椿を詠んだ短歌2  椿を求めて,鎌倉大巧寺(おんめさま)と妙本寺へ行って来ました.おんめ様の境内には,沢山の種類が植えられています.また,妙本寺には,鎌倉で最も美しいと私が勝手に思っている椿があります. 白椿そのあざらけし黄の蕊(しべ)に手触れつつわれのこころ妖し 坪野哲久  椿一枝(いっし)おく空席を探さむに気配けはしき聖晩餐図 塚本邦雄  貧寒の生にはあらずわれの掌(て)に鋏鳴り白玉椿一枝 富小路禎子  落椿くれなゐくらき地の上を雷は東に射抜きてゆけり 角宮悦子

今日は快晴.椿を求めて,鎌倉大巧寺(おんめさま)と妙本寺へ行って来ました.

 

藤沢へ引っ越して初めてのおんめ様.

ちょうど利休梅が咲き始めたところ.最も好きな花の一つです.

 

おんめ様の境内は狭いのですが,沢山の種類が植えられています.また,妙本寺には,鎌倉で最も美しいと私が勝手に思っている椿があります.

先日の大船フラワーセンターの椿が,期待をやや下回っていたので,引っ越し手続きのついでに,この三年間最も足繁く通った寺院に足を伸ばした次第.

 

次の画像は初めの一組がおんめ様,後の二組が妙本寺の椿.妙本寺の二組目の椿が私が勝手に「鎌倉一」と思つている花になります.

 

 

以前にも書いたように,また,多くの方に知られているように

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2016/12/23/020236

の木と書いて椿ですが,漢語の「椿」はチンでチャンチンを表す漢字.

椿 チン :ちゃんちん。香椿チヤンチン。センダン科の落葉高木。材はかたく、器具をつくるのに用いる。(角川新字源)

https://www.uekipedia.jp/落葉広葉樹-タ行/チャンチン/

日本語のツバキにこの漢字を用いるのは,次の

新字源「国訓」のうちの②:「漢字の,中国での用法に合致しない,日本でのよみ方」

の用法であることはよく知られています.

こっ‐くんコク‥【国訓】 日本国語大辞典
①漢字のよみとしてあてられている国語。「山」を「やま」、「白」を「しろ」とよむ類。訓。和訓。よみ。〔漢字要覧(1908)〕
②漢字の、中国での用法に合致しない、日本でのよみ方。中国で、「ゆるす。かねを払わずに借りて買う」の意味の「貰」を「もらう」とよむなどの類。

中国で椿は「山茶」.日本ではサザンカを表す漢字に用いられていますね.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2016/12/03/002822

 

椿は,材や種子(⇨搾油する)が縄文時代から利用され,花は貴族に愛され,万葉集にも詠まれました.

あしひきの八つ峯(を)の都婆吉(ツバキ)つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君  大伴家持

園芸化が急速にすすんだのは室町時代以降とされています.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2016/12/23/020236

https://www.tokyo-park.or.jp/special/botanicallegacy/ja/about/kind/camellia/index.html

「ツバキは、日本(本州以南)に自生する植物で暖地・沿岸部にヤブツバキ、積雪地帯にユキツバキが見られます。

種子(椿油)や材は今から2300年以上前の縄文時代から人々の生活に利用され、花も古くから貴族に愛され日本書記(685)にツバキを天武天皇に献上した記録があります。室町時代以降(1338~)武士に価値を見出されツバキが庭園、華道、茶道で使われるようになり園芸化が進みます。

江戸時代、徳川将軍家は、初代家康から3代続いて花好きでした。とりわけ2代秀忠はツバキを好み、諸大名らに広がり「寛永のツバキ」(1624)の流行が起こりました。

https://www.tokyo-park.or.jp/special/botanicallegacy/ja/about/history/index.html

また、江戸時代後期には、プラントハンターやシーボルトに紹介され、1830年頃冬のバラとしてヨーロッパで日本のツバキのブームが起こりました」

 

椿を詠んだ短歌2

(古今短歌歳時記より)

 

赤椿はやちの中に光りけりピアノの止みしそのたまゆら  中村憲吉 林泉集

 

つばきの首だけが膳に置かれたり花の懸念をかへてゐにけり  加藤雅之 新風十人

 

白椿そのあざらけし黄の蕊(しべ)に手触れつつわれのこころ妖し  坪野哲久 胡蝶夢

 

白椿おぼろに見ゆる裏庭や硝子くぐもりて寒き朝々  佐藤佐太郎 しろたへ

 

椿一枝(いっし)おく空席を探さむに気配けはしき聖晩餐図  塚本邦雄 天變の書

 

貧寒の生にはあらずわれの掌(て)に鋏鳴り白玉椿一枝  富小路禎子 透明界

 

落椿くれなゐくらき地の上を雷は東に射抜きてゆけり  角宮悦子 銀の梯子