カリン/榠櫨を詠んだ短歌  カリンはリンゴの近縁.りんごの花と似た美しい花を咲かせてくれます.長野ではマルメロをカリンと呼んで栽培しています. 道のべに黄いろになりしくわりんの実棄ててあるさへこよなく寂し 斎藤茂吉  ゆふ庭に榠櫨のにほい熟れゐたり君によりつつ然か思ひたり 中村憲吉  榠櫨の樹になれる実は薄く黄ばみたり樹にあたりて寒き風の鳴りをきく 栗原潔子  大寒に凍りつめたる池の面くわりんの落日ひとつ黄に照る 鹿児島寿蔵  碧天の秋の榠櫨の醜(しこ)の実のさびしさ嗅げば思ひがけなし 馬場あき子

リンゴと近縁の果実に,カリンやマルメロがあります.どちらもりんごの花と似た美しい花を咲かせてくれます.

https://www.shuminopage_p_detail/target_plant_code-569

https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-580

https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-114engei.jp/m-pc/a-

 

 

しかし,リンゴと違って,カリンもマルメロも実を生食することは出来ません.

https://www.shuminopage_p_detail/target_plant_code-569

https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-580

https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000051282_00/くだもの物語(マルメロとカリン).pdf

 

 

カリンは,ジャムにも出来ない.

しかし,カリンジャムは売られています.

https://www.amazon.co.jp/軽井沢-沢屋-沢屋-かりん-マルメロ)ジャムR/dp/B00BKREEJ0

実はこれ,マルメロのジャム.長野県では,マルメロを「カリン」と呼んで栽培している!

カリンは,リンゴよりボケに近い種で,カリン酒にして,香を楽しむことはできます.

(かなり昔,父親がカリン酒をつくったことがありましたが--- 香りの立った頃ではなく青い実をつけていたため,あまり美味しくなかった思い出があります)

https://www.lotte.co.jp/corporate/karin/daihyakka/010.html



カリンの栽培について,NHKみんなの趣味の園芸から,一部秋田県のサイトの情報をつけ加えて転載します.

https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-569

https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000051282_00/くだもの物語(マルメロとカリン).pdf

 

カリンには咳どめ効果があるとされ(https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003356.php),カリン酒などに利用されています.

しかし残念ながら,生食はもちろん,ジャムなどへの加工もできません.カリンジャムとして販売されているのは,じつはマルメロ(Cydonia oblonga)のジャムです.長野県ではマルメロのことをカリンとも呼ぶためです.

マルメロは,バラ科マルメロ属の植物 原産地は中央アジア(トルコ,イラ ン)で,日本には17世紀に渡来しました.

カリンはバラ科カリン属の植物.原産地は中国.日本への渡来時期は不明ですが,マルメロより古い時代に伝わったといわれています.

カリンは木肌が美しく,果実にも風情があるので,庭木や盆栽に用いられます.木はマルメロと違って,直立性です.

果実は楕円形のものが多いですが,円形のものもあります.果皮に毛はありません.花は紅色です.一方,マルメロの果実は洋ナシ形で,果皮に綿毛があり,萼が残ります.花はサーモンピンクです.マルメロには品種もいくつかありますが(「スミルナ」「かおり」など),カリンには品種名のついたものはありません.

 

榠櫨と花梨

現在,多くのウェブサイトや漢字変換アプリでは,バラ科カリン属の「カリン」に,「花梨」の漢字を当てています.

しかし,調べた範囲では,バラ科カリン属「カリン」を表す本来の漢字は「榠櫨」で,別の物を表す「花梨」が大手を振って当てられるようになったのはかなり最近のことと考えられます.

「花梨」は,もともと「シタン属の高木の材のうち紅色から淡紅褐色のもの」を表す言葉でした.

精選版日本国語大辞典

▽かりんくゎりん【榠樝】 バラ科の落葉高木。

▽か‐りんクヮ‥【花梨・花櫚・果李】〘名〙 マメ科シタン属の高木の材のうち紅色から淡紅褐色のものの総称。

 

そして,当然のことながら,短歌,俳句に使われてきた漢字は「榠櫨」.

(古今短歌歳時記小学館,俳句データベースドットコム

  https://haikudatabase.com/kidais/2848  )

なお,この漢字は,カリンからつくられる生薬「榠櫨 メイサ」にも当てられています.

https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003356.php

https://medicinalfruits.jimdofree.com/

 

 

 

カリン/榠櫨を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

井の端に落つれば拾ふ榠櫨(くわりん)の実数のたまるはうれしきものを  岡麓 涌井

 

道のべに黄いろになりしくわりんの実棄ててあるさへこよなく寂し  斎藤茂吉 ともしび

 

ゆふ庭に榠櫨のにほい熟れゐたり君によりつつ然か思ひたり  中村憲吉 林泉集

 

榠櫨の樹になれる実は薄く黄ばみたり樹にあたりて寒き風の鳴りをきく  栗原潔子 寂寥の眼

 

大寒に凍りつめたる池の面くわりんの落日ひとつ黄に照る  鹿児島寿蔵 求青

 

慰めに故里(くに)より持ちて来しカリン狭く明るき部屋に匂へり  岩波香代子 都わすれ

 

碧天の秋の榠櫨の醜(しこ)の実のさびしさ嗅げば思ひがけなし  馬場あき子 雪木