ベッドストローとヤエムグラ(アカネ科の花2) アカネ科は英語でthe bedstraw family(ベッドストロー科)ともいわれます.ベッドストロー(日本のキバナカワラマツバ:多分)はベッドの詰め物などヨーロッパで多岐に利用されたヤエムグラ属の植物.日本のヤエムグラは雑草として扱われてきて,枕草子でも「うつろひやすなるこそうたてあれ(色があせ易いのは困ったものだ)」とされています.カワラマツバも雑草扱いですが,花はかなり美しいと思います.

アカネ科の花2(アカネ科は三年前にも扱った題目なので,二回目のまとめ,その2になります)

アカネ科英語では,

the coffee family(コーヒー科)

the madder family (セイヨウアカネ科)

the bedstraw family (ベッドストロー科)

等と呼ばれます.https://en.wikipedia.org/wiki/Rubiaceae

この内,多くの日本人が全く理解できない(多分)のが,三番目のthe bedstraw family (ベッドストロー科).

 

辞書で調べてみると

 

bedstraw ランダムハウス英語辞典

1  カワラマツバ Galium verum:アカネ科ヤエムグラ属の植物.

2 (1を用いた)床わら.

 

日本語では,カワラマツバとされていますが,日本のカワラマツバは,bedstrawの変種で,花は白.

英語版ウィキペディアには,bedstrawの画像も載っていて,かなり鮮やかな黄色い花を咲かせています.

https://en.wikipedia.org/wiki/Galium_verum

日本のキバナカワラマツバ(変種)とかなり似ています.英語版bedstrawでは,日本にも分布とありますから,キバナカワラマツバがヨーロッパのbedstrawと考えてもいいような気がします(本当は?).

bedstraw:アカネ科の多年草イスラエルレバノン,トルコから日本,カムチャッカまで,ヨーロッパの大部分,北アフリカ,温帯アジアに広く分布している.タスマニアニュージーランド,カナダ,アメリカの北半分に帰化している.

 

このbedstraw.ヨーロッパでは大活躍してきた歴史があるようで,その利用法はベッドの詰め物とされるほか,多岐にわたります.

・植物のクマリンの香りがノミよけになることから,乾燥させた植物をマットレスの詰め物として使用
・花はチーズ製造において乳を凝固させるために使用
グロスターシャーイングランド南西部にある行政区域)ではダブルグロスターチーズを着色するために使用
デンマークでは,この植物(地元ではgul snerreとして知られる)は伝統的に蒸留酒を煎じるのに使われ,デンマーク独特の飲み物bjæsk [da]を作る.
 
これだけ利用してきた歴史があれば,見栄えのよさも手伝って,科の名称としても用いられるのも納得.
写真を見るかぎり,花も,ヤエムグラ属の中ではかなり美しく,山野草として飾っても良いように思いました.
 
日本のヤエムグラは,雑草として以外は,ほとんど取り上げられてきていません.

枕草子の「草は---」にも取り上げられていますが,決して褒めてはいません.

枕(10C終)六六

草は 菖蒲。菰。葵、いとをかし。

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さしも草。八重むぐら。つき草、うつろひやすなるこそうたてあれ。

(さしも草。八重むぐら。つき草、色があせ易いのは困ったものだ。)

 
なお,「やえむぐら」には,「幾重にも生い茂ったむぐら」の意味もあり,万葉集で歌われているのはこちらを指しているとされます.
万葉 一一・二八二四

思ふ人来むと知りせば八重六倉(やへむぐら)おほへる庭に珠敷かまし

 

一方,百人一首で歌われているのは,秋のカナムグラではないかといわれています.

 

八重葎 茂れる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋は来にけり 恵慶(えぎょう)法師