アカネ科の植物
ハクチョウゲ,ヤエムグラ,ヘクソカズラ,クチナシ,トコン(吐根),ペンタスとサンタンカ,コーヒーノキ(コーヒーの木)に続いて,今日は----
アカネ(日本アカネ).
以前にも取り上げており,
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/10/13/001000
かなりの部分重複しますが,改めて.
アカネは見たところ,ただの雑草かと見まがうのですが,
その根は赤く---
https://www.botanic.jp/plants-aa/akane.htm 日本茜(ニホンアカネ)の染色実験 ~プロローグ | tezomeya note
古代から「茜色」の染料として,とても貴重な植物でした.
「茜色」で検索するとこのような画像が得られますが,サイトによって色がやや異なります.
あかね色とはアカネで染めた色.
しかし,その染色技術は長い間失われていて,最近になって染色家吉岡幸雄氏により再現できるようになりました.
古い時代の,確実に茜染といえる遺品;東京は青梅市ある武蔵御嶽(みたけ)神社に伝えられる「赤糸威鎧(あかいとおどしよろい)」に残された色を手がかりにして.
OMEnavi 青梅資料館 日本の色辞典(むらがあるが,左右の薄い部分は明治時代に鉱物染料を使って修復された糸が色あせたもの.古来の色はしっかり残っている NHKBS「茜の物語」解説)
吉岡氏は再現にあたって,万葉集の記述も参考にしています.
吉岡幸雄「日本の色辞典」(紫紅社)より
茜という色に関しては,『万葉集』に詠まれた額田王(ぬかたのおおきみ)の歌
「あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振る」(巻一)
によってまず親しみを憶える.
もう一つ,柿本人麻呂の
「あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも」(巻二)
もよく知られるところである.
「あかねさす」は「日」「昼」「照る」「紫」などにかかる枕詞(まくらことば)であるから,空の澄んだ日に,太陽が光り輝いて見えるような,赤にわずかに黄がさしこんだような色といえるだろう.
そのような色をあらわせる色素を含んだ植物が茜である.その根は,赤く,まさにアカネである.『正倉院文書』にも「赤根』と記されており,それで染めた色が「茜色」である.
染色に用いられてきたアカネ属の植物には,アカネ(ニホンアカネ)以外の2種が知られています.
セイヨウアカネ(西洋アカネ) Rubia tinctorum
Rubia tinctorum L. | Plants of the World Online | Kew Science セイヨウアカネ:武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
インドアカネ(印度アカネ) Rubia manjith
File:Rubia manjith (7864762096).jpg - Wikimedia Commons
この二種に含まれる色素成分アリザリンは,天然の赤色色素としてとても有名.
そして,このアリザリンの化学合成が,有機合成化学の幕開けをもたらしたことはよく知られています.
https://kotobank.jp/word/グレーベ-57669
ニホンアカネにはこのアリザリンは含まれず,よく似た化学構造を持つ,プルプリンやムンジスチンが主成分で色合いが異なるとのこと.
https://kiui.jp/pc/bunkazai/kiyo11/04_oshita_pp21-24.pdf
なお,「アカネ色素」として手に入れることができる天然色素は,セイヨウアカネ由来の色素になります.