立秋/秋立つを詠んだ短歌  明日は立秋.「とても秋とは言えない」と,評判の悪い日です.しかし,夏至と秋分の中間点.太陽の運行は,着実に秋を目指しています. 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行  秋立つと人はつげねど知られけりみ山の裾の風のけしきに 西行  かの青き空のかがみにあらはれてさやかに秋の来たるを見ずや 太田水穂  秋立つは水にかも似る/洗はれて/思ひことごと新しくなる 石川啄木  針箱はなつかしきもの秋くれば針の光りの身をそそるかも 今井邦子

今日は大暑の最後の日.

晴れていながら時々雨がザーッと降るといった1日でした.奄美大島付近に停滞している大きな台風の影響が,鎌倉にまで及んでいるようです.

昨日今日は,「大暑の末候:大雨時行 たいうときどきにふる」に合致しているとも言える日でしたが---

本来は,積乱雲ー夕立を想定している72候でしょうから,似て非なると言った方がいいのかもしれません.

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そして,明日は立秋

「とても秋とは言えない」と,評判の悪い日です.明日も暑い日でしょう.

しかし,夏至秋分の中間点.太陽の運行は,着実に秋を目指しています.

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初候は「涼風至 すずかぜいたる」.明日も熱風が吹く予感がしますが---

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それでも,季節は移っていることを感じることはできます.

おんめ様(大巧寺)の小径には,秋明菊が咲きはじめています.

 

立秋/秋立つを詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふる夜ぞ多き  柿本人麻呂歌集より 万葉集巻十 二〇三〇

(秋が来て、川霧のたつ天の川に向かいながら、恋する夜が多いのです 楽しい万葉集

 

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる  藤原敏行 古今集

 

かは風の涼しくもあるか打ち寄する波とともにや秋は立つらむ  紀貫之 古今集

 

秋立つと人はつげねど知られけりみ山の裾の風のけしきに  西行 山家集

 

吹く風の涼しくもあるかおのづから山の蟬鳴きて秋は来にけり  源実朝 金槐集

 

かの青き空のかがみにあらはれてさやかに秋の来たるを見ずや  太田水穂 山上湖上

 

染めてよと君がみもとにおくりやりし扇かへらず風秋となる  与謝野晶子 みだれ髪

俵万智訳 恋の歌書いてと君に言ったのに扇返らず風秋となる)

 

端渓の硯の魚眼すがしくて立秋はいま水のごとあり  北原白秋 黒檜

 

秋立つは水にかも似る/洗はれて/思ひことごと新しくなる  石川啄木 一握の砂

 

針箱はなつかしきもの秋くれば針の光りの身をそそるかも  今井邦子 片々

 

男らの拙き欲を風は欷(な)き黍畑の黍秋に入るべし  馬場あき子 雪木

 

秋至る空の縹(はなだ)へ差し入れて不犯の腕(かいな)悲しまむとす  春日井健 青葦