万葉集には「夕焼け」は詠まれていない!?  今日は強風下浜へ降りることなく夕焼けを撮影.この2週間の夕焼けの画像を集めてみました.同じ構図でも画像は異なります. 海神(わたつみ)の豊旗雲(とよはたくも)に入日さし今夜の月夜(つくよ)さやけくありこそ 中大兄  あかねさす日の暮れゆけばすべをなみ千たび嘆きて恋ひつつぞ居る 作者不詳  夕焼小焼大風車のうへをゆく雁が一列鴉(からす)が三羽 北原白秋  夕映えの雲あかくしてそことなく浜なでしこの安房の国見ゆ 与謝野晶子

風の強い1日でした.

夕方由比ヶ浜まで出かけたのですが,浜には人っ子一人いません.浜に降りようとすると目に砂が飛び込んでくる!

夕焼けは,海岸の国道から撮影.

 

11月13日のブログ記事でも触れましたが,11月になってから晴れた日の夕方散歩は由比ヶ浜に行くことが多くなりました.富士山が見えそうなときには,さらに材木座まで行くことも.

由比ヶ浜からは,富士山は望めません)

 

13日よりあとに撮りためた画像を何枚か並べてみます.

ほとんど同じ構図ですが,日によって景色は異なります.入り日に間に合うことはほとんどないのですが,雲の形がこんなに面白いとは!

 

11月18日

11月20日

11月23日

11月24日

11月25日

11月27日

 

夕焼けという言葉は,比較的新しい言葉.

 

日本国語大辞典の「夕焼」の例示は,1704年の許六の俳諧

「夕やけの百性赤し秋の風〈許六〉」

▽古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)に載録されている最も古い短歌は北原白秋の短歌(雲母集1915).

 

▽それ以前は,夕映(ゆうばえ)が用いられていますが---

夕映には二つの意味があって,夕焼けを表すようになったのはやはり江戸時代?

 

日本国語大辞典「ゆうばえ 夕映」

①あたりが薄暗くなる夕方頃、かえって物の色などがくっきりと美しく見えること。

*宇津保(970−999頃)楼上上

「ゆふばえして、いといみじく色麗しう、はなやかにきよげに見え給ふを」

②夕日の光をうけて美しくはえること。夕焼け。

俳諧・春鴻句集(1803頃)秋

「夕栄や早稲の香包む日向藪」

 

万葉集では,夕映も用いられていないようで,「茜さす日」「入日さし」などで,夕焼けを表していたとのこと.(古今短歌歳時記)

ただし,

「あかねさす」:「日」の枕詞として用いられている.歌の内容をみないと夕焼けかどうかは不明.

夕焼けの美しさを詠んでいる歌は少ない:歌の内容から確かに夕焼けの空を詠んではいる歌でも,下に挙げた例では,中大兄皇子以外は恋の歌になっている.

 

 

夕日,入日を詠んだ万葉集の短歌.

(楽しい万葉集  https://art-tags.net/manyo/nature/sunset.html より)

 

海神(わたつみ)の豊旗雲(とよはたくも)に入日さし今夜の月夜(つくよ)さやけくありこそ  中大兄  巻一 0015

(意味: 海原の豊旗雲に,入日がさしています.今夜の,月はさやかであってほしい.

/豊旗雲がどんな雲(くも)かははっきりしていません.)

 

 

山高み夕日隠りぬ浅茅原(あさじはら)後見むために標(しめ)(ゆ)はましを  作者不詳  巻七 1342

(山が高くて夕日が思ったより早く浅茅原に落ちてしまいました.後で見るのに,印をつけておけばよかったのにね)

 

 

あかねさす日の暮れゆけばすべをなみ千たび嘆きて恋ひつつぞ居る  作者不詳 巻十二 2901

(日が暮れて行く頃は,どうしようもなくて,何度もため息をついて,あなたのことを恋しく思っているのです.)

 

 

春日野に照れる夕日の外のみに君を相見て今ぞ悔しき  作者不詳 巻十二 3001

春日野に照る夕日のように遠くからあなたを見ていただけだったのが,今になって悔やまれてなりません.)

 

 

 

以下は再掲

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/10/13/181909

夕映え,夕焼けを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

雲にうつる日影の色もうすくなり花の光の夕ばえの空  藤原為顕 玉葉

 

夕焼小焼大風車のうへをゆく雁が一列鴉(からす)が三羽  北原白秋 雲母集

 

夕映えの雲あかくしてそことなく浜なでしこの安芸の国見ゆ  与謝野晶子 佐保姫

 

夕焼け空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖(うみ)のしづけさ  島木赤彦 切火

 

ゆうやけの/たちまち暗き 夜となりぬ。/山黒々と/雨たれてをり  釈迢空 春のことぶれ

 

白雲もゆうやけ雲も暮れ色にいろ消えゆくも日は入りぬらし  正岡子規 正岡子規全歌集

 

飛騨の空にあまつ日おちて夕映のいづかなるいろを月てらすなり  斎藤茂吉 つゆじも

 

夕茜みつつ来りて土手のうへの枸橘(からたち)の枝やさしかりけり  佐藤佐太郎 歩道

 

夕茜内浦凪ぎをわたりきて汀さざなみくれないに染む  加藤克巳 石は叙情す