枯木立・枯枝・裸木・冬枯を詠んだ短歌(2)  「葉を落とすメカニズム」は,かなり分かっていて,高校の生物でも習います(アブシシン酸とエチレンが協調的に作用⇒落葉). 枯原の夜靄(もや)のなかに影太く立つ裸木にあゆみ近づく 長谷川銀作  枯枝の影をふみつつ歩み行く吾の今宵を知る人はなし 近藤芳美  姫沙羅も橅もはだか木雪上にみるものなべて簡淨なりき 川口美根子 

今年もあと約三週間.

わが家でも,新年向けのハボタンも植え終わりました.

 

ナンテンは,赤い実をたわわに実らせています.先日雀がきていましたが,被害はほとんど受けていません.

庭の柿や梅は,かなり前から葉をすっかり落として,「枯木立」に.

 

「落葉樹は,なぜ一斉に落葉するのか」は,エネルギー利用の効率性などで説明されているようですが(例えばhttps://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=217),生きものの在り方に理由を求めるのは,素人目には,かなり無理があるように思ってしまいます

一見いつの間にか葉が入れ替わっている常緑樹も併存しています.

種の多様性をどう説明するのでしょうか?常に最適を求めて進化してきたわけはないでしょう? などと言いたくなる(=単なる素人の強み).

 

一方,「葉を落とすメカニズム」は,かなり分かっていて,高校の生物でも習うようですね.私は全く知りませんでしたが(⇒5分でわかる!落葉のメカニズム/Try-it がわかりやすいので転載させていただきました).葉を落とすことが次期に花を咲かせるための大切な過程となっている植物(例えば牡丹)も知られてきています. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2021.777328/full

https://www.researchgate.net/publication/340588716_Defoliation_not_gibberellin_induces_tree_peony_autumn_reflowering_regulated_by_carbon_allocation_and_metabolism_in_buds_and_leaves

 

 

5分でわかる!落葉のメカニズム (ブナを例として)

アブシシン酸とエチレンが協調的に作用⇒落葉

https://www.try-it.jp/chapters-15371/sections-15372/lessons-15405/point-2/

ブナの落葉に関与する植物ホルモンは2種類あります.アブシシン酸とエチレンです.

ブナは,周囲が寒くなる秋口にアブシシン酸を分泌します.アブシシン酸は寒冷刺激で分泌され,エチレンを合成させることが特徴です.エチレンは気体の植物ホルモンです.そのため,自身だけでなく周囲の木本にも作用します.

エチレンには離層を形成する働きがあります.離層とは何でしょうか?次の図を見てください.

これはブナの葉の付け根を拡大した断面図です.図の左側はブナの幹です.右側の葉を支えている部分は葉柄といいます.葉柄には道管と師管が束になった維管束が通っています.離層とは,エチレンによって葉柄部分に形成される領域です.

エチレンが作用すると,この領域の植物細胞の細胞壁は緩く脆くなっていき,その働きをやめていくのです.

離層が形成されると,維管束の中の生細胞も働きを失います.すると,師管が機能しなくなります.師管は,葉で合成された物質を輸送していましたね.離層の形成にともない,葉で合成された物質は葉に蓄積されていくのです

葉ではアントシアニンという色素が合成されています.アントシアニンが葉に蓄積されると,葉の色が緑から赤へ変化します.この現象が紅葉です.紅葉が見られるということは,葉柄で離層が形成されていることを意味しているのですね.

離層の形成にともなって,離層の植物細胞の細胞壁は脆くなっていきました.細胞壁には植物細胞をおおうだけでなく植物細胞どうしをつなげる働きもありましたね.離層の形成が進むと,やがて細胞壁は葉の重みに耐えられなくなり,離層の部分で葉が外れるのです.

ブナは,落葉によって冬の厳しい寒さに対応しています.

落葉という現象は,アブシシン酸とエチレンという2種類の植物ホルモンが協調的に作用することで,紅葉を経て起こるのですね.

 

 

枯木立・枯枝・裸木・冬枯を詠んだ短歌(2)

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)より

 

裸木に花はひそかに咲きてあり地の上(へ)の影のゆれ動くかな  土屋文明 ふゆくさ

 

 

ゆくりなく屈(かが)みても見つ冬がれし路傍の草に霜かそけきを  斎藤茂吉 遍歴

 

 

枯原の夜靄(もや)のなかに影太く立つ裸木にあゆみ近づく  長谷川銀作 木原

 

 

冬枯の谷間に寒きへやありき何かを待ちてわれは座りゐし  四賀光子 白き湾

 

 

一本の枯木立ち首が折れてをり壁の灰いろに沈む時なれば  前川佐美雄 捜神

 

 

枯枝の影をふみつつ歩み行く吾の今宵を知る人はなし  近藤芳美 早春歌

 

 

枯枝に雪のしずくが午すぎて青みおびつゝこおりはじめる  加藤克巳 心庭晩夏

 

 

裸木らが何の未来か支へゐる真昼間ゆきて耳たぶ寒し  中城ふみ子 乳房喪失

 

 

姫沙羅も橅もはだか木雪上にみるものなべて簡淨なりき  川口美根子 双翔