酢漿草(かたばみ)は,最もよく見かける雑草の一つですが----
https://ja.wikipedia.org/wiki/カタバミ
古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)をみて,かなり名の通った歌人によって短歌に詠まれていることを知りました.
どの歌も,さりげなくかたばみを慈しんでいるように思います.
群れ生いし酢漿草(かたばみ)の葉のか青きに時雨ふりつつさびしきろかも 斎藤茂吉 寒雲
三つよりて仲むつまじき酢漿草のかたちくづさずあり経むものを 若山喜志子 筑摩野
をさなごと幾度か来し道ばたにかたばみの花むらがり咲けり 杉浦翠子 藤浪
しじみ蝶花うつりゆくかたばみに書きあぐみたる心あそばす 谷鼎 冬びより
花了へし酢漿草(かたばみそう)のひと群れをさりげなく視てわれさらむとす 吉野鉦二 山脈遠し
枕草子にもとりあげられ,「かたばみ,綾の紋にてあるも,ことよりはをかし」(酢漿(かたばみ)は、綾織りのような模様になっているのが、他の草よりも良い。)とあるそうです.
枕草子の「紋」は,模様の意味でしょうが,この模様は現在でも多くの「家紋」として用いられています.清少納言の感性は,その後の日本人の感性でもあったと言えるのでしょう.
https://ja.wikipedia.org/wiki/カタバミ
このように,葉,花とも,雑草に分類してしまうのは,惜しい植物で,実際,属名のオキザリス(ラテン語名)の名前で,鑑賞用の栽培種が沢山生み出されています.
https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_image_slideshow&target_plant_code=311&target_hinshu_code=3
カタバミは,ちょっとした不思議な性質を持っていて,植物に親しむための学校教材としても用いられています.
1. 雨や曇った日には開花しない.もしくは早く花を閉じる.
実は,今日の冒頭のカタバミの写真は,自分で撮影したものにするつもりだったのですが---
わが家の隣の児童公園のカタバミは,全て花を閉じていました.
オオキバナカタバミの花も含めて.
あいにく今日は曇っていた!
夕方に花を閉じるだけだと思っていたのですが,雨や曇りの時は開花しないんですね.(今までの観察眼のなさに恥じ入るばかり)
https://www.ja-narita.or.jp/toyamayasouen/カタバミ(カタバミ科)
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4770&key=&target=
2.カタバミは酸っぱい.
カタバミの漢字「酢漿草」は,漢名をそのまま当てて使用しています.酢漿=酸っぱい汁.
https://ja.wikipedia.org/wiki/カタバミ
葉や茎は、シュウ酸水素ナトリウムなどの水溶性シュウ酸塩を含んでいるため、咬むと酸っぱい。 シュウ酸は英語で oxalic acid というが、カタバミ属 (Oxalis) の葉から単離されたことに由来する。
「カタバミを食べない方が良い」というアドバイスもネット上にのっていますが---
英語版ウィキペディアによれば,英語では,カタバミ属の植物をWood sorrelといい,世界中で食べられてきた歴史があるそうです.
Wood sorrel (a type of oxalis) is an edible wild plant that has been consumed by humans around the world for millennia.
カタバミは食用の野生植物であり、数千年もの間、世界中の人類が食してきた
(https://en.wikipedia.org/wiki/Oxalis)
日本でも,サラダ用のオキザリスが販売されています.
https://item.rakuten.co.jp/e-yamanashi/ef-0008/
カタバミはシュウ酸をかなりの量含みます.この性質を利用して,「カタバミで十円玉をこすってピカピカにする」という植物遊びがよく知られています.
https://www.city.sapporo.jp/museum/ouchimuseum/20210924.html
3. カタバミは種を遠くにとばす.自力で!
カタバミの熟した実をそっと持ってきて,https://www.city.sapporo.jp/museum/ouchimuseum/20210924.html
実の真ん中くらいをつまむと…
NHKは動画にしてくれています.一見の価値あり.
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005400777_00000
カタバミの仲間