胡桃・胡桃の実を詠んだ短歌  縄文時代から食べ続けられ,現代,また人気が復活し,胡桃菓子は人気トップを争うほどに. ふゆの日の今日も暮れたりゐろりべに胡桃をつぶす独語(ひとりごと)いひて 斎藤茂吉  なにごとも思ふべきなし秋風の黄なる山辺に胡桃をあさる 若山牧水  胡桃の実もてあそび飽きて机の前新しき代よ聞え来ざるか 扇畑忠雄  みづからを展くことなき胡桃二顆拳のなかに鬩(せめ)ぎ合ふ音 島田修二  月山のふかきぬばたま夜をこめて人貌の胡桃音たてて飛ぶ 川野里子

日本人が古くから食べてきたクルミ
日本で単にクルミといえば,山で見られるオニグルミJuglans ailantifolia (Juglans mandshurica var. sachalinensis)をさします.
他に,サワグルミ,ノグルミ,ヒメグルミなどがありますが.
 
縄文時代には主食の一つで,クルミ(オニグルミ/ヒメグルミ)が発見された遺跡数は,クリを上回っているとの報告もあります.

https://ja.wikipedia.org/wiki/オニグルミ

奈良時代以降も,日本人になじみ深いナッツであり続けてきました.

オニグルミは味が良いことで世界的にも知られています.

オニグルミは庭木としてアメリカで人気があるとのことですが,栽培種としてheart nut が開発されており,苦みのなく甘いナッツで,中が砕けないとして好評とのこと.

 

かなり以前からある日本の栽培品種としては,菓子などに用いられてきたカシグルミ(テウチグルミ),シナノグルミがありますが,ペルシャグルミの変種/交雑種と言われています.いずれも流通量としてはわずか.

 

現在,日本で食べられているクルミの大部分は,主としてアメリカから輸入されているペルシャグルミ(セイヨウグルミ).

https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-030-75502-7_21

https://en.wikipedia.org/wiki/Juglans_regia

日本は世界第4位のクルミ輸入国で,さらに増加する傾向にあります.ナッツ輸入量としてはアーモンドに次いで二番目.

https://www.customs.go.jp/tokyo/content/toku0111.pdf

https://oec.world/en/profile/hs/shelled-walnuts

 

https://ippin.gnavi.co.jp/article-11074/

https://www.chileanfoodandgarden.com/walnut-kuchen/

https://myurbantreats.com/desserts/nussecken-german-nut-bars/

 

胡桃・胡桃の実を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

 夏山の茂みがくれの姫くるみかねて見まくのかたき恋かな  藤原信実 新撰六帖

 

ふゆの日の今日も暮れたりゐろりべに胡桃をつぶす独語(ひとりごと)いひて  斎藤茂吉 あらたま

 

なにごとも思ふべきなし秋風の黄なる山辺に胡桃をあさる  若山牧水 路上

 

富士見野の奥の畑地に成り垂りし胡桃の実さへ忘られざらむ  杉浦翠子 藤浪

 

庭掃けば朝風すがし楣(のき)ばなる胡桃の木の実落ちてころがる  藤沢古実 国原

 

雨の日のかなしみもてば胡桃落つたまさか庭の石に音して  生方たつゑ 青粧

 

ゆたけくもみのる胡桃の木群にもわが眼かがやく信濃路を来て  木俣修 歯車

 

胡桃の実川に落ちしがはかなごと思ふ沈めりや流れゆきしや  佐藤佐太郎 帰潮

 

胡桃の実もてあそび飽きて机の前新しき代よ聞え来ざるか  扇畑忠雄 北西風

 

絶望に生きしアントン・チェホフの晩年をおもふ胡桃割りつつ  大野誠夫 薔薇祭

 

みづからを展くことなき胡桃二顆拳のなかに鬩(せめ)ぎ合ふ音  島田修二 渚の日日

 

月山のふかきぬばたま夜をこめて人貌の胡桃音たてて飛ぶ  川野里子 五月の王