月見草・待宵草を詠んだ短歌  境川の遊歩道横には,マツヨイグサ属の花々が咲いていました.月見草,待宵草はありませんが--  きりぎりすきこゆる夜の月見草おぼつかなくも只ほのかなり 長塚節  衰ふる夏の日ざしにしたしみて昼も咲くとや野の月見草 若山牧水  たゆたひて今日のをはりの陽光あり月見草の花次次にひらく 君島夜詩  月見草あしたにみれば紅(こう)をおび廃れしのちに何の華やぐ 斉藤史  抱ける子が手にもちしかばわが前の灯(ともしび)の如し待宵草は 田谷鋭

昨日に続いて今日も曇り.時々小雨もという少しうっとうしい日でした.

夕方散歩は,あまり気乗りしないまま,境川の河畔へ.道中,垣根の低木や草地に広がる草の花々に出会いました.

どれも普段見過ごしてしまう花ですが,とても立派な名前がつけられています.実際,よく見ると名前に負けないかわいらしい花です.

 

 

その中でも次のマツヨイグサ属の三種は,とりわけ良い名前がつけられている花々だと思います.

取り除くべき帰化植物のリストに加えられていますが,日本在来の花のような名前.江戸時代に帰化したツキミソウ(月見草)やマツヨイグサ(待宵草)の名前を借りているためですね.

 

ツキミソウ(月見草)とマツヨイグサ(待宵草)は,道ばたでは見かけませんが,一度,友人のお宅で見せてもらいました.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/05/11/235701

いずれも花の可憐さに加え,夕方になったら開いて,朝には終わってしまう.そして,月見草は夜になると花の色もピンクに変わる.

日本人に好まれる性質を兼ね備えた花と言えますね.

 

月見草・待宵草を詠んだ短歌

(古今短歌歳時記より)

 

秋風に月見草さく一輪の黄のかなしみのくらくなりゆく  金子薫園 山河

 

月見草初尾花立つ水荘の秋の初めに来てやめるかな  与謝野晶子 白桜集

 

きりぎりすきこゆる夜の月見草おぼつかなくも只ほのかなり  長塚節 長塚節歌集

 

川土手に蛍の臭ひすずろなれど朝間はさびし月見草の花  北原白秋 雀の卵

 

衰ふる夏の日ざしにしたしみて昼も咲くとや野の月見草  若山牧水 路上

 

ひそやかにはじけたる萼の息吸ふと見るまにほぐれ咲く月見ぐさ  五島美代子 暖流

 

霜あれの庭にしじまり青青と待宵ぐさのもと株ふたつ  鹿児島寿蔵 潮汐

 

たゆたひて今日のをはりの陽光あり月見草の花次次にひらく  君島夜詩 暗い川

 

月見草あしたにみれば紅(こう)をおび廃れしのちに何の華やぐ  斉藤史 渉りかゆかむ

 

抱ける子が手にもちしかばわが前の灯(ともしび)の如し待宵草は  田谷鋭 乳鏡

 

再びを越ゆる峠に月見草咲きて薄暮のこと淋しけれ  安永蕗子 閑吟の柳

 

月見草はじめのつぼみ堅牢のみどりを昼の台風つつむ  小中英之 翼鏡