散歩で出会った6〜7月の花/植物の短歌を,古今和歌歳時記(鳥居正博編著 教育社)から取りあげてきました.
蕺(どくだみ)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/01/235217
紫陽花(あじさい)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/18/235218
合歓木(ねむのき)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/29/235328
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/30/235511
蓮(はす)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/02/235702
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/06/235652
凌霄花(のうぜんかずら)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/07/235345
半夏生(はんげしょう)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/09/233305
夾竹桃(きょうちくとう)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/10/235946
紫陽花が終わると,暫くは花が少なくなって寂しいと思い込んでいましたが,かなり以前から日本で栽培されてきた花も数多くあることに改めて気づかされます.
またこれらの花を歌に詠んできた歌人たちの繊細な感受性にも気持ちを動かされました.
ということで,短歌に詠まれている花/植物の範囲を,直接出会った花以外にまで広げて,取りあげてみようかと思います.
以前,万葉集に詠まれている花を取りあげたように.
写すだけ万葉集 カテゴリーの記事一覧 - yachikusakusaki's blog
今日は沙羅(しゃら)の木.
実はこの花は,今季,浄妙寺で出会っています.(確信はなかったのですが,間違っていないと思います)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/23/235741
標準和名はナツツバキ.
ナツツバキ
(ニッポニカ ナツツバキとは - コトバンク )
なつつばき / 夏椿
[学] Stewartia pseudocamellia Maxim.
ツバキ科(APG分類:ツバキ科)の落葉高木.
シャラノキ(沙羅樹)ともいうが,サラソウジュ(沙羅双樹)の名で利用されることがあり,真正のサラソウジュ(フタバガキ科)と混同されることが多い.-----
夏,新枝の葉腋(ようえき)に径約5センチメートルでツバキに似た白色花を1個ずつ開く.萼片(がくへん),花弁ともに5枚.-----
蒴果(さくか)は宿存萼に包まれ,10月ころ茶褐色に熟すと,5片に裂開する.----
山中に生え,東北地方以西の本州から九州,および朝鮮半島に分布する.庭木として植えられ,材は床柱,器具,彫刻に用いる.
[杉山明子 2021年4月16日]
上記,ニッポニカの記述で
「シャラノキ(沙羅樹)ともいうが,サラソウジュ(沙羅双樹)の名で利用されることがあり,真正のサラソウジュ(フタバガキ科)と混同されることが多い」
とありますが,
「真正のサラソウジュ:Shorea robusta」の花はこちら.
フタバガキ科サラノキ属サラソウジュ
ずいぶん違いますね.
長い間,ナツツバキをサラソウジュと呼んできたため,ナツツバキの呼称としても定着しているため,
( お釈迦様が亡くなった時、そばに生えていたと言い伝えられる「沙羅双樹」はどのような木で、どのような花が... | レファレンス協同データベース )
もともとのサラソウジュを「真正のサラソウジュ」として区別したのがニッポニカの記述.
日本国語大辞典でも,沙羅双樹の解説の②には「なつつばき(夏椿)の異名」と記載されています.
沙羅双樹 さらそうじゅ
① フタバガキ科の常緑高木.インド北部原産で,日本では温室で栽培される.幹は高さ三〇メートルに達する.----
葉腋(ようえき)に
径約二センチメートルの淡黄色の五弁花を円錐状に多数集めてつける.
果実には長さ五センチメートルぐらいの,萼が生長した翼が五枚ある.----
釈迦が入滅した場所の四方に,この木が二本ずつ植えられていたという伝説からこの名がある.しゃらそうじゅ.さらのき.さらじゅ.さら.しゃら.しゃらじゅ.
※俳諧・毛吹草(1638)五「雪仏きゆる林やさら双樹〈元次〉」
② 植物「なつつばき(夏椿)」の異名.〔日光山志(1825)〕
[補注]「栄花」「平家」「平治」などでは「しゃらさうじゅ」とよんでいる.
そして,「真正のサラソウジュ」は「淡黄色の五弁花を円錐状に多数集めてつける」のですが,
与謝野晶子,斉藤茂吉など名だたる歌人も,「白い花」=ナツツバキを詠って「沙羅双樹」としています.
沙羅双樹しろき花ちる夕風に人の子おもふ凡下のこころ 与謝野晶子 (舞姫)
山のあらし一夜ふきつつ砂のへに白く落ちたる沙羅双樹のはな 斎藤茂吉 (白桃)
つゆの雨に咲く沙羅の木の花白く雨の色くらき土に落ちつつ 福田栄一 (詠吟)
遺し文風に洗われいる母の昔の夏にゆく沙羅の花 馬場あき子 (飛花抄)
古今和歌歳時記(鳥居正博編著 教育社)
ナツツバキは,ツバキ科ですが,ツバキ属Camellia ではなく,ナツツバキ属.
Stewartia に分類され,同属にヒメシャラがあります.
種小名はpseudocamellia=ニセツバキの意味になりますね.
#0095シャラノキ(ナツツバキ)Stewartia pseudocamellia | 植物に親しむ~赤塚植物園