この一ヶ月ほど,鎌倉のあちこちでキンモクイセイ(金木犀)を見かけます.木も花も,そして,もちろん香りも,多くの方に好まれる木.私も大好きです.
金木犀は,植物分類では銀木犀の変種として扱われています.
街で銀木犀を見かけることはあまりありませんが,鎌倉では高徳院(鎌倉大仏)に大きな木があることを思いだし,出かけてきました.
高徳院は,庭もきれいに整備されています.大仏があまりに大きくて,目立ちませんが.
大仏の横手の庭にある銀木犀.小さいけれどしっかりした花を付けていました.
ただ,残念なことに,樹勢が衰え,僅かな花しか付けていません.
このまま,朽ちさせるには,惜しい木です.しかし,回復はかなり難しいように見えます.素人目ですが---.
どうか,長生きさせてください
「木犀」は,幹が動物のサイ(犀)の肌に似ているというので、日本で名づけられたといわれています.確かに似ているような気がします.
中国での名前は「桂」.日本で「桂」と呼んでいる樹木はあて間違いだったんですね.
中国語で「桂」は,二つの樹木「肉桂(シナモンを採る木)」「もくせい」または「月の中にある木」(伝説として)を意味します.(角川字源)
桂花は,木犀もしくは木犀の花のこと.(月の桂を意味することもあるようですが)
そして,桂秋はもくせいが咲く秋の季節.きれいな言葉です.
以下,このところ恒例としている
モクセイを詠んだ短歌
古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)から.
歩みきてふとしも匂へ山の手の日の照る坂の木犀の花 太田水穂 雲鳥
裏山の径をのぼりて木犀の香を嗅ぐころぞ秋はれわたる 斎藤茂吉 のぼり路
木犀のせつなきまでに匂ふひる短きときを窻(まど)にまどろむ 木俣修 歯車
閉ざしたる夜の部屋にして一塊(くれ)の香気醞醸(うんじょう)す黄の木犀花 葛原妙子 橙黄
木犀の金より銀に咲き移る季(とき)を恋ふるはわれから妖し 三国令子 晨(あした)の雪
物音も立てぬ一日と寂しめり木犀の花夜の卓にこぼるる 大西民子 まぼろしの椅子
木犀のにほふ野を来てかの丘に夭死のむくろ焼きし日思ほゆ 岡野弘彦 滄浪歌
木犀の香りにふりむく坂道に/二十の景色/モノトーンとなる 俵万智 とれたての短歌です