写すだけ万葉集

椿を詠んだ短歌1 大船フラワーセンターには,沢山の椿の品種をあつめた一角があります.椿の花は大好きなのですが,傷ついた花が多いのがやや残念.赤角倉という品種のみが,傷のない見事な赤花を咲かしていました. あしひきの八峰(やつを)の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君 大伴家持  とやかへる鷹尾山(たかのをやま)の玉椿霜をば経とも色はかはらじ 大江匡房  積藁の上に大樹の山椿丹念に落す花深紅なり 北原白秋  静かなる椿の花よ葉ごもりに咲きて久しき椿の花よ 若山牧水

昨日立ち寄った大船フラワーセンター. ビオラや菜の花が咲き乱れ,春を感じさせてくれました. 蜜蜂も蜜集め・花粉集めに大忙し. 春の花でありながら,私はなぜか春をあまり感じないツバキ. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/02/20/000…

春雨・春の雨を詠んだ短歌1  今日の夕方の江ノ島はかすんでいました.しとしと降る春の雨のためです.春雨と春の雨を分ける考え方もあるようですが,古来,春ふる雨を春雨と呼んだと思われます. 衣手の名木(なぎ)の川辺を春雨にわれ立ち濡ると家思ふらむか 柿本人麻呂歌集  わがせこが衣はるさめ降るごとに野辺の緑ぞ色まさりける 紀貫之  水の上にあや織り乱る春の雨や山の緑をねべて染むらむ 伊勢  花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る 式子内親王

今日の片瀬東浜はしとしと雨.東浜から見ると右手が江ノ島. 夕方の江ノ島はかすんでいました. (鎌倉から江ノ島近くの片瀬海岸に引っ越しました) 左手がやはり雨にけぶる腰越漁港. “今の時期の雨は,「春の雨」と呼び,3月下旬から4月頃のいつまでも続…

梅の花を詠んだ短歌5 鎌倉光則寺まで梅を求めて.境内の梅は三分咲きと入つたところ.幹や枝には風格を感じさせる老木も. 梅の花香をかぐはしみ遠けども心もしのに君をしぞ思ふ 市原王  春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくくる 凡河内躬恒  ひとはいさこころもしらずふるさとは花ぞ昔の香ににほいける 紀貫之  梅が香を谷ふところに吹きためて入り来む人に染めよ春風 西行  今すぎし小靴のおとも何となく身にしむ夜なり梅が香ぞする 与謝野鉄幹

今日の梅探索は,鎌倉長谷の光則寺まで.鎌倉駅西口から,大谷戸-鎌倉大仏を通る行程は,それほど苦にならない距離です. その光則寺までの道中,梅には出会わず. ストック,エリカ,サザンカ--- 光則寺の門の手前にかなり立派な臘梅.満開でした. 境内に…

梅の花を詠んだ短歌3  昨日の午後,雨がやんだ直後に,鎌倉浄明寺まで散歩.人は少なく,静かに散策でき,雨あがりで,花たちが元気に見えました. 今日降りし雪に競ひてわが宿の冬木の梅は花咲きにけり 大伴家持  降る雪に色まどはせる梅の花鶯のみやわきてしのばむ 菅原道真  わが宿の八重の紅梅咲きにけり知るも知らぬもなべて訪はなむ 源実朝  しら梅の衣(きぬ)にかをると見しまでよ君とは云はじ春の夜の夢 茅野雅子  つくづくと憂にこもる人あらむこのきさらぎの白梅の花  斎藤茂吉

昨日も今日も,鎌倉は,雨模様の日が続きました.寒くは厳しくはなかったものの. 昨日の午後,雨がやんだ直後に,鎌倉浄明寺まで散歩.とはいっても行きはバスを使いましたが. 雨のせいもあり,人は少なく,静かにお参り・散策できました. かなり以前のお…

梅の花を詠んだ短歌1 鎌倉宝戒寺まで散策.梅の開花の様子を探索しつつ.早咲きの梅は三分〜五分咲き.源平池脇の白梅は八分咲き  春さればまづ咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ 山上憶良  我が宿の梅の花散るひさかたの天(あま)より雪の流れ来るかも 大伴旅人  酒杯(さかづき)に梅の花浮かべ思ふどち飲みての後は散りぬともよし 大伴坂上郎女  君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をもしる人ぞしる 紀友則

鎌倉妙本寺では,もう紅梅が5分咲きで,白花も咲き始めていました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2024/01/14/235421 今日の散歩は,英勝寺-鶴岡八幡宮-宝戒寺.梅の開花の様子を探索しつつ. 今咲いている梅は,早咲きの品種と思われます…

蝋梅・臘梅を詠んだ短歌  冬の鎌倉妙本寺では,梅が咲き始め,ロウバイはほぼ満開になつていました.  しらじらを障子を透す冬の日や室(へや)に人なく臘梅の花 窪田空穂  臘梅の莟も花も啄(ついば)みし鵯(ひよ)は来らず日和つづくに 福田栄一  うつし手に折るとも素心蝋梅は神のいろをぞ咲くやこの花 高橋幸子  臘梅の花ほつほつと新年の窓に顕(た)たせてひそかなるかな 高嶋健一  たがはずに咲ける素心蝋梅の雪従へてうら稚(わか)き花 西村尚

昨日の散歩は.冬の鎌倉妙本寺へ. 寒さが続いていますが,暖冬なのでしょう. 早くも紅梅は5分咲きといったところ. 白花もチラホラ咲き始めていました. そして,満開だったのがロウバイ.栽培品種のソシンロウバイ素心蝋梅ですね. ロウバイは,このブロ…

鷺を詠んだ短歌1 正月の源平池には観光客の鯉用の餌を目当てにカモメがやって来ますが,大晦日,由比ヶ浜で出会いました.サギの仲間は田んぼや河で餌探しをするものだとばかり思っていましたが,海岸でも餌探しをするとのこと.  池神の力士舞かも白鷺の桙啄(く)ひ持ちて飛び渡るらむ 長忌寸意吉麻呂  夕立の雲間の日かげ晴れそめて山のこなたを渡る白鷺 藤原定家  秋ちかき月夜の空に声ほそく五位鷺啼けばそよぐ木々の葉 四賀光子  雲ひとひら月の光をさへぎるはしら鷺よりもさや 太田水穂

能登半島大地震で幕を開けた2024年の三が日が終わろうとしています.倒壊家屋の下には,まだ多数の被災者が--- 夕方鶴岡八幡宮へ. 源平池の鴨は,いつもより少ない---夕方だったせいかもしれません.例年,昼間に来ていたときには,鴨に加えカモメも沢山来…

寒しを詠んだ短歌1  今日の夕方の鎌倉由比ヶ浜は,海も空も寒々とした雰囲気で,人の姿はまばら.それでも,高校生は元気はつらつ.寒い浜辺で跳びはねての記念撮影.  ふもと行く舟人いかに寒からんくま山岳をおろす嵐に 西行  夜を寒み浦の松風吹きむせび虫明(むしあけ)の波に千鳥鳴くなり 源実朝  きしきしと寒さに踏めば板軋(きし)む/かへりの廊下の/不意のくちづけ 石川啄木  

フラワーショップには,ポインセチアが並ぶ年の瀬.今年もあと2週間をきりました. 暖冬の長期予報ですが,このところ寒い日が続きます. 今日の夕方の由比ヶ浜は,風がないため極寒というわけではありませんでしたが,海も空も寒々とした雰囲気で,人の姿は…

しはす・師走を詠んだ短歌  今日は「真冬なみの寒さ」との報. ”一年で最も寒い時期の気温を下回ると『真冬並み』という表現を使っています” とのこと. 「真冬なみ」の日があって当然.年の瀬,師走12月に入って,早くも5日たったのですから. 十二月(しはす)には沫雪(あわゆき)降ると知らねかも梅の花咲く含(ふふ)めらずして 紀小鹿郎女/万葉集  牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも 釈迢空  綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し 馬場あき子

今日の鎌倉は太陽はほとんど出ることのない1日でした.ウェザーニュースでは「真冬なみの寒さ」との報が. 明日以降はまた暖冬に戻るようですが--- https://tenki.jp/forecaster/gureweather/2023/12/05/26420.html ところで,この「真冬なみ」とは,どのよ…

万葉集には「夕焼け」は詠まれていない!?  今日は強風下浜へ降りることなく夕焼けを撮影.この2週間の夕焼けの画像を集めてみました.同じ構図でも画像は異なります. 海神(わたつみ)の豊旗雲(とよはたくも)に入日さし今夜の月夜(つくよ)さやけくありこそ 中大兄  あかねさす日の暮れゆけばすべをなみ千たび嘆きて恋ひつつぞ居る 作者不詳  夕焼小焼大風車のうへをゆく雁が一列鴉(からす)が三羽 北原白秋  夕映えの雲あかくしてそことなく浜なでしこの安房の国見ゆ 与謝野晶子

風の強い1日でした. 夕方由比ヶ浜まで出かけたのですが,浜には人っ子一人いません.浜に降りようとすると目に砂が飛び込んでくる! 夕焼けは,海岸の国道から撮影. 11月13日のブログ記事でも触れましたが,11月になってから晴れた日の夕方散歩は由比ヶ浜…

明月院へ行って来ました.カエデの紅葉は,まだこれからかと思いますが,木によってはかなり色づいていました.本堂後庭園から見た,カエデに囲まれた悟りの窓はなかなか.秋咲きのリンドウも庭にマッチしていました. このたびは幣(ぬさ)もとりあへず手向山もみぢの錦神のまにまに 菅原道真  もみぢ散る野原を分けて行く人は花ならぬまた錦着るべし 西行  木がらしにふきなびかへりかへるでの紅葉の諸葉葉先ちぢれて 三ヶ島葭子

日中,とても暖かな風が吹いた今日,明月院へ行った来ました. まだ,11月で,カエデの紅葉にはやや早い時期でしたが,晩秋の風情は十分楽しめました. 北鎌倉駅を降りてすぐの円覚寺.山門手前のカエデは,とても美しく紅葉していました. カエデの紅葉は,…

落葉を詠んだ短歌1 寒さが際立つ中,鎌倉寿福寺まで.常緑樹がほとんどの境内に中,イチョウは黄色い葉を落としていました. 山おろしの月に木の葉を吹きかけて光にまがふ影を見るかな 西行  流れゆく木の葉のよどむ江にしあれば暮れてののちも秋の久しき 源実朝  落葉して月の色のみしろがねのうてなさびたるよるの木枯(こがらし) 小沢蘆庵  石にまどひ木の根にまどひ落葉らはおのがまにまにたむろせるのみ 伊藤左千夫  真冬日のひたと射し照る落葉山越えいそぎつつ心は散らず 若山牧水

寒い1日でした. 大阪では,木枯らし一号が吹いたそうで,明日は更に冷え込むようです.つい最近夏日だったので,寒さが際立ちますが,ようやく晩秋らしくなったということですね. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231111/k10014254891000.html https:…

秋草を詠んだ短歌  辞典では,秋草は「秋に花の咲く草」.雑草たちも花は咲かせますから,秋草と言ってもいいのですが---  秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たなむ 大伴家持  吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 文屋康英  今朝のあさの露ひやびやと秋草やすべて幽(かそ)けき寂滅(ほろび)の光 伊藤左千夫  一桶の水うちやめばほろほろと露の玉ちる秋草の花 正岡子規  秋草にうもれて返り咲くつつじ浅間はあはき噴煙(けむり)をまとふ 大西民子

「秋草」ときいて--- 私が思い浮かべるのは雑草たち. 草取りをさぼったわが家の庭には,秋の雑草が生い茂っています. 今年元気なのはイノコヅチ.今まで少なかったのに---.カラムシは近くで見かけたもの. 通りがかった建築用地.エノコログサが全面を覆…

海蔵寺まで秋みつけに行って来ました.夏から咲いている花の加え,タマスダレ,シュウメイギク,さらにはシオンといった秋の花もしっかり咲き始めていました.コムラサキも色づいて秋の風情.そして,海蔵寺といえば萩.山門脇の萩は,咲き始めたばかりでしたが,境内の株は,かなり開花が進んで,三分咲きといってよいかと思います. 萩原を朝たちくれば枝はさもをればをれよと花咲きにけり 和泉式部  萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなき 源実朝  

午後,鎌倉海蔵寺まで散歩. 夏の名残を残した花たちに加え,秋の花も咲き始めていました. ハナトラノオは夏から咲いている花ですが,タマスダレは秋の花. タカサゴフヨウは夏の花.トキワマンサクは春の花ですが,秋にも咲くようです. シュウメイギクは…

秋の夕(ゆうべ)・秋の夕暮(ゆうぐれ)を詠った短歌  東京は真夏日.西日本は猛暑.「秋の夕暮」に思いをはせることがなかなかできません. さびしさに宿を立ち出でて眺むれば何処も同じ秋の夕暮 良暹  寂しさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮 寂蓮  心なき身にもあはれは知られけり鴨立つ沢の秋の夕暮 西行  見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮 藤原定家  おどけたる一寸法師舞ひいでよ秋の夕(ゆふべ)のてのひらの上 与謝野晶子

今日は,「秋の夕(ゆうべ)」「秋の夕暮(ゆうぐれ)」の短歌を取り上げようと昨日から決めていたのですが---- 厳しい残暑がつづきます. 東京は真夏日.西日本は猛暑.9月の最高気温を示したところもあるようです. https://tenki.jp/forecaster/deskpart…

立秋/秋立つを詠んだ短歌  明日は立秋.「とても秋とは言えない」と,評判の悪い日です.しかし,夏至と秋分の中間点.太陽の運行は,着実に秋を目指しています. 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行  秋立つと人はつげねど知られけりみ山の裾の風のけしきに 西行  かの青き空のかがみにあらはれてさやかに秋の来たるを見ずや 太田水穂  秋立つは水にかも似る/洗はれて/思ひことごと新しくなる 石川啄木  針箱はなつかしきもの秋くれば針の光りの身をそそるかも 今井邦子

今日は大暑の最後の日. 晴れていながら時々雨がザーッと降るといった1日でした.奄美大島付近に停滞している大きな台風の影響が,鎌倉にまで及んでいるようです. 昨日今日は,「大暑の末候:大雨時行 たいうときどきにふる」に合致しているとも言える日で…

雷を詠んだ短歌 暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.雷を表す日本語としては,古くは「いかずち」もしくは「なるかみ」が一般的だったようです. 雷神(なるかみ)の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ 柿本人麻呂  逢ふことは雲居はるかに鳴神(なるかみ)の音に聞きつつ恋ひわたるかな 紀貫之  鳴神(なるかみ)の鳴らす八鼓(やつつみ)ことごとく敲(たた)きやぶりて雨晴れにけり 正岡子規  岩根ふみ天路(あまぢ)をのぼる脚底ゆいかづちぐもの湧き巻きのぼる 斎藤茂吉

大暑のほぼ中日の今日8月1日. 昨日までと同様,暑くなると覚悟していたところ,午後から激しい雷雨.東京は正午頃よりとのことでしたが, https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2023/08/01/24498.html 鎌倉は午後2時過ぎから1時間以上,稲妻と大雨に見…

浜木綿の蕾が一つ,見事に開きました.鎌倉おんめ様(大巧寺)の浜木綿です. み熊野の浦の浜木綿いはずとも思ふ心の数を知らなむ 源実朝  もろかりし妻のいのちをおもひおれば浜木綿の花に虹のいきほふ 川田順  夕立の雨をしのぎて浜木綿のつぼみ持てる茎ふとぶとと伸ぶ 植松壽樹  はまゆふのそよがぬ闇の汝を抱き盗人のごと汗ばみにけり 高野公彦

このところ,毎晩通るおんめ様(鎌倉大巧寺)には浜木綿があります.今年は三つの蕾がつきましたが,一つは咲き終わり,残りは二つ. そして,今日通りがかったとき,一つのはまだ蕾のままでしたが--- 一つが見事に開きました! 浜木綿の語源は,「浜に咲く…

シダレヤナギ/ヤナギ (キントラノオ目の植物8) 多くの日本人がイメージする柳は,シダレヤナギかと思います.学名はSalix babylonicaですが,バビロンにこの柳はありません.聖書の詩篇137篇の冒頭に記載されている木(ヘブライ語からするとポプラを意味する)が柳だと長く誤解されていたため,babylonicaが種小名となりました.万葉集に詠まれていることから,日本へは奈良時代後期までに渡来していたと考えられます.春さればしだり柳のとををにも妹(いも)は心に乗りにけるかも 万葉集

キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています. 今日は,シダレヤナギ(枝垂柳)/ヤナギ(柳) https://en.wikipedia.org/wiki/Salix_babylonica ヤナギは,スミレとともに,キントラノオ目の中で最もよく目にする植物でしょう. ヤナ…

花菖蒲を詠んだ短歌  ハナショウブは,野生するノハナショウブを改良した園芸種.ノハナショウブは,幻の花花かつみの候補とも(をみなへし 佐紀沢に生ふる 花かつみ かつても知らぬ恋もするかも).ハナショウブの育種は,江戸時代にさかんに行われ,現在は,日本だけではなく世界に広がっています. 花菖蒲かたき蕾は粉しろしはつはつ見ゆる濃むらさきはも 木下利玄  濃艶に咲きて日に照る花菖蒲風ふきくれば紫に揺る 大岡博  咲き萎えて摘み捨てられし花菖蒲泥のうえにてなお濃むらさき 久々湊盈子

昨日訪れた横須賀しょうぶ園では,沢山の種類のハナショウブを楽しむことができました. ハナショウブは,日本に野生するノハナショウブを改良した園芸種です. ニッポニカによれば https://kotobank.jp/word/ハナショウブ-1577863 はじめに沢山の品種が生み…

柘榴(ざくろ)の花を詠んだ短歌  宝戒寺の庭に柘榴の花が咲いていました.他の花ではなかなか見られない朱色で,吉岡幸夫氏ははねず色のはねずを柘榴としています. 長かりしわが昏々(こんこん)を照らすごと柘榴は朱(あけ)の花に満ちたり 木俣修  つやつやと青きに交るくれなゐの柘榴の花よ雨はあがりて 千代国一  まなじりを上げておもえば短か夜を柘榴の花の散りつくす風 馬場あき子  力あるくれなゐを虚空(そら)に開くかな柘榴の花となるを得しかば 稲葉京子

今日は,昨日の寒い雨から一転して,暖かな晴れた1日.夕方散歩は,少し早めに出て,宝戒寺まで. 本殿横の柏槇は,いつ見ても立派です. 鎌倉の寺院に多い樹木.大きさでは建長寺や円覚寺に及ばないものの,樹形の美しさではどこの木にも引けを取りません.…

卯の花/ウツギを詠んだ短歌(再掲)  3種のウツギ属の赤花ーベニバナバイカウツギ・サクラウツギ・サラサウツギーが,この五日間ほどの間に,全て開花しました! どれもかわいらしい花です. けふも又のちもわすれじ白たへのうの花にほう宿と見つれば 紀貫之  五月雨もむかしに遠き山の庵(いほ)通夜する人に卯の花生けぬ 与謝野晶子  卯の花のこぼれ咲く崖のした道をいくばく登りて小鳥のこゑ澄む 北見志保子  高舘(たかだて)の卯の花清水なつかしも晴れゆく風に土の香の立つ 馬場あき子

バイカウツギが,一輪,咲きました.大好きな花で,毎年楽しみにしています. 5月は,卯月.卯の花の季節ですが,バイカウツギはウツギ属ではなく別属のバイカウツギ属. わが家には,このバイカウツギ以外に,ウツギ属の花が4種あります. 既にほぼ咲き終…

センダン(栴檀)/オウチ(楝)の花を詠んだ歌 栴檀の花が咲いていました.上品な花.古来短歌に詠まれてきたのがよくわかります. 妹(いも)が見し 楝(あふち)の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干(ひ)なくにも 山上憶良  ゆふぐれになりつつのこる明るさに楝花咲く下にて遊ぶ 岡麓  羽根そよがせ雀楝の枝に居り涼しくやあらむその花かげは 北原白秋  栴檀はうすむらさきの雪のごと花咲きてしあわせなりしかの日よ 石川不二子 

鎌倉本覚寺(日朝様)の境内には,センダン(栴檀)の大木があり,花が咲いていました! 近くで見るのは初めてです. とても上品な花. 古来,多くの歌人に取り上げられてきたのがよく分かります. また,詩人三木露風も「せんだんの花のうす紫/ほのかなる…

鶯を詠んだ短歌  姿を見せないことが多いウグイスですが,鳴き声は古来から愛されてきたウグイス(同属のフィリピンウグイスは似ていますが異なる鳴き声です)は,万葉の頃から歌に詠まれてきました. 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも 大伴家持  うちなびき春さり来ればひさぎ生ふる片山かげに鶯ぞなく 源実朝  あたたかき心こもれるふみ持ちて人思ひ居れば鶯のなく 伊藤左千夫  世をかへてあらたに君を恋ひむ日も同じ声もてうたへ鶯 川田順

春から初夏は,鳥の鳴き声を特に多く聴くことができるように思います. 昨日,観音崎公園を歩いたときにも聞こえてくるのですが,鳥の名前は分かりません. 唯一分かるのが鶯. 今の時期,鎌倉の山道や山沿いの寺院でも鶯の鳴き声をたくさん聴くことができま…

杜若を詠んだ短歌(一部再掲)  アヤメと違って古くから歌題となっていたのがカキツバタ.アヤメ,カキツバタの他,エヒメアヤメ、ノハナショウブ、ヒオウギアヤメ、シャガ、ヒメシャガ、ヒオウギが日本に自生するアヤメ属です. かきつばた扇つかへる手のしろき人に夕の歌書かせまし 与謝野晶子  かきつばた一つ残れる紫に梅雨(さみだれ)の池みなぎらんとす 土屋文明  かきつばたふふめる莟(つぼみ)待ちてわがひとり淋しむ六十年を 福田栄一

昨日,アヤメを詠んだ短歌を紹介しました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/04/24/235550 アヤメは日本人に長く親しまれてきた割には,短歌に取り上げられたのは近世以降. それに対し,古くから歌題となっていたのがカキツバタです. …

藤の花を詠んだ歌 我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑(ゑ)まひを 大伴家持  わが楣(のき)に藤の花房垂りそめて時はしづけき怪しきまでに 吉野秀雄  藤棚はあした小(お)暗し咲き垂るる藤の花尖(さき)みな光持つ 宮柊二  活殺は天のこころとおもふまで大白藤の花のゆたけし 伊藤一彦  夕明かりにかすかに藤の花揺れてのぞみ湧く今朝着きゐし葉書 川口美根子  蜜蜂が花粉に足を太くして咲きにぎはへる藤のなかとぶ 奥村晃作

一昨日出かけた.鎌倉浄妙寺では,白萩がほぼ満開で,良い香りとともに楽しんできました. 白藤のある鎌倉のお寺としては,英勝寺がよく知られています. 今日出かけてみたのですが,大きな藤棚にポツポツ咲いているだけでした.見頃になるまでには,まだ時…

春深し / 山吹を詠んだ歌 春のさなかを過ぎた頃を表す言葉に「春深し」という語があります.桜が散り山吹が咲くころにあたります.  春深み嵐の山の桜花咲くと見しまに散りにけるかな,おのづからあはれとも見よ春ふかみ散りゐる岸の山吹の花 源実朝  春深み井手のかわ水かげそへばいくへか見えむ山吹の花 大江匡房  春日影移るともなく照り渡るさ庭まばゆき山吹の花 今井邦子  春はやも闌(た)けゆく花の山吹にいくつ小蜂の翅音澄みたり 木俣修 

今年の春は,すざましい勢いで進んでいます.鎌倉では3月には桜が散りはじめ,今日のニュースでは,青森弘前の桜が満開になっているとのこと. https://www.hirosakipark.jp/sakura/2023/04/13888/ 「春深し」と詠った短歌 桜が散り,春のさなかを過ぎた頃…

ツツジ・シャクナゲ(大船フラワーセンターで出会った春の花 3)/ツツジ・シャクナゲを詠んだ短歌  ツツジは晩春,シャクナゲは初夏の季語なのに既に開花. ---つつじ花 にほえ娘子桜花栄え娘子汝れをぞも我れに寄すといふ/万葉集 茵華(つつじばな)匂ふ少女が玉手もて摘みつる春の木の芽めしませ 橘曙覧  夏早く至れる山や草叢にはげしく紅き躑躅の静まり 宮柊二  白つつじあやにくにして燃ゆるかなゆえありてわれは人を裏切る 馬場あき子  石楠花のはなの下かげ眼とぢゐる女仏の顔ぞ身に沁む 岡野弘彦

一昨日出かけた大船フラワーセンターの花と,その花を詠った短歌(見つけられた場合のみですが)を取り上げています.今日は--- ツツジとシャクナゲ フラワーセンターに行ったのは4月2日. 例年ならツツジやシャクナゲはまだ咲いていない時期ですが---どちら…

菫を詠んだ短歌  野の春の花の代表といえばスミレ.先日も源氏山で出会いました.ヨーロッパで最初に記録されたのは,デーメーテール賛歌.日本で最初に記録されたのは万葉集.春の野にすみれ摘みにと来し(こし)われそ野を懐かしみ一夜(ひとよ)寝にける 山部赤人  すみれ咲く横野のつばな生ひぬれば思ひ思ひに人かよふかな 西行  十九(つづ)のわれすでに菫を白く見し水はやつれぬはかなかるべき 与謝野晶子  どっとかしいで終わつてしまう一生をえんざんすみれの種がはじける 鳥海昭子

春は花の季節ですが,野の花の代表といえば,スミレ. 先日,鎌倉源氏山を散策したときにも,何回か出会いました.多分,タチツボスミレ. (タチツボスミレ https://buna.info/article/2224/ 薄い紫色の花をたくさんつけている株があれば、まずタチツボスミ…

鴨を詠んだ短歌(1)  冬場の鎌倉八幡宮・源氏池は鴨の池になっていました.名前を調べてみると「オナガガモ」.雄と雌は異なる装い.北の国からやつて来た渡り鳥. 葦辺行く鴨の羽がいに霜降りて寒き夕べは大和し思ほゆ 志貴皇子   起きながら明かしつるかなともねせむ鴨の上毛の霜ならなくに 和泉式部  あし鴨のよるべのみぎはつららゐてうき寝をうつす沖の月かげ 藤原定家

先日訪れた,八幡宮の源氏池は,鴨の池になっていました. 正月の池にはカモメも沢山混じつていましたが. 鳥に全く疎い私には,何という名前の鴨か分かりません. 雄と雌は,異なる装い. ネットを調べた結果,オナガガモと判明. https://ja.wikipedia.org…