海蔵寺まで秋みつけに行って来ました.夏から咲いている花の加え,タマスダレ,シュウメイギク,さらにはシオンといった秋の花もしっかり咲き始めていました.コムラサキも色づいて秋の風情.そして,海蔵寺といえば萩.山門脇の萩は,咲き始めたばかりでしたが,境内の株は,かなり開花が進んで,三分咲きといってよいかと思います. 萩原を朝たちくれば枝はさもをればをれよと花咲きにけり 和泉式部  萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなき 源実朝  

午後,鎌倉海蔵寺まで散歩.

夏の名残を残した花たちに加え,秋の花も咲き始めていました.

 

ハナトラノオは夏から咲いている花ですが,タマスダレは秋の花.

タカサゴフヨウは夏の花.トキワマンサクは春の花ですが,秋にも咲くようです.

シュウメイギクは夏の終わりから咲き始め10月までは咲いてくれます.

キバナコスモスは,コスモスの名前がついているのに,夏から咲いていますね.

関東でもすっかり当たり前になったツマグロヒョウモンが,蜜を求めて花から花へ飛び回っていました.

 

海蔵寺は萩の寺としてもよく知られています.秋を探して歩いた今日の目的の一つは,「萩は開花しているか」です.

遠くから見ると,開花はまだのように見えましたが--

よく見ると,赤花,白花ともに開花していました.夏前からもわずかに開花が見えた萩ですが,その時よりは明らかに多い数の花をつけていました.

ノウゼンカズラの花はもう終わったとばかり思っていましたが,いくつかの花が開花していました.

キキョウは秋の花とされますが,しっかり切り戻さないと秋には咲きません.手入れが行き届いていました.

フヨウは,夏を通して咲き続け,9月半ばの現在も楽しめます.

コムラサキがすっかり色づいていました.昨日出かけたおんめさま(大巧寺)の小径ではここまでの色づきは見られませんでしたが.

名前はよく聞くシオン(紫苑).実際に咲いている姿は,あまり見かけたことがありませんが,ここ,海蔵寺では,手入れされた姿を毎年楽しむことができます.

山門脇の萩は,咲き始めたばかりでしたが,境内の株は,かなり開花が進んで,三分咲きといってよいかと思います.

 

万葉集で,最も沢山詠われている花,萩.その後も多くの歌人が歌題としています.

萩を詠んだ短歌は昨年すでに取り上げていますが,

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/09/16/234946

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/09/17/232436

以下,再録しておきます.

 

我が岡の 秋萩の花 風をいたみ 散るべくなりぬ 見む人もがも  大伴旅人 万葉集巻八,1542 

 

我が宿(やど)の 一群(ひとむら)萩を 思ふ子に 見せずほとほと 散らしつるかも  大伴家持 万葉集巻八,1565

 

我が宿の萩の下葉は秋風もいまだ吹かねばかくぞもみでる  大伴家持 万葉集巻八,1628

 

真葛原 靡く(なびく)秋風 吹く毎に 阿太(阿陀)の大野の 萩が花散る  作者不詳  万葉集巻10,2096

 

秋萩の花咲きにけり高砂の尾上の鹿や今や鳴くらむ  藤原敏行 古今集・秋上,二一八

 

宮城野のもとあらの小萩露を重み風を待つごと君をこそ待て  作者不詳 古今集・恋,六九四

 

萩原を朝たちくれば枝はさもをればをれよと花咲きにけり  和泉式部 和泉式部集,一二八

 

萩の花暮々までもありつるが月出でて見るになきがはかなき  源実朝 金槐集・秋,一八八

 

真萩散る庭の秋風身にしみて夕日のかげぞ壁に消えゆく  永福門院 風雅集・秋上,四六八

 

萩むらにすでにこもらふ虫のこゑ朝な夕なを隣りて住めば  北原白秋 風隠集 

 

萩がもと花しらじらと散りしきて夕うすら日のかげにじみたり  五島美代子 暖流

 

青あをとうちなだれつつ繁りたる萩一叢の庭のするどさ  宮柊二 日本挽歌

 

ひたぶるに人を恋ほしみ日の夕べ萩ひとむらに火を放ちゆく  岡部弘彦 冬の家族

 

もみじするやさしき季節ひらくごとひそかに零(こぼ)るる山萩の紅(あけ)  川口美根子 桜しぐれ