柞(ははそ)もみぢ・雑木もみぢを詠んだ歌  古来より,歌人たちは,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉も歌に詠んできました.「柞」は「ミズナラなどのナラ類およびクヌギの総称」  さほ山のははその色は薄けれど秋は深くもなりにけるかな 坂上是則  唐土(もろこし)の梢もさびし日の本のははそのもみぢ散りやしぬらん 栄西  静心ひとめをいとひ秋山の楢葉もみぢの根を踏み登る 若山牧水

紅葉/黃葉と言えば,

私はカエデとイチョウを思い浮かべてしまいますが,落葉樹であれば,ほぼ全てが秋に葉の色を変えていきます.

歌人たちは,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉を歌に詠んできました.今日からは何回か,古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)から,そのような歌を取り上げてみようと思います.

まず始めは「柞もみじ」.「柞」は「ははそ」と読みます.

 

ははそ【柞】 日本国語大辞典
〘名〙 (「はわそ」の時代も)
ミズナラなどのナラ類およびクヌギの総称。ははそのき

 

古今短歌和歌集(鳥居正博 教育社)では,「ブナ科コナラ属の植物」と記載しています.

https://en.wikipedia.org/wiki/Fagales

 

 

コナラやクヌギといえばドングリの木.

鎌倉・安国論寺でドングリを落としていた木も色づいていました.コナラ属の樹木だと思うのですが--- 

 

コナラという確信が無かったので,植木ペディアから画像を拝借.「秋には黃葉あるいは紅葉する」との記載があります.

https://www.uekipedia.jp/落葉広葉樹-カ行/コナラ/

近代以降に成ると,「雑木もみじ」が歌題に取り上げられます.

 

 

柞(ははそ)もみぢ・雑木もみぢを詠んだ歌 /

 

さほ山のははその色は薄けれど秋は深くもなりにけるかな  坂上是則 古今集

 

 

時ならでははその紅葉ちりにけりいかにこのもとさびしかるらん  村上天皇 拾遺集

 

 

唐土(もろこし)の梢もさびし日の本のははそのもみぢ散りやしぬらん  栄西 続古今集

 

 

静心ひとめをいとひ秋山の楢葉もみぢの根を踏み登る  若山牧水 朝の歌

 

 

逢坂の雑木紅葉の梢(うれ)を這うけぶりを母と思(も)ふべきものか  吉野秀雄 寒蝉集

 

 

ゆふはやく酒をよびつつ山の端の雑木もみぢ見て楽しめり  長谷川銀作 桑の葉

 

 

澄みとほる西日となりて此の谷のははそのもみぢはてしなく見ゆ  土屋文明 自流泉