秋草を詠んだ短歌  辞典では,秋草は「秋に花の咲く草」.雑草たちも花は咲かせますから,秋草と言ってもいいのですが---  秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たなむ 大伴家持  吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 文屋康英  今朝のあさの露ひやびやと秋草やすべて幽(かそ)けき寂滅(ほろび)の光 伊藤左千夫  一桶の水うちやめばほろほろと露の玉ちる秋草の花 正岡子規  秋草にうもれて返り咲くつつじ浅間はあはき噴煙(けむり)をまとふ 大西民子

「秋草」ときいて--- 私が思い浮かべるのは雑草たち.

草取りをさぼったわが家の庭には,秋の雑草が生い茂っています.

今年元気なのはイノコヅチ.今まで少なかったのに---.カラムシは近くで見かけたもの.

通りがかった建築用地.エノコログサが全面を覆っていました.風に揺れて光ると,かなり美しいと言える光景.

ススキは,勝手に映えてくると雑草ですが,きちんと植えられていたり,生える場所によって鑑賞に十分堪える美しさ.

日本国語大辞典では,秋草は「秋に花の咲く草」.雑草たちも花は咲かせますから,秋草と言っていいのですが--例として「クズ、ススキ、キキョウ、オミナエシ」とあげられると,「観賞に堪える花」を咲かせる草の意味になりますね.

 

あきくさ【秋草】
日本国語大辞典
①秋に花の咲く草の総称。クズ、ススキ、キキョウ、オミナエシなど。《季・秋》
*万葉(8C後)二〇・四三一二
「秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たむ」

 

先日,光則寺で出会った花たちは,「秋草」の資格十分.

しかし,新しい短歌では,雑草を含めて秋草と詠んでいるようにも思います.

 

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/09/28/203214

 

 

 

秋草を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たなむ  大伴家持 万葉集 巻二十・四三一二

 

吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ  文屋康英 古今集小倉百人一首

 

秋草の露わけ衣おきもせずねもせむ袖はほすひまもなし  藤原定家 拾遺愚草

 

秋草の花をし見れば色々につゆもこころをうつしてぞおく  小沢蘆庵 六帖詠草

 

今朝のあさの露ひやびやと秋草やすべて幽(かそ)けき寂滅(ほろび)の光  伊藤左千夫 左千夫歌集

 

一桶の水うちやめばほろほろと露の玉ちる秋草の花  正岡子規 子規歌集

 

人に告ぐる悲しみならず秋草に息を白じろと吐(つ)きにけるかも  島木赤彦 切火

 

かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな  若山牧水 路上

 

秋草の八千草みだれさく見ればここに花摘む人影もなし  尾山篤二郎 白圭集

 

秋草にうもれて返り咲くつつじ浅間はあはき噴煙(けむり)をまとふ  大西民子 まぼろしの椅子

 

秋草の直(すぐ)立つ中にひとり立ち悲しすぎれば笑いたくなる  道浦母都子 ゆうすげ