歌人たちは,古来より,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉も歌に詠んできました.そのような歌を取り上げています.
「柞もみじ」「蔦もみじ」に続き,今日は櫨(はじ/はぜ)もみじ,うるしもみじ,ぬるでもみじ.
櫨(はじ/はぜ)もみじ,漆もみじ
ハゼノキやヤマウルシはカエデ,ツタとと同等かそれ以上に美しく紅葉する木.
ハゼノキは,鎌倉で最近見ましたが,紅葉途中の状態でした.
ネット上から画像をお借りして掲載しておきます.
ハゼノキ - 庭木図鑑 植木ペディア http://www.geocities.jp/tama9midorijii/ptop/yamap/yamahaze.html
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/11/18/010659
どちらもウルシ科ウルシ属で,ヤマハゼ,ウルシはそれぞれ別種.キチンと見分けることが私にはできません.
ハゼノキ/ヤマハゼ&ヤマウルシ/ウルシの違いを一覧表にしたサイトがありますのでご覧あれ.https://elm3.web.fc2.com/top/ruijisyu-miwakekata-hoka/hazenoki-yamahaze-urusi-yamaurusi.html
ウルシは,漆器用のウルシを採ることでよく知られてゐるのに対し,ハゼノキは,実から蝋をとる目的で栽培されていました.
短歌,特に古歌では,櫨と書いてハジと読ませます.
ややこしいことに.この櫨(はじ)は,ヤマウルシとハゼノキ双方の古名/異名とされています.
はじ【黄櫨・櫨】
①植物「やまうるし(山漆)」の古名.
*書紀(720)神代下
「梔.此をば波茸ハジと云」
②植物「はぜのき(黄櫨)」の異名.
③襲かさねの色目の名.①の紅葉を連想させる色として表は赤で裏は黄,一説では表は黄で裏は萌黄.晩秋・初冬に用いた.
なお,ウルシ属の近縁のヌルデ属ヌルデも紅葉が美しいことで知られ,短歌にも詠まれています.
はじ(はぜ)もみじ/うるしもみじを詠った短歌
もずのゐる櫨(はじ)の立枝のうす紅葉たれわがやどの物とみるらん 藤原中実 金葉集
木枯らしの末に立てるはじもみぢ秋のかたみによきて吹かなん 藤原為家 新撰六帖
崖のつちほろろ散る日の秋晴れに漆紅葉のさびしくも燃ゆ 若山牧水 朝の歌
櫨紅葉散りつくしたる空広し今はもしるく枇杷の花さけり 植松壽樹 庭燈
島山の櫨のもみぢの美しき朝を出でゆく真熊野の船 岡野弘彦 滄浪歌
峠路のぬるでは深く紅なれば頬にやはらに夕陽はもゆる 馬場あき子 早笛
うるしもみじに気触れし胸よ終にわが生みて深まる日のなきままに 角宮悦子 銀の梯子