桂 / 桂を詠んだ歌  古事記ではヤマサチビコが登り,万葉集では月の中の木として詠われました.ハート型のかわいらしい葉は,秋には見事に黄葉し,その時期に高まる芳香で人々を和ませます.  川添の木むらの桂黄葉せり添水(そうず)をおとせ小屋の戸口に 岡麓   真野の宮 砌(みぎり)におつる秋の葉の桂のもみぢ すでに 色濃き 釈迢空

歌人たちは,古来より,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉も歌に詠んできました.そのような歌を取り上げています.

今日は「桂」.詠まれた歌はあまり多くないようですが.かわいらしい葉は大好きです.

https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/122539

 

 

古事記では,ヤマサチビコ(日本神話では神武天皇の祖父とされる)が,トヨタマビメを待つために登り(加都良=桂は神の依り憑く木),

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/01/24/222554

 

万葉集では,

 

目には見て手にはとらえぬ月の中の楓(カツラの万葉表記=桂)のごとき妹をいかにせむ  湯原王 万葉集 巻四 六三二

 

と,月の中の木として詠われた「カツラ(桂)」.

 

漢字のもともとの意味(中国での意味)は,月の中の木以外,「肉桂」または「木蓮」.

本の草や花や樹に当てられた 漢字は,古いむかしの中国で まったく別の花や樹をいう名だった」(長田弘)ことはよく知られていますが,「桂」も,その例に漏れません.https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/01/25/

整理すると次の表の通り:

漢字「桂」を「かつら」と読むのはいわゆる「国訓」(:漢字の、中国での用法に合致しない、日本でのよみ方)

中国で桂が示す植物は,次の❶㋐肉桂につけい㋑モクセイ

 

桂 (角川字源)

❶かつら。 ㋐肉桂につけい。クスノキ科の常緑高木。樹皮を香辛料(シナモン)とする。  ㋑モクセイ科の常緑の香木の総称。

❷中国の伝説で、月の中にあるという木。❸→桂月けいげつ(月の別称。月の中には桂の木があるという伝説による。/陰暦八月の別称)❹広西カンシー省の別称。

国訓 かつら。カツラ科の落葉高木。船材や建築材として用いる。

 

神の依り憑く木「桂」は,木材としての利用価値も高い.

そして,ハート型のかわいらしい葉は,秋には見事に黄葉し,その時期に高まる芳香(マルトールと特定されています  https://sambuca.jp/katsura/ )で人々を和ませます.

https://www.uekipedia.jp/落葉広葉樹-カ行/カツラ/

https://ja.wikipedia.org/wiki/カツラ_(植物)

 

 

川添の木むらの桂黄葉せり添水(そうず)をおとせ小屋の戸口に  岡麓 小笹生

 

 

真野の宮 砌(みぎり)におつる秋の葉の桂のもみぢ すでに 色濃き  釈迢空 倭をぐな