カラスウリ/烏瓜  里山の秋のシンボル烏瓜.結び文(たまずさ)に似た種なので,玉梓の別名を持ちます.花は夜咲くのでなかなかお目にかかれません.花粉の媒介者は夜活動するスズメガ.道の辺に生ふる烏瓜又の名を玉づさといふと聞けばゆかしく 正岡子規  からす瓜はひのぼりゆきて痩杉のこずゑに紅き実を垂らしたり 若山牧水  烏瓜赤くつらなる藪垣に山の木漏れ日すでにかぎらふ  三ヶ島葭子  共に見てし花は果(み)となり烏瓜秋風の中に光りて赤し 若山喜志子

里山の秋のシンボルともいえるカラスウリ.鎌倉の山々にも今の時期沢山見ることができます.

名前の由来は,よく分かっていません.レファレンス協同データベースには,「熟すとカラスが好んで食べるウリの意」から始まって四つの説が掲載されています.https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000001150&page=ref_view

 

カラスウリの実はよく見かけますが,花はなかなかお目にかかれません,

夜になって咲く花として知られています.雌花と雄花があって,花粉の媒介者は夜活動するスズメガ

https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20171010_006016.html

「午後6時52分、やぶ蚊に刺されながら、カラスウリが花を咲かせるのを待っていました.家々に明かりがともるころ、身近なやぶではカラスウリが香水を振りまき、妖しげに白いレース飾りの花を今年も咲かせました。」

カラスウリの花は長い漏斗状花です。ごちそうの花の蜜は付け根にあるので、長い口吻(こうふん)を持った夜行性のガであるスズメガ類を、カラスウリは花粉媒介者として選びました。カラスウリスズメガのいない環境では、子孫を残すことができません。」(サカタのタネ 小杉 波留夫)

 

カラスウリは、よく見ると種もちょっと変わった形をしています.

「結び文」=別名「たまずさ(玉梓,玉章)」に似ているということで,カラスウリ自体も「たまずさ(玉梓,玉章)」の別名を持ちます.優雅な名前ですね.カラスウリが愛されてきた結果,つけられた名前のようにも思います.

 

カラスウリ属には,カラスウリのほか,キカラスウリ,オオカラスウリ,トウカラスウリ,ヘビカラスウリなどがあります.

https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003358.

https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003341.php

https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nph.16015

ウリ科ですから,食用としても良さそうですが,カラスウリ属のなかで食用とされているのはヘビウリ.
https://en.wikipedia.org/wiki/Trichosanthes_cucumerina

Asian food  Trichosanthes cucumerina recipe

一方,キカラスウリやトウカラスリ,オオカラスウリは,根(⇨栝楼根カロコン)や種(⇨栝楼仁カロニン)漢方薬として用いられています.カラスウリの種も薬用とすることがあるとのこと.

https://www.tokyo-shoyaku.com/wakan.php?id=44

https://www.kigusuri.com/kampo/jiten/shouyaku/karonin/

カロコン (栝楼根)

解熱,止瀉,鎮咳の目的で,虚弱な傾向のある人で口渇のある疾患に用いられます.
民間では催乳,解熱,利尿,咳止めに用いられます.

カロニン(栝楼仁)

潤肺,化痰,通便,排膿の効能があり,咳嗽(せき)や痰,便秘,腫れ物、授乳不足などに用いられます.

 

 

烏瓜を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

道の辺に生ふる烏瓜又の名を玉づさといふと聞けばゆかしく  正岡子規 正岡子規全歌集

 

烏瓜(たまづさ)の夕咲く花は明け来れば秋をすくなみしぼみけるかも  長塚節 長塚節歌集

 

からす瓜はひのぼりゆきて痩杉のこずゑに紅き実を垂らしたり  若山牧水 くろ土

 

烏瓜赤くつらなる藪垣に山の木漏れ日すでにかぎらふ  三ヶ島葭子 三ヶ島葭子全集

 

共に見てし花は果(み)となり烏瓜秋風の中に光りて赤し  若山喜志子 筑摩野

 

烏瓜日に照りてゐる竹むらのそよぎのなかに誘(おび)かれてゆく  岡野弘彦 天の鶴群