9月を詠んだ歌 9月になっても体温並みの暑さ.秋のはずですが---しかし「9月から11月が秋」は感覚には合つています. 九月よりわがま近くに聞こゆるは小学校のおさな等のこゑ 斎藤茂吉  九月一日来てまたも食ふ焼きむすび妻子もわれも命生きたり 松村英一  歌え歌う雨の九月の峰越えてびしよ濡れの谺(こだま)かえる楽しさ 佐佐木幸綱  梨もぐと手をのばしたる少年の脇下の翳(かげ)りほのかな九月 久々湊盈子

9月になりました.しかし---

「9月になっても体温並みの暑さ.東京は今年71日目の真夏日で最多タイ」

https://weathernews.jp/s/topics/202309/010175/

 

秋のはずですが---

 

秋 日本国語大辞典 

①四季の一つ。現在では九月から一一月、

旧暦では七月から九月までをいう。天文学的には秋分から冬至の前日まで、二十四節気では立秋から立冬の前日までをいう。

 

日本国語大辞典では,「現在では九月から一一月」と断定していますが,

国立天文台のサイトでは,「季節と言うと、春夏秋冬を思い浮かべると思います。しかし、たとえば春がいつからいつまでなのかについては、絶対的な定義は存在しません。」とのこと.こちらの方がより正確な言い方かと思います.

 

春(3月〜5月)/夏(6月〜8月)の区分には少し違和感(「5月が春?」)がありますが,「9月から11月が秋」は,私,そしておそらく多くの方が抱く感覚とピッタリ一致しているように思います.

Wiki/季節 - 国立天文台暦計算室 

 

旧暦では,9月は「長月」.

「夜がだんだん長くなるから『夜長月』というのを誤ったもの」などの説があるものの,「長月の語源は定かではない」とのこと.(日本国語大辞典

今年に当てはめると10月15日〜11月12日.秋も深まってきたころに当たります.

皐月,師走などのように,旧暦の月の名を新暦にも当てはめて使うことはままあります.しかし,長月は,新暦の9月の呼び名としてはあまり用いられないように思います.新暦9月はまだ秋は始まったばかりだからでしょうか.

古今短歌歳時記に「和歌では長月は万葉集以下勅撰集ほかに限りなく詠まれている」とありますが,今日は,明治以降で,「9月を詠んだ歌」を取り上げます.

北原白秋石川啄木釈迢空の「長月」は,旧暦の長月かどうか,私にはわかりません.

 

9月を詠んだ歌

(古今短歌歳時記より)

 

九月末秋高々と底ひなき大空のもと憩ひてありけり  金子薫園 覚めたる歌

 

九月よりわがま近くに聞こゆるは小学校のおさな等のこゑ  斎藤茂吉 白桃

 

葉鶏頭(かまっか)の秀(ほ)の燃えたちてふる雨の長月の雨の霽(は)るる間はなし  北原白秋 風隠集

 

長月半ばになりぬ/いつまでか/かくも幼く打出(うちい)でずあらむ  石川啄木 一握の砂

 

なが月の時雨のきたる山の端をおもかげにして背にそよぐ風  釈迢空 釈迢空短歌綜集

 

九月一日来てまたも食ふ焼きむすび妻子もわれも命生きたり  松村英一 松村英一全歌集—標石

 

夏すぎし九月美しく道に踏む青の柳の葉黄の柿の葉  佐藤佐太郎 天眼

 

歌え歌う雨の九月の峰越えてびしよ濡れの谺(こだま)かえる楽しさ  佐佐木幸綱 群黎

 

梨もぐと手をのばしたる少年の脇下の翳(かげ)りほのかな九月  久々湊盈子 家族