草花/樹木/作物//季節

寒き夜を詠った短歌  12月の東京は,2週目あたりから寒くなり,最高気温は14℃以下,最低気温は5℃以下の日が続いています. 昼間はお日様があれば体感としては暖かいのですが,夜の寒さに冬を感じます. 夜を寒み置く初霜を払ひつつ桑の枕にあまたたび寝む 凡河内躬恒  背子が来て臥ししかたはら寒き夜は我が手枕(たまくら)を我ぞして寝(ぬ)る 和泉式部  寒夜には子を抱きすくめ寝(い)ぬるわれ森の獣といづれかなしき 筏井嘉一  寒夜ひしとものの砕ける音のせり凍(い)てきびしくて裂けたるものか 斉藤史 

寒い日が続きます. 今夜から明日にかけて日本海側では大雪の予報.関東地方でも気温が上がらず,都心周辺でも雪が舞う可能性も--- https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241218/k10014671181000.html 19日にかけ 東・西日本の日本海側中心 山沿いで大雪のお…

「美味しいカボチャは追熟のおかげ」/南瓜を詠んだ短歌  12月だというのに北海道産のカボチャが売られています.カボチャの「旬」は収穫後短いもので2週間,長いものでは一ヶ月以上追熟させたものとのことですから,今,出回っている北海道産は10月収穫して一ヶ月以上の追熟させたもの?  神鳴のわづかに鳴れば唐茄子の臍とられじと葉隠れて居り 正岡子規  ゆふづくと南瓜ばたけに漂へるあかき遊光(いうくわう)に礙(さはり)あらずも 斎藤茂吉

昨日取り上げたハクサイ同様,丸ごと売られることが少なくなった野菜に,カボチャがあります. 半分のものも見かけますが,ご近所のスーパーでは,全て1/4.そして今日売られていたのは北海道産. 春〜夏にはメキシコやニュージーランドなどの外国産が多いの…

八つ手の花を詠んだ短歌  円錐状に咲く白い花は,花が少なくなる冬の庭や山野にあって,ひときわ目立ちます. 窓の外に白き八つ手の花咲きてこころ寂しき冬は来にけり 島木赤彦  花かともおどろきて見しよく見ればしろき八つ手のかへし陽にして 北原白秋  花茎のあらはに太くわかれ咲く八つ手の花は群れつつ小さし 三ヶ島葭子  むざむざとおのれを滅却することなかれふゆ霜ひかり花ひらく八手 坪野哲久  白きいろ夜目に崩れてゆくと見し八つ手の花の冷き整ひ 宮柊二

妙法寺の裏山で,ヤツデに会いました. 蕾のようにも見えますが---花は咲き終わって実った,まだ色づいていない実でしょうか? 私には区別ができません--- 野山で普通に見ることができ,庭木としても利用されてきました. 日本からヨーロッパに伝えられて,…

安国論寺・妙法寺で出会った花と紅葉,そして妙法寺苔階段・裏山からの富士  イチョウ:わたりくる永き光にかがやきて黄につもりをり公孫樹落葉は 佐藤佐太郎  カエデ:秋ふかくかへで全身もみぢしてこのはげしさはこゑ伴わず 高野公彦  鎌倉一のサザンカ:散る花のうへにまた散る山茶花のいまだ暮れざる夕暮れの時 佐藤志満  ツワブキ:音の無き時間ながれて石蕗を離れし蝶のいづくへ帰る 大西民子  サネカズラ:名にし負はば逢坂山あふさかやまのさねかづら人に知られで来るよしもがな 藤原定方  

昨日は鎌倉安国論寺,そしてお隣の妙法寺へ行って来ました. 公孫樹は半分以上散り,冬を感じさせていました.楓の紅葉は今盛りの木,まだこれからの木が混ざっているように思います. わたりくる永き光にかがやきて黄につもりをり公孫樹落葉は 佐藤佐太郎 …

冬来・冬に入る・冬の初め・冬さるを詠んだ短歌2 鎌倉安国論寺の門前のイチョウはほとんど落葉し,境内には,イチョウの絨毯が敷かれた状態でした. いと寒き冬に 入りゆくしづけさを思ひてゐるは,さびしきものを 釈迢空  あたらしく冬きたりけり鞭のごと幹ひびき合い竹群はあり 宮柊二  立冬の朝に干せるわが蒲団に力尽きたる蜻蛉がいこふ 島田修二  ひとり居に浜木綿を置き夜ごと見るながき葉黄ばみ冬に入るさま 高野公彦

午前中には雲がかなり見られたものの,午後は冬ばれの1日. 「冬ばれ」と書きましたが---お日様の下ではかなり暖かく,冬とはあまり感じない. 冬探しに出かけました. 道ばたのサザンカは満開.楓,そして蔦の紅葉も見頃. 唯一,冬らしく感じたのは,イチ…

冬来・冬に入る・冬の初めを詠んだ短歌1  今日の天気予報は「冬型の気圧配置 一段と強い寒気が」. 枯れのこる浮葉の上に蓮の実の飛ぶ音寒し冬や来ぬらむ 落合直文  野の家の屋根の上に干す唐辛子紅古りて冬に入るらし 島木赤彦  しづまりし色を保ちて冬に入る穂高の山をけふ見つるかも 斎藤茂吉   初冬に季(とき)のうつらふは閑けかりちりのこりたるいささ紅葉葉 吉植庄亮  電柱の白き碍子にいと細く雨はそそげり冬きたるらし 北原白秋

「冬型の気圧配置」「一段と強い寒気」という表現が.聞かれるようになりました. https://tenki.jp/forecaster/t_yoshida/2024/11/30/31581.html#sub-title-b https://weather.yahoo.co.jp/weather/chart/ ようやく,冬到来の気配です. とはいえ,本来,冬…

世界のチーズ27 フランスのブルーチーズ1(鎌倉浄妙寺の花と紅葉)  フランスのブルーチーズには,よく知られているロックフォール以外にも,沢山の高品質のチーズがあります.Tasteatlasの人気ランキング,評価ランキングでトップ12には,ロックフォール,ブルー・ドーヴェルニュ,フルム・ダンベール,サンタギュールがランクイン.この4種は,他サイトでもフランスを代表するブルーチーズとして紹介されています./ 今日はよく晴れた清々しい1日でした. 鎌倉浄妙寺で花,紅葉を満喫してきました.

フランスのブルーチーズと言えば,初めに名前が出てくるのが,既に取り上げているロックフォール(Roquefort). https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2024/11/26/235322 https://en.wikipedia.org/wiki/Roquefort Tasteatlasによる世界のブルーチ…

海蔵寺の楓/秋の暮れを詠んだ短歌  鎌倉海蔵寺で,今季初めて楓の美しい紅葉に出会えました. たまさかにあひて別れし人よりもまさりて惜しき秋の暮かな 紀伊  なれきにし都もうとく成りはてて悲しささそふる秋の暮かな 西行  おそ秋の空気を/三尺四方ばかり/吸ひてわが児ゆきしかな 石川啄木  晩秋(おそあき)の日の入りあとの夕あかり松の色今冴え冴え青し 木下利玄  父のパイプにとまる蜻蛉(あきつ)の秋の暮れ忽ちにしてまなかいになし 佐佐木幸綱

今日もよく晴れた過ごしやすい1日. 午前中は,野菜を分けてもらいに(知り合いの作業所での販売用)三浦の農家の方の元へ.途中,所々で透きとおったような美しい富士を望むことが出来ました. 午後は,野菜を届けた後,鎌倉海蔵寺へ.一ヶ月ぶりです. 今…

ゆく秋・秋ゆく・秋暮る・秋の止まり・秋去るを詠んだ短歌2 海綿の水ふくむがにやはらかき掌(たなごころ)を曝し秋もゆくべし 葛原妙子  秋昏れてわれの疲れのかげふかき心の隅に灯もとどきこよ 斉藤史  東京の空に一にち轟ける秋逝かむ日のつよき風音 宮柊二  凹みたる胸に秋終わる陽をうけつ「此処に爬虫類の棲みし空洞あり」 中城ふみ子  ねぎ白くかはきし夜の厨辺(くりやべ)に過ぎゆく秋はしづかに親し 馬場あき子

ケヤキの紅葉,そして落葉は秋のシンボル.そして,イチョウの黄葉も目立ちます. 明日から12月.秋とのお別れ--- 現在の多くの場合,季節の目安として用いられている「気象学的季節」は12月〜2月を冬としています. 暦Wiki/季節 - 国立天文台暦計算室 しか…

ゆく秋・秋ゆく・秋暮る・秋の止まり・秋去るを詠んだ短歌1  冬になるとは,まだ感じられない今年ですが,秋は過ぎつつあることは確か. 江の島灯台も,クリスマス仕様に. 年ごとにもみじ葉ながす竜田川水門(みなと)や秋のとまりなるらむ 紀貫之  くれはつる秋のかたみにしばしみんもみぢちらすなこがらしの風 西行  長月の日数もいつかはつせ寺入相の鐘に秋ぞ暮れゆく 塙保己一  ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 佐佐木信綱

11月も,今日を入れてあと2日. 秋も終わるとおもいきや,今日はよく晴れて,昨日までの風も止み,気温以上に暖かく感じる日でした.小春日と呼んでも良いのでしょうか? https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/10/27/234944 帰り咲く花もあり…

大船フラワーセンター/11月の植物たち  花壇は,秋の花に加え,冬から春に向けての花(シクラメン,ビオラ,ストック)への模様替えが進んでいました.バラ園の秋のバラはまだ元気.気候のせい? きれいな紅葉はあまり見られませんでしたがイチョウ,モミジバフウは見応えありでした.紅葉と言うよりいつも立派と思わせてくれるのがプラタナス.珍しい花としては冬桜.珍しい展示物としては,カラーリングマム.そしてお化けかぼちゃ.

今日は快晴.気温も11月末とは思えない暖かさ.しかし風が強い!そんな日の午後,大船フラワーセンターに秋冬見つけに行って来ました. 花壇は,秋の花に加え,冬から春に向けての花への模様替えが進んでいました. ピンポンマムは最盛期.シクラメン,ビオ…

凄みも感じる片瀬の夕焼け/蔦落葉を詠んだ短歌  今日の夕方の片瀬沖. 富士も姿を見せ,夕焼け雲が上空に広がり,マジックタイムには凄みすら感じる海の夕焼けでした.  いにし秋見るべき契わがあれやちりても風の蔦のもみぢ葉 小沢蘆庵  ひしめきて欅の幹を巻きのぼる散り際の蔦紅に透ける 山崎孝子

今年初めまで住んでいた家の前のガレージ. 昨日通りがかりに見ると,這わせているツタが,今年もきれいに紅葉していました. ツタは落葉も美しい. 昨日は清掃後で,あまり落ちておらず,本当に美しい落葉には出会えませんでしたが. https://yachikusakusa…

鎌倉手広の欅並木,そして妙本寺へ行った来ました.東レ基礎研究センター前の欅並木はなかなか見事.ただ,紅葉の色づきは今一つ.妙本寺の公孫樹の黄葉も遅いと思います.所々に植えられている山茶花は今が見頃.ドウダンツツジのかわいらしい葉.大好きです.妙本寺の欅の黄葉は半分ほど.今年はどの木も黄葉/紅葉がやや遅い? すべもなきさびしき庭となり果てぬ日陰に散れる山茶花の花 四賀光子/ うらさむき今朝の日和に風たちて欅の枯葉散り騒ぐなり 若山牧水 

鎌倉手広の東レ基礎研究センター前の欅(けやき)並木へ行って来ました. なかなか見事な欅並木.一見の価値ありです. ただ,紅葉の色づきは今一つ. 一本だけ,見事に色づいた木がありました. 同じ欅と言っても紅葉の色が違うんですね.並木の木々全てが…

柿の落葉を詠んだ短歌  おり立ちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く 伊藤左千夫  霜にあひて柿の落葉の積れるを井の端に出でてけさはふむなり 岡麓  二尺にも足らはぬ柿のその落葉からくれなゐに染まりてゐたり 斎藤茂吉  柿の葉のちりしく庭にふる雨のたゆることなき音のさびしさ 尾山篤二郎  月夜ながら雨降り来り庭土の柿の落葉の濡れたる光 大屋正吉  桜落葉柿の落葉のただならずけふを限りの賑はひをする 角宮悦子

紅葉(こうよう)と言えば,まず浮かぶのがカエデ, https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/11/10/235625 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/11/22/235259 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/11/13/233326 …

銀杏(公孫樹)落葉を詠んだ短歌  金色のちひさき鳥のかたちして銀杏散るなり夕日の岡に 与謝野晶子  わが窓のくもり硝子に黄に映えし銀杏葉もはや散りすぎにけり 斎藤茂吉  秋寒くなりし朝宵黄葉して葉を落とし初めたる庭の公孫樹 長澤美津  歩みゐるこの道すでに日かげりぬ銀杏の落葉かすかににほう 三ヶ島葭子  公孫樹落葉かがやく苑にいたいたしく戦没学生をなげくひととき 木俣修  銀杏(ぎんなん)の落葉のうへに降る雨はしづけき音に降ると知りたり 宮柊二

龍口寺に参拝しました. 近年になって出来た仏舎利等はかなり遠くからも見えます. http://www.ohoka-inst.com/tatsunokuchibussharitou.html 「片瀬のお祖師様」として知られる日蓮宗のお寺.日蓮聖人の四大法難(松葉谷・伊豆・小松原・龍ノ口)の中でも屈…

ミカン蜜柑/橘を詠んだ短歌2  「橘」の渡来以来,長い歴史のある日本のミカン類.ビタミンCの供給源として,柑橘類は最高です.もつと消費を. 橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木 聖武天皇  一輌の人みなねむりわが剥きし青き蜜柑の高き香は満つ 葛原妙子  街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る 木下利玄  葉をつけし蜜柑送られ来りたり熟れし実とその葉のみどり 長澤美津  雪の夜を別れ来ぬれば紀の国の黄金(きん)のみかんを恋ひわたるべし 松坂弘

ミカンは,みかん類/柑橘類の総称でもありますが,日本人の多くがミカンと聞いて思い浮かべるのは,温州ミカンでしょう. https://life.ja-group.jp/food/shun/detail?id=78 https://www.sc-engei.co.jp/cultivation/detail/4651/ ただ,かつては,果物の中…

カリン/榠櫨を詠んだ短歌  カリンはリンゴの近縁.りんごの花と似た美しい花を咲かせてくれます.長野ではマルメロをカリンと呼んで栽培しています. 道のべに黄いろになりしくわりんの実棄ててあるさへこよなく寂し 斎藤茂吉  ゆふ庭に榠櫨のにほい熟れゐたり君によりつつ然か思ひたり 中村憲吉  榠櫨の樹になれる実は薄く黄ばみたり樹にあたりて寒き風の鳴りをきく 栗原潔子  大寒に凍りつめたる池の面くわりんの落日ひとつ黄に照る 鹿児島寿蔵  碧天の秋の榠櫨の醜(しこ)の実のさびしさ嗅げば思ひがけなし 馬場あき子

リンゴと近縁の果実に,カリンやマルメロがあります.どちらもりんごの花と似た美しい花を咲かせてくれます. https://www.shuminopage_p_detail/target_plant_code-569 https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-580 https://ww…

リンゴを詠んだ短歌2  (1)君かへす朝の舗石(しきいし)さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ 北原白秋  せめて深き眠りを得たし今宵ひとり食べ余したる林檎が匂ふ 大西民子  (2)わが側に人ゐるならねどゐるやうに一つのリンゴ卓の上に置く 片山広子  鈴なりに紅きはまるりんごの季節(とき)まぼろしにして夏りんご園 五藤茂  ふかぶかと林檎樹林の花あかり夕べの頃はこころもしろし 斉藤史  林檎の木伐り倒し家建てるべしきみの地平をつくらむために 寺山修司

多くの日本人に親しまれてきたリンゴ.品種改良も進み,青果店の店頭には,種々の美味しい品種が並んでいます. https://www.ringodaigaku.com/main/hinshu/hinshu.html (ふじ,つがる,王林,ジョナゴールドが生産量ベスト4になっています.この内ふじが50…

アケビ(木通,通草)を詠んだ短歌  野山の秋の実を代表するアケビ.実も皮も更に新芽も食べられ,蔓は生薬として,つる細工として利用されます.  ますらをが爪木に木通(あけび)さし添えて暮るればかへる大原の里 西行  あけびの実うすむらさきににほへるが山より浜に運ばれてくる 斎藤茂吉  台風のそれゆきしけさの薄明に通草(あけび)はわれて香を放ちけり 木俣修  通草(あけび)はみつつ越えし山路が折々に愛(かな)しそれより君に会はねば 富小路禎子

日本の野山の秋の実を代表するアケビ. ニッポニカによれば,「アケビの名は『実が開(あ)く』ということからきている」とのこと. 烏瓜ほど目立ちませんが,開いた実は食べることができます.その点で烏瓜より評価が高いですよね. 種がやや,やっかいですが…

カラスウリ/烏瓜  里山の秋のシンボル烏瓜.結び文(たまずさ)に似た種なので,玉梓の別名を持ちます.花は夜咲くのでなかなかお目にかかれません.花粉の媒介者は夜活動するスズメガ.道の辺に生ふる烏瓜又の名を玉づさといふと聞けばゆかしく 正岡子規  からす瓜はひのぼりゆきて痩杉のこずゑに紅き実を垂らしたり 若山牧水  烏瓜赤くつらなる藪垣に山の木漏れ日すでにかぎらふ  三ヶ島葭子  共に見てし花は果(み)となり烏瓜秋風の中に光りて赤し 若山喜志子

里山の秋のシンボルともいえるカラスウリ.鎌倉の山々にも今の時期沢山見ることができます. 名前の由来は,よく分かっていません.レファレンス協同データベースには,「熟すとカラスが好んで食べるウリの意」から始まって四つの説が掲載されています.http…

ホトトギス(杜鵑草)を詠んだ短歌  斑点が鳥のホトトギスに似ることから,命名されました.英語はToad Lily(ヒキガエルの百合)!? 今はアメリカでも「ほとんどの植物が花を終えた秋に咲く蘭に似た花」として人気とのこと. ほととぎす花もつかげに虔(つつま)しき夕日がのこる土もにほひて 生方たつゑ  打ち伏して時雨降るままほととぎす花の終りはいづれ身にしむ 福田たの子  秋いまだ暑き斜面に滲みいづる水に垂りつつ咲くほととぎす 三国玲子  街角の一鉢ながらほととぎす秋のゆくへは風となりゆく 雨宮雅子

昨日,鎌倉海蔵寺で出会ったホトトギス(杜鵑草,油点草). 庭の花としては,一番遅く開花する花かと思います.一週間前には大巧寺でも沢山咲いていました. 花に紫色の斑点があるのが特徴ですね. この斑点の様子が,鳥のホトトギスに似ていることから,命…

海蔵寺の青い空・竜胆,そして,片瀬海岸の清々しい夕暮れ---花火も! 台風くずれの低気圧が起こした嵐は去り,今日は気持ちの良い秋晴れの一日でした. むらさきの花袋ひらかぬりんだうが光すがけき露を支ふる 生方たつゑ  りんだうは目を張りひらく木の下はいまだ濡れいるあかつきの雨 川口美根子  夕茜内浦凪ぎをわたりきて汀さざなみくれないに染む 加藤克巳

台風くずれの低気圧が起こした嵐は去り,今日は秋晴れの一日でした. 鎌倉海蔵寺は,萩が終わり,紫苑の花も最終盤. でも秋の空の深い青が,伽藍の上を見事に彩っていました. 満開はこれからの菊.シロタエギク? 葉の形が違うような気もする-- 春には花で…

柘榴(ざくろ),柘榴の実を詠んだ短歌  葉のかひに濡れてあらはるゝ柘榴の実つゆしとしとと霽(は)るる霧かも 太田水穂  あまのはら冷ゆらむときにおのづから柘榴は割れてそのくれなゐよ 斎藤茂吉  机なる柘榴ゆびさし見飽きなば賜(た)べよ喰べむと吾子の言ふなる 若山牧水  いと酢き赤き柘榴をひきちぎり日の光(て)る海に投げつけにけり 北原白秋  冬山に知る劇(はげ)しさよ没(い)らむ日が柘榴が爆ぜしあかさに歪む 生方たつゑ  緋のざくろ真盛りとなりし一夜の闇こころ動悸うち思ふことあり 葛原妙子

先日,おんめ様(大巧寺)を訪れたとき,ザクロ(石榴)の実に出会いました. 鎌倉では,大巧寺以外にも,例えば,宝戒寺,そして大船フラワーセンターにもザクロが植えられていますが,花を楽しむばかりで実に出会うことはありませんでした.ちょっぴりうれ…

水引(水引草,金線草)を詠んだ短歌  鎌倉宝戒寺・大巧寺の水引は,秋の庭の雰囲気を効果的に演出していました. 金線草(みづひき)の色濃く咲けり木暗(このくれ)やぢか日とどかぬ笹のしげみに 岡麓  よろぼひていゆく稲田の畦みちに秋を見せたる水引の花 峯村国一  ひといろにみづひきの紅きはまりてまづしき庭をゆく風の夢 中野菊夫  早くさきし花はちりつついつまでも紅(あけ)の色こき金線草(みづひき)の花  佐藤志満  ふかぶかと枯葉枯(く)えゐる秋の藪一心あかき水引の花 馬場あき子

おんめ様,宝戒寺でミズヒキ(ミズヒキソウ,水引草)に出会いました. 我が家では雑草扱いでしたが,寺院などでは鑑賞用に植えられています. 開いている花を探したのですがみつからず.この時期は全て実となっているように思います. https://www.tokyo-sh…

蓼,穂蓼,犬蓼を詠んだ短歌2  蓼酢に用いるタデの他,藍染めに用いるアイも犬蓼の仲間.サクラダケ,ハナダテは犬蓼以上にかわいらしい花をつけます. 白々と蓼のしげりに風ふけば秋はまぢかき戦場ヶ原 四賀光子  赤飯(あかまま)の花と子等いふ犬蓼の花はこちたし家のめぐりに 若山牧水  犬蓼の花揺りひたすいささ川暑き歩道に想ひ消えつも 谷鼎  犬蓼のしみ立つところ風の渦またも捨身のあがきをぞする 坪野哲久 赤まんまの花に思想を水に火を放たむとある原稿を焼く 佐佐木幸綱

秋の庭のかわいらしい雑草イヌタデ.アカマンマの別称で広く知られていますね. https://ja.wikipedia.org/wiki/イヌタデ https://hoiclue.jp/800011634.html おままごとの赤飯ですが,どうも実際に食べることもできるようです(食べたことはありませんが) …

蓼,穂蓼,犬蓼を詠んだ短歌1  かわいらしい花で,アカマンマの別名でよく知られているイヌタデ.近縁のタデは蓼酢で有名. わが宿の穂蓼(ほたで)古幹(ふるから)摘み生(おほ)し実になるまでに君をし待たむ 作者未詳 万葉集  紅の色なりながら蓼の穂のからしや人のめにもたてねば 西行  秋もはやくれなゐ深き水たでにうつる月日の程も見えつつ 小沢蘆庵  犬蓼の花さく見ればしのばるゝ君の韓野(からの)に駒なめし秋 与謝野鉄幹  わが歩む小野のうへにて蓼の花咲くべくなりぬ夏をはりけり 斎藤茂吉

鎌倉の道ばたで,イヌタデに出会いました. 一週間ほど前でしたが,昨日同じ所を通ったときには見当たらず.おそらく引き抜かれたのでしょう. かわいらしい蕾・花で,アカマンマ(あかのまんま)の別名でよく知られていますね. 種が沢山できて,ほおって置…

鎌倉の秋の花たち  10月になっても夏日が14日もあった関東地方.秋の訪れが遅れている感のある今年ですが,鎌倉で,秋の花たちを探索してきました.キンモクセイ,ハギの花はすでに散って,サザンカが咲き始めていました.ミズヒキ,ススキ,ホトトギスと秋のかわいらしい花たちにも出会えました.秋といえば木の実:コムラサキ,トキワサンザシ,センダン,ミカン,ザクロ,そしてギンナン.黄葉の紅葉は未だですが,イチョウは色づきはじめています.

この10月は,夏日が14日間,その内真夏日が3日もありました! https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2024&month=10&day=&view=p1 秋の涼しさを感じることが少なかった日日ですが,植物はどの様に季…

胡桃・胡桃の実を詠んだ短歌  縄文時代から食べ続けられ,現代,また人気が復活し,胡桃菓子は人気トップを争うほどに. ふゆの日の今日も暮れたりゐろりべに胡桃をつぶす独語(ひとりごと)いひて 斎藤茂吉  なにごとも思ふべきなし秋風の黄なる山辺に胡桃をあさる 若山牧水  胡桃の実もてあそび飽きて机の前新しき代よ聞え来ざるか 扇畑忠雄  みづからを展くことなき胡桃二顆拳のなかに鬩(せめ)ぎ合ふ音 島田修二  月山のふかきぬばたま夜をこめて人貌の胡桃音たてて飛ぶ 川野里子

日本人が古くから食べてきたクルミ. 日本で単にクルミといえば,山で見られるオニグルミJuglans ailantifolia (Juglans mandshurica var. sachalinensis)をさします. 他に,サワグルミ,ノグルミ,ヒメグルミなどがありますが. 縄文時代には主食の一つで…

栗・栗の実を詠んだ短歌2  日本の栽培栗は,同じ学名を持つ野生栗(芝栗/山栗)と同種で,縄文時代以前に分岐した品種.主力種は「筑波」「銀寄 ギンヨセ」「丹沢」. おのづから干(か)てかち栗となりてをる野の落栗の味のよろしき 若山牧水  丹波栗大き実照りの豊かなる古国に還り座さむか母よ 馬場あき子  青毬の落ちゐるうへの栗の木は騒立(さわだ)ち空をわたる青北風(きた) 柏崎驍二  栗の木の硏ぐがにあをき夏栗の毬はさやさや胸いたきかな 河野裕子 

日本で栽培されているクリの学名はCastanea crenata. https://twitter.com/hidakacity_pr/status/945490395101663232 日本と朝鮮半島に生育する品種で,ヨーロッパや中国のものとは異なります. ▽ヨーロッパ栗(Castanea sativa):小粒でマロングラッセなど…

栗・栗の実を詠んだ短歌1  縄文期には最も大切な食料の一つであつた栗.現代でも最も秋らしい食べ物の一つとして認められています. うづもるる木の葉の下のみなしぐりかくてくちなん実をばおしまず 土御門院  栗もゑみ柿も色づきうなゐらがほこらしげなる時も来にけり 小沢蘆庵   はらはらと落つる木の葉にまじりきて栗の実ひとり土に声あり 大田垣蓮月  谿の橋をりをり馬行き見ゆれども栗落すほかの物音もなし 島木赤彦  栗の実の笑みそむるころ谿越えてかすかなる灯に向ふひとあり 斎藤茂吉

秋らしい食べ物は?と聞かれて何と答えますか? 栗はその第一候補のひとつではないでしょうか. https://iraw.rcc.jp/topics/articles/23272 https://report.iko-yo.net/articles/15510 ネット上に「秋の果物に関するアンケート」が掲載されていて,このアン…