春雨・春の雨を詠んだ短歌1  今日の夕方の江ノ島はかすんでいました.しとしと降る春の雨のためです.春雨と春の雨を分ける考え方もあるようですが,古来,春ふる雨を春雨と呼んだと思われます. 衣手の名木(なぎ)の川辺を春雨にわれ立ち濡ると家思ふらむか 柿本人麻呂歌集  わがせこが衣はるさめ降るごとに野辺の緑ぞ色まさりける 紀貫之  水の上にあや織り乱る春の雨や山の緑をねべて染むらむ 伊勢  花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る 式子内親王

今日の片瀬東浜はしとしと雨.東浜から見ると右手が江ノ島

 

夕方の江ノ島はかすんでいました.

(鎌倉から江ノ島近くの片瀬海岸に引っ越しました)

 

左手がやはり雨にけぶる腰越漁港.

 

“今の時期の雨は,「春の雨」と呼び,3月下旬から4月頃のいつまでも続く地雨のようなしっとりとした「春雨」と区別される.”

とありましたが---.

気象用語としては区別して用いられている??

https://tenki.jp/suppl/yamamoto_komo/2019/04/11/28975.html

 

 

異なった説明もあって---

https://www.weather-service.co.jp/weathercolumn/springrain/32563/

「寒明けの雨」

:寒が明け、ちょうどその頃に降る雨.「春霙(はるみぞれ)」(雨がみぞれに変わったりボタン雪になった雨)になることも.

 

「春雨(はるさめ)」

:2月の末から3月に,雨脚が細かく、けむるように(雨・霧・霞などで辺りがぼんやりする)降る雨.「甘雨(かんう)」「木の芽雨(このめあめ)」(木の芽に雨がほどよくそそぎ、その成長を助ける雨)とも.

 

このサイトには,その他にも沢山の名前が挙げられています.

「桃花(とうか)の雨」:桃の花の咲く頃に柔らかく静かに降る雨.

「杏花雨(きょうかう)」:杏の花が咲く頃の雨.

「桜雨(さくらあめ)」「華雨(かう)」:桜の花の頃の雨.

「春驟雨(はるしゅうう)」:夏の「驟雨」に春を添えて春のにわか雨を意味

「春夕立(はるゆうだち)」:夏の激しい夕立ほどの強さはなくとも雷を伴うことがある雨

 

 

現代でこそ,色々な解説がありますが,古来,春ふる雨を春雨と呼んできたと考えておいてよいと思われます.

はる‐さめ【春雨】

日本国語大辞典

①春の季節に静かに降る雨。《季・春》

正倉院文書−天平宝字六年(762)閏一二月二日・僧正美状

「春佐米はるサメ乃 阿波礼」

①春の季節に静かに降る雨。《季・春》

正倉院文書−天平宝字六年(762)閏一二月二日・僧正美状

「春佐米はるサメ乃 阿波礼」

 

 

いずれにせよ,春の雨は,この時期特有の小低気圧がもたらす雨ですね.

今日の天気図

https://tenki.jp/guide/chart/

 

 

春雨・春の雨を詠んだ短歌1

(古今短歌歳時記より)

 

衣手の名木(なぎ)の川辺を春雨にわれ立ち濡ると家思ふらむか  柿本人麻呂歌集 万葉集 巻九 一六九六

(楽しい万葉集:名木(なき)の川辺で,私が春雨(はるさめ)に濡れていると,家族は思っているでしょうか. 「衣手(ころもで)の」は名木(なき)を導く枕詞)

 

わがせこが衣はるさめ降るごとに野辺の緑ぞ色まさりける  紀貫之 古今集

 

春雨の降るは涙かさくら花散るを惜しまぬ人しなければ  大友黒主 古今集

 

水の上にあや織り乱る春の雨や山の緑をねべて染むらむ  伊勢 新撰万葉集

 

春雨の花の枝よりながれこば猶こそぬれめ香もやうつると  藤原敏行 後撰集

 

春雨に君をやりてはあふさかの関のこなたに恋やわたらむ  凡河内躬恒 古今六帖

 

花は散りその色となくながむればむなしき空に春雨ぞ降る  式子内親王 新古今集