ユリを詠んだ短歌2 さ百合花後(ゆり)も会はむと思へこそ今のまさかもうるはしみすれ 大伴家持  うつつなり眠り薬の利(き)きごころ百合の薫りにつつまれにけり 長塚節  裏山の青萱(あいがや)ぬけいで咲く百合の涼風のむた大きくゆらげり 木下利玄  散歩道(プロムナド)の果に百合咲く喫茶店(カフェ)ありて二人して聴く牧神の午後 植木昭夫  ちご百合の花も愛でしや西行の捨て身のこころ分りはじめつ 川口美根子  

今日は,雲の多い1日.それでも夕方には,富士を見ることができました.

 

午後,近くのお寺,常立寺に立ち寄り,参拝.

庭の片隅に,オニユリ,そしてヤマユリが咲いていました.

日本はユリの大国で,自生種が15種,その内8種は固有種と言われています.その中でも代表的な種といえば,オニユリヤマユリの名が上がるのでは?

テッポウユリを挙げる方も多いかもしれません.イギリス教会のマドンナリリーに取って代わったとされる白百合です.イースターリリーと呼ばれているとか.

https://en.wikipedia.org/wiki/Lilium_longiflorum

https://en.wikipedia.org/wiki/Lilium

世界で大人気の園芸種「オリエンタルハイブリッド」は,日本のユリをベースに開発されました.中でもヤマユリはその中心的な役割を果たしているそうです.

日本で最も多く見るハイブリッド種カサブランカもその一つ.

関東地方では残念ながら見ることがないササユリは,万葉集にも詠まれている気品のあるユリです.

 

ユリを詠んだ短歌2

(古今短歌歳時記より)

 

さ百合花後(ゆり)も会はむと思へこそ今のまさかもうるはしみすれ  大伴家持 万葉集 巻8 四〇八八

 

うつつなり眠り薬の利(き)きごころ百合の薫りにつつまれにけり  長塚節 長塚節歌集

 

内陣のひだりに右に供花いく種山百合の香のもっともつよし  土岐善麿 遠隣集 

 

裏山の青萱(あいがや)ぬけいで咲く百合の涼風のむた大きくゆらげり  木下利玄 みかんの木

 

白百合の花びら蒼み昏れゆけば拾ひ残せし骨あるごとし  五島美代子 風

 

散歩道(プロムナド)の果に百合咲く喫茶店(カフェ)ありて二人して聴く牧神の午後  植木昭夫 花の修羅

 

ちご百合の花も愛でしや西行の捨て身のこころ分りはじめつ  川口美根子 桜しぐれ

 

もうゆりの花びんをもとにもどしてるあんな表情を見せたくせに  加藤治郎 サニー・サイド・アップ

 

 

ユリを詠んだ短歌1

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/25/235652

あぶら火の光に見ゆる我が鬘(かづら)さ百合の花の笑(え)まはしきかも  大伴家持 (万葉集 巻十八・四〇八六)

 

筑波嶺(つくはね)のさ百合の花の夜床(ゆとこ)にも愛(かな)しけ妹(いも)ぞ昼も愛(かな)しけ  大舎人部千文 (万葉集 巻十八・四三六九)

 

夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ  大伴坂上郎女 (万葉集・八・一五〇〇)

 

雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな  西行 (山家集・中・雑 八六六)

 

うちなびく茂みがしたのさゆりばのしられぬほどにかよふ秋かぜ  藤原定家 (新古今集・夏・二七八)

 

人も来ぬ奥山路の百合の花神や宿らん折らんと思へど  正岡子規 (竹の里歌)

 

髪あげて人のすずしき瞳かな鉄砲百合の花ひらきたり  太田水穂 (鷺・鵜)

 

ゆあみする泉の底の小百合花二十の夏をうつくしと見ぬ  与謝野晶子 (みだれ髪)

 

髪ながき少女(おとめ)とうまれしろ百合に額(ぬか)は伏せつつ君をこそ思へ  山川登美子 (恋衣―白百合)

 

さびしさよ甕(かめ)に盛られし百合の向ふに人垣の向ふに君がゐるなり  河野裕子 (桜森)

 

 

https://www.researchgate.net/figure/Molecular-phylogeny-of-Lilium-used-in-the-PGLS-analysis-Genome-size-mapped-on-the_fig1_318707427