたのがカキツバタです. …

藤の花を詠んだ歌 我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑(ゑ)まひを 大伴家持  わが楣(のき)に藤の花房垂りそめて時はしづけき怪しきまでに 吉野秀雄  藤棚はあした小(お)暗し咲き垂るる藤の花尖(さき)みな光持つ 宮柊二  活殺は天のこころとおもふまで大白藤の花のゆたけし 伊藤一彦  夕明かりにかすかに藤の花揺れてのぞみ湧く今朝着きゐし葉書 川口美根子  蜜蜂が花粉に足を太くして咲きにぎはへる藤のなかとぶ 奥村晃作

一昨日出かけた.鎌倉浄妙寺では,白萩がほぼ満開で,良い香りとともに楽しんできました. 白藤のある鎌倉のお寺としては,英勝寺がよく知られています. 今日出かけてみたのですが,大きな藤棚にポツポツ咲いているだけでした.見頃になるまでには,まだ時…

春深し / 山吹を詠んだ歌 春のさなかを過ぎた頃を表す言葉に「春深し」という語があります.桜が散り山吹が咲くころにあたります.  春深み嵐の山の桜花咲くと見しまに散りにけるかな,おのづからあはれとも見よ春ふかみ散りゐる岸の山吹の花 源実朝  春深み井手のかわ水かげそへばいくへか見えむ山吹の花 大江匡房  春日影移るともなく照り渡るさ庭まばゆき山吹の花 今井邦子  春はやも闌(た)けゆく花の山吹にいくつ小蜂の翅音澄みたり 木俣修 

今年の春は,すざましい勢いで進んでいます.鎌倉では3月には桜が散りはじめ,今日のニュースでは,青森弘前の桜が満開になっているとのこと. https://www.hirosakipark.jp/sakura/2023/04/13888/ 「春深し」と詠った短歌 桜が散り,春のさなかを過ぎた頃…

ツツジ・シャクナゲ(大船フラワーセンターで出会った春の花 3)/ツツジ・シャクナゲを詠んだ短歌  ツツジは晩春,シャクナゲは初夏の季語なのに既に開花. ---つつじ花 にほえ娘子桜花栄え娘子汝れをぞも我れに寄すといふ/万葉集 茵華(つつじばな)匂ふ少女が玉手もて摘みつる春の木の芽めしませ 橘曙覧  夏早く至れる山や草叢にはげしく紅き躑躅の静まり 宮柊二  白つつじあやにくにして燃ゆるかなゆえありてわれは人を裏切る 馬場あき子  石楠花のはなの下かげ眼とぢゐる女仏の顔ぞ身に沁む 岡野弘彦

一昨日出かけた大船フラワーセンターの花と,その花を詠った短歌(見つけられた場合のみですが)を取り上げています.今日は--- ツツジとシャクナゲ フラワーセンターに行ったのは4月2日. 例年ならツツジやシャクナゲはまだ咲いていない時期ですが---どちら…

菫を詠んだ短歌  野の春の花の代表といえばスミレ.先日も源氏山で出会いました.ヨーロッパで最初に記録されたのは,デーメーテール賛歌.日本で最初に記録されたのは万葉集.春の野にすみれ摘みにと来し(こし)われそ野を懐かしみ一夜(ひとよ)寝にける 山部赤人  すみれ咲く横野のつばな生ひぬれば思ひ思ひに人かよふかな 西行  十九(つづ)のわれすでに菫を白く見し水はやつれぬはかなかるべき 与謝野晶子  どっとかしいで終わつてしまう一生をえんざんすみれの種がはじける 鳥海昭子

春は花の季節ですが,野の花の代表といえば,スミレ. 先日,鎌倉源氏山を散策したときにも,何回か出会いました.多分,タチツボスミレ. (タチツボスミレ https://buna.info/article/2224/ 薄い紫色の花をたくさんつけている株があれば、まずタチツボスミ…

鴨を詠んだ短歌(1)  冬場の鎌倉八幡宮・源氏池は鴨の池になっていました.名前を調べてみると「オナガガモ」.雄と雌は異なる装い.北の国からやつて来た渡り鳥. 葦辺行く鴨の羽がいに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 志貴皇子   起きながら明かしつるかなともねせむ鴨の上毛の霜ならなくに 和泉式部  あし鴨のよるべのみぎはつららゐてうき寝をうつす沖の月かげ 藤原定家

先日訪れた,八幡宮の源氏池は,鴨の池になっていました. 正月の池にはカモメも沢山混じつていましたが. 鳥に全く疎い私には,何という名前の鴨か分かりません. 雄と雌は,異なる装い. ネットを調べた結果,オナガガモと判明. https://ja.wikipedia.org…

十二月・師走・極月を詠んだ短歌  陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.極月とも.  牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも 釈迢空  綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し 馬場あき子  極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃 馬場あき子  恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心 俵万智

12月に入って,一週間. わが家の冬の定番ビオラの苗を植えて二週間.大分育ってきています. 陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています. 語源としては「師(僧)が忙しく走り回る月」説が広まっていますが,「為果つ月(一年の…

けやき(つき)・けやきの落葉を詠んだ歌  古事記の歌謡にも詠われ,神聖視されてきたケヤキ.江戸幕府が植栽を奨励したため,特に関東地方に多く見られます.古名は槻. とく来ても見てましものを山背(やましろ)の高(たか)の槻群(つきむら) 散りにけるかも 高市連黒人  うらさむき今朝の日和に風たちて欅の枯葉散り騒ぐなり 若山牧水  

最もよく見かける落葉樹の1つ,ケヤキ. 特に関東地方に多いように思いますが,これは,江戸時代に幕府が奨励したためとのこと. (関東近郊に立派なケヤキが多いのは、徳川幕府がその植栽を奨励したことにちなむ。江戸時代には橋げたや船、海苔を養殖する…

木の葉散る・落葉を詠った歌  英勝寺までの散歩の道すがら,沢山の落葉に出会いました.多くが色あせた中に鮮やかな葉も.「こゝかしこ さだめなく とび散らふ 落葉」の季節   石にまどひ木の根にまどひ落葉らはおのがまにまにたむろせるみゆ 伊藤左千夫  風いでて落葉しきりに降る音す酔へどもさびし肘曲げて寝む 吉井勇  たどきなく耳を澄ませば身もだえて落葉を急ぐ木々と思ほゆ 大西民子 

黄葉の季節は,また,落葉の季節でもあります. 昼前に英勝寺まで散歩した際の画像です.多くは色あせた姿ですが,鮮やかな色彩を保った葉も混ざってきます. 「落葉」という言葉は,古事記でも使われている語ですが,万葉集には詠まれず,平安時代の短歌に…

桂 / 桂を詠んだ歌  古事記ではヤマサチビコが登り,万葉集では月の中の木として詠われました.ハート型のかわいらしい葉は,秋には見事に黄葉し,その時期に高まる芳香で人々を和ませます.  川添の木むらの桂黄葉せり添水(そうず)をおとせ小屋の戸口に 岡麓   真野の宮 砌(みぎり)におつる秋の葉の桂のもみぢ すでに 色濃き 釈迢空

歌人たちは,古来より,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉も歌に詠んできました.そのような歌を取り上げています. 今日は「桂」.詠まれた歌はあまり多くないようですが.かわいらしい葉は大好きです. https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/122539 古…

様々な楓の種 & 紅葉(もみじ/こうよう)を詠った短歌[1]  日本で最もよく見るカエデ属の植物は,イロハモミジ(いろは紅葉,伊呂波紅葉、学名:Acer palmatum).葉の切れ込みが鋭いのが特徴で,園芸品種も多数あります.ヤマモミジ,オオモミジは変種とされるようになっています.  秋山の黄葉を茂み迷はせる妹を求めむ山道知らずも 柿本人麻呂  経(たて)もなく緯(ぬき)も定めずをとめらが織れる黄葉(もみぢ)に霜な降りそね 大津皇子  見る人もなくて散りぬる奥山のもみぢは夜の錦なりけり 紀貫之  

秋の紅葉を代表する樹木,カエデ/カエデ属にはおよそ160種あるとされています(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Acer_species). 一方,日本は,楓を代表とする秋の紅葉をとりわけ好む国民といえ,数多くの短歌の歌題とされてきました. 今日・明日…

鎌倉円覚寺の山門前・駐車場のカエデは,かなりきれいに紅葉している株がいくつかありました.カエデは漢字では「楓」,一般的には「もみじ」と呼ばれる事が多いかと思いますが,漢字「楓」,呼び方「もみじ」には,歴史的にややこしいことがいくつかありますので,整理してみました. 我が宿にもみつ蝦手(かへるで)見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし 田村大嬢  月に見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ 湯原王

イチョウと並んで,紅葉(黃葉)する樹木の代表と言えば,カエデ(楓)ですね. 北鎌倉円覚寺まで,楓の紅葉探索に行ってきました.昨日のことです. 見頃は11月下旬から12月初旬ですが,きれいに紅葉している株にも出会うことができました.特に山門の外と…

昨日と同じ散歩コース:源氏山〜海蔵寺の樹木の写真をお届けします.木の実を見つけられなかった樹ですが,木の実の画像はネット上からお借りします. エノキ,オニグルミ,サカキ,タブノキ,ネムノキ,クヌギ,カツラ,モミジ.  吾が門(かと)の榎の実もり喫(は)む百(もも)千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ  子持山若かへるでのもみつ まで寝もと我(わ)は思ふ汝(な)はあどか思ふ 東歌 万葉集  

昨日は,鎌倉源氏山の木の実/草の実の画像をお届けしました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/ 今日は,同じ散歩コースの樹木の画像を集めてみました. 全て実をつける木ですが,その実を見つけられなかった木と言い換えても良いかと思います.そこ…

身近な秋の実1  秋はドングリ以外にも多くの木の実がみのる季節.この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します.チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で.マンリョウ,センリョウ,サンザシが真っ赤になるまでにはまだ時間がかかりそうです.一方,妙法寺で出会ったサネカズラの実は,この時期でも一部は赤く鮮やか.美しい実です. 名にし負(お)はば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら人に知られで くるよしもがな 三条右大臣

秋は木の実の季節でもありますね.昨日は取り上げた安国論時には,ドングリが沢山落ちていました. 今日は,この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します. チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で. この時期の木の実はまだ青いものばかり. お…

ナデシコを詠んだ歌(1)  万葉時代のナデシコは「瞿麥(クバク)」等で表記されます.「なでしこ」が「撫子」と表記されるようになるのは,平安時代になってから.女性に例えられることが多いナデシコですが,万葉集では男性に例えた歌もあります.   なでしこが花見るごとに娘子(をとめ)らが笑(ゑ)まひのにほひ思ほゆるかも 大伴家持  朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも 笠郎女  うら恋し我が背の君はなでしこが花にもがもな朝な朝な見む 大伴池主

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 今日は最後に残ったナデシコ. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)花 山上憶良 万葉集 巻八 一五三八 芽之…

葛(くず)を詠んだ歌(1) 基本的に葛は山で自生する植物.花はかわいらしいとは思いますが---特に愛でる対象ではないようにも思います.実際,枕草子では,「草の花は(64段)」ではなく,「草は(36)」で取り上げられています. 夏葛(なつくず)の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも 大伴坂上郎女  真葛原(まくずはら)靡(なび)く秋風吹くごとに阿太(あだ)の大野の萩(はぎ)の花散る 作者不詳

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)花 山上憶良 万葉集 巻八 一五…

朝皃 / キキョウ 桔梗を詠んだ歌(1) 山上憶良の「朝皃之花」は「桔梗」とするのが一般的.桔梗以外の候補は,木槿,朝顔(現在の).牧野富太郎博士はこれらの候補を否定し, 新撰字鏡で桔梗のふりがなに「阿佐加保」があることから,「朝皃=桔梗」説を後押ししました.枕草子には桔梗と朝顔が併記されているのですが---  臥(こ)いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝貌の花 作者不詳  我が目妻(めづま)人は放(さ)くれど朝貌の年さへこごと我は離(さか)るがへ  東歌

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 紹介というのはおこがましく,いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)…

オミナエシを詠んだ歌(1) オミナエシの「おみな」は「をみな」で,「おんな」の古語! 万葉集では,「姫部志」など,美しい女を表す字があてられています.スイカズラ科オミナエシ属に分類され,オトコエシの「米花」に対し.「栗花」と呼ばれることも. をみなへし 秋萩折れれ 玉桙(たまほこ)の 道行きづとと 乞はむ子がため   石川老夫  高圓(たかまと)の 宮の裾廻(すそみ)の 野づかさに 今咲けるらむ をみなへしはも 大伴家持 

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 紹介というのはおこがましく,いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)…

ススキ(すすき/薄/芒)を詠んだ短歌1  万葉集で,ススキは詠んだ歌は三六(古今短歌歳時記)とも,四一(楽しい万葉集),四六(ニッポニカ)とも言われています. 数え方によって大きく異なるのは,「かや」を詠んだ歌をススキを詠んだ歌とするかどうか,さらには,「かや」に「草」をいれるかどうかによるようです. 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の都の仮廬(かりほ)し思ほゆ 額田女王  めずらしき君が家なる花薄穂に出づる秋の過ぐらく惜しも 石川広成 

鎌倉・栄福寺跡の公園のススキの穂は,花が開ききって,秋を実感させてくれました. 栄福寺:鎌倉市/史跡永福寺跡 源頼朝が建立した寺院.源義経,藤原泰衡など,頼朝の奥州攻めで亡くなった武将たちの鎮魂のため,平泉の中尊寺二階大堂等を模して建立され…