半夏生(七十二候) 日本人の多くが季節を思い浮かべるときに,また農作業などで利用してきたのが,24節季72候を利用した季節.今日は二十四節気では夏至.七十二候では半夏生(はんげしょう)にあたります.半夏が生え始める頃.「半夏」は「烏柄杓」(からすびしゃく)の漢名.あまりなじみのない植物ですが,二十四節季の「雑節」として半夏生が導入された平安時代に「半夏」と称されていたのは,間違いなく「カラスビシャク」.ドクダミ科の半夏生は江戸時代以降の用例しか見当たらないとのこと.

今日も蒸し暑い1日でした.

7月に入って3日.季節としてはもう夏.しかし,私は,梅雨が明けないと夏が来たという感じになりません.

国立天文台計算室のウェブページによれば,初夏秋冬という季節には絶対的な定義は存在しないとのこと.

暦Wiki/季節 - 国立天文台暦計算室

様々な感じ方に従って,「あ〜夏だ」と思っていれば良いのでしょう.

暦Wiki/季節 - 国立天文台暦計算室

上の表で言うと,

「気象学的季節」で,季節を思い浮かべる方が現在は多いかと思います.

一方,私は,5月になると,「春が終わり初夏だ」とも思ってしまいます.「夏は長く,間に梅雨がある」「本格的な夏は梅雨明けから」というのが私の感覚https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/06/15/234318

 

そして,日本人の多くが季節を思い浮かべるときに,また農作業などで利用してきたのが,節月区切りによる季節.

24節季72候を利用した季節です.平安時代に中国から伝わり,その後,内容や記述を日本に合わせて改良されてきたものです.

http://chugokugo-script.net/koyomi/geshi.html

江戸時代の天文暦学者・渋川春海が日本の気候に合わせて改訂版を出し,その後明治時代に「略本暦」が出てそれまでの「七十二候」を大幅に変えました.現在使われている日本の七十二候はこれが元になっています.

 

よく知られている内容ですか,改めて解説を転載しておきます.

暦Wiki/季節 - 国立天文台暦計算室

二十四節気(にじゅうしせっき)は、1年の太陽の黄道上の動きを視黄経の15度ごとに24等分して決められているため,現在の太陽暦と全く矛盾がない季節となっています.(約15日ごと)

七十二候は二十四節気を細分化したもの(約5日ごと)で,気候を表します.

 一気を初候・次候・末候の三候に分けるので、合計72個になります。

 二十四節「気」と七十二「候」をあわせて「気候」となります。

( ▽気候の語源:一五日を一期として「気」といい、五日を一期として「候」というところから 日本国語大辞典

https://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/nijyushisekki/

 

二十四節気の区分では,今日は夏至.(夏至当日は6月21日頃)

七十二候では夏至の末候の半夏生(はんげしょう)にあたります.

半夏が生え始める頃.田植えを終える目安とされました.「半夏」は「烏柄杓」(からすびしゃく サトイモ科ハンゲ属)の漢名です.

https://www.i-nekko.jp/meguritokoyomi/shichijyuunikou/

https://ja.wikipedia.org/wiki/カラスビシャク

七十二候の半夏生は,もとは,平安時代に,日本特有の「雑節」として取り入れられたものとのこと.

http://chugokugo-script.net/koyomi/nijuushi-sekki.html

日本は平安時代から二十四節気を暦の中に取り入れましたが,これだけでは日本の気候の説明には足りないので,「雑節」というものを設けました。雑節には,節分・彼岸・八十八夜・入梅半夏生・土用・二百十日などがあります.

 

また,七十二節季の半夏生は,よく植物としての「半夏生ドクダミハンゲショウ属)」と間違われますが,平安時代に「半夏」と称されていたのは,間違いなく「カラスビシャク」,

ドクダミ科の半夏生は江戸時代以降の用例しか見当たらないとのことhttps://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/72

このことは,日本国語大辞典の用例でも確かめることができます.半夏は田氏家集(892頃)に用例が見られるのに対し,半夏生の用例は物品識名(1809).

 

半夏生は,ちょうど今の季節に葉が白くなり,私も大好きな植物ですが.

鎌倉光則寺の半夏生

 

半夏生まためぐり来て琅玕のうへはてしなく澄むあけのそら  高嶋健一 存疑抄

 

 

▽半夏には,「仏語。夏安居(げあんご)の結夏(けつげ)と夏解(げげ)との中間、つまり九〇日にわたる安居の四五日目の称(日本国語大辞典)」の意味もあり,72節季の半夏がこの意味から生じたと解説しているサイトがありました.

https://tenki.jp/suppl/hiroko_furuya/2023/07/01/32029.html

しかし,この解説はかなり問題があります

仏教用語の半夏は,平安時代にはほとんど用いられていなかったようです(日本国語大辞典の引用例は蔭凉軒日録−嘉吉元年1441).また,半夏をあたかも日本で付けられたカラスビシャクの名前のように解説していますが,半夏はカラスビシャクの漢語で,日本で名付けられた名前ではありません.

 

なお,二十四節気七十二候については,国立天文台のもの以外にもウェブ上に沢山の解説があります.それぞれ一般向けでわかりやすいものの,どこまで信頼してよいかは不明なところがあります.学術的な記載を探したのですが,探しきれませんでした.

一般のサイトとしてはかなり詳しく,正確さも期待できるのが次のサイトかと思います.

http://chugokugo-script.net/koyomi/nijuushi-sekki.html

http://chugokugo-script.net/koyomi/geshi.html