鎌倉円覚寺の山門前・駐車場のカエデは,かなりきれいに紅葉している株がいくつかありました.カエデは漢字では「楓」,一般的には「もみじ」と呼ばれる事が多いかと思いますが,漢字「楓」,呼び方「もみじ」には,歴史的にややこしいことがいくつかありますので,整理してみました. 我が宿にもみつ蝦手(かへるで)見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし 田村大嬢  月に見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ 湯原王

イチョウと並んで,紅葉(黃葉)する樹木の代表と言えば,カエデ(楓)ですね.

北鎌倉円覚寺まで,楓の紅葉探索に行ってきました.昨日のことです.

 

見頃は11月下旬から12月初旬ですが,きれいに紅葉している株にも出会うことができました.特に山門の外と駐車場のカエデは,既に見る価値あり.

 

山門の外のカエデ.

 

特に横須賀線をはさんだ県道沿いの駐車場のカエデは既に見頃といっても良い株もいくつかありました.

 

カエデは「かへるで」から

カエデは,万葉集では「かへるで(蝦手)」.かへるでが変化してカエデに.

蛙の手に似ているとしてつけられた名前.

カエデやイチョウの紅葉・黄葉について アマガエルのお話.: アマガエルの指 1

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/11/17/002223

この「カエデがカエルデから変化した言葉」というのはわかりやすいのですが---

カエデの漢字「楓」と.カエデの別名にもなっている「モミジ」はややこしい.

 

漢字「楓」

▽漢字では楓.しかし,この訓はいわゆる「国訓」で,中国では「フウ」(ユキノシタ目フウ科フウ属)を意味する漢字.

(ただし,カエデ属のトウカエデ(Acer buergerianum)は「三角楓」と表記 ニッポニカ)

 

▽さらにややこしいのは,万葉集では,「楓」はカツラ(桂)にあてられている!

万葉集だけではなく「本草和名(918年編纂)」 「新撰字鏡(898〜901年)」にカツラと読み,「和名抄(931〜938年)」にはヲカツラとしているとのこと(日本国語大辞典).

中国では「フウ」.日本でははじめは「カツラ」.その後に「カエデ」をさす漢字となったということですね.

 

カエデとモミジ この二つの言葉にもややこしい点がいろいろあります.

唱歌「もみじ」:

秋の夕日に照る山もみじ---

(「紅葉(もみじ)」 作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一(このコンビは「紅葉(もみじ)」の他にも「故郷(ふるさと)」、「春が来た」、「春の小川」、「朧月夜(おぼろづきよ)」などの日本の名曲を数多く残している.紅葉(もみじ) 童謡・唱歌 歌詞と試聴

この歌は秋の紅葉を歌っていますが(秋を彩るカエデやツタは---),連想するのはカエデ.私は普段,カエデを「もみじ」と呼んでいます.多くの方が同様ではないでしょうか?

 

しかし,

「もみじ」は,もともとは,

“動詞「もみず(紅葉)」の連用形の名詞化.古くは「もみち」”

すなわち,第一義は

「秋に,草木の葉が赤や黄に変わること.紅葉こうようすること.また,その葉」

日本国語大辞典

 

そして,

“紅葉する木の総称でもあるが,なかでも楓(かえで)がみごとに紅葉するところから,楓の異称として用いられる.”(ニッポニカ).すなわち,「もみじ=かえで」は第二の意味.

 

①「もみじ=葉の色が赤や黄にかわること」に関連して:

紅葉する様子を示す「もみじ」は,「紅葉」だけではなく,「黃葉」と表されることがあり,万葉集ではこちらが主.

また,様々な植物が紅葉/黃葉した様子を,「さくらもみじ」「いちょうもみじ」などのように表現することもある.

②「もみじ=かえで」に関連して:

「植物分類上はカエデとモミジはともにカエデ属樹木を表す同義語であるが,園芸界ではイロハモミジ,オオモミジ,ハウチワカエデなどイロハモミジ系のものをモミジといい,それ以外のイタヤカエデ,ウリハダカエデなどをカエデとして区別する習慣がある.」(ニッポニカ)

とのこと.

 

 

万葉集 「かへるで」と「楓(かつら)」

 

我が宿にもみつ蝦手(かへるで)見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし  田村大嬢(たむらのおおいらつめ) 万葉集巻八 一六二三

(家の庭の紅葉した楓(かえで)を見るたびに、あなたのことを思って、恋しくないなんて日はありませんよ  楽しい万葉集

 

 

子持ち山若かへるでのもみつまで寝もと我(わ)は思(も)ふ、汝(な)はあどか思(も)ふ  作者不詳(東歌) 万葉集 巻一四 三四九四

(あの子持山の春の楓の若葉が,秋になって黃葉(もみじ)するまでも,お前と一しょに寝ようと思うが,お前はどう思う 斎藤茂吉 万葉秀歌)

 

 

月に見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ  湯原王 万葉集巻四 六三二