かしわ餅  柏餅が広まったのは,おそらく江戸時代の江戸から. 新芽が出るまで古い葉が落ちない柏に子孫繁栄の願いを込め,武家社会の江戸では端午の節句に食べることが定着したとのこと.しかし,もともと,食べ物を柏で包む風習はあったようで「かしわは,”炊(かし)く葉”から」.一方,西日本ではサルトリイバラで包んだ行事用の餅が広く食べられてきたようで,現在ではこれをかしわ餅を呼んでいるところも多いとのこと.

柏餅の季節ですね,

町の和菓子店から,デパ地下の有名店まで,この時期必ず柏餅を販売していると思います.

https://mi-journey.jp/foodie/95918/


事典和菓子の世界(中山圭子 岩波書店)によれば,柏餅が広まったのは,おそらく江戸時代の江戸から.

新芽が出るまで古い葉が落ちない柏に子孫繁栄の願いを込め,武家社会の江戸では端午の節句に食べることが定着したとのこと.

 

ネット上のかしわ餅の解説は,ほぼ全て同様の記事となっています.しかし,もともと,食べ物を柏で包む風習はあったようで:

 

「かしわ」の語源で有力なのが「かしわは,”炊(かし)く葉”から」とする説(ニッポニカ).また,「かしわ」には,「上代、飲食物を盛り、また祭祀具として用いられた木の葉の食器」の意味もあります(精選版日本国語大辞典).

 

餅を柏で包むことは古くから行われていて,端午の節句に食べるようになったのは,子孫繁栄の意味を込めたため,と考えると納得です---実際は?

 

一方,柏の採れない地方では,かしわ餅はサルトリイバラの葉で包むという記事も多く見かけます.

(例えば,事典和菓子の世界,日本和食卓文化協会https://www.nihonwasyokutakubunka.com/column/2834

(サルトリイバラの異名である山帰来としている記事もあります.もともとはサルトリイバラの根が生薬「山帰来 さんきらい」https://kotobank.jp/word/サルトリイバラ

 

サルトリイバラを使っているのにかしわ餅と呼ばれている!

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_15_yamaguchi.html

しかし,この記事をよく読むと,「かしわ餅」は後からつけられた名前.日本全国の行事食として広まってきた江戸由来の「かしわ餅」の名前を,一年中食べられていた郷土食の名に用いたというのが真相のように思います.

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/43_15_yamaguchi.html

山口県では、郷土料理のひとつとして親しまれており、「ほてんどもち」「いぎの葉もち」「ぷとんもち」「ぼたんもち」など別名も多い。かつては端午の節句の他に田植えやお盆行事の際にも、各家庭で作り、食されてきた。特に、手作業で行われていた田植えは重労働であり、「柏餅」が食べられることがひとつの楽しみになっていたと言われている。また、「柏餅」を作ったら隣近所に配ることもあったという。

 

サルトリイバラで包んだ三重県の郷土食は,いばら餅とされていますが,これもよく読むと名前は地方によって様々で,節供以外にも食べられていたようです.https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ibara_mochi_mie.html

(いばら餅は)地域によって名称が異なる。津市では「いばら餅」というが、東紀州地域では「おさすり」といい、中南勢地域の安濃町近辺では「いばらまんじゅう」、北勢地域の竹成では「がんだち餅」、亀山市では「どっかん餅・どうかん餅」という。どっかん餅は、「どうかん」という名の人物が野上りの祝いにいばらの葉で包んだ餅をつくり、村人に振舞ったところ喜ばれ村人も真似して同様の餅をつくったことから名づけられたといわれている。伊賀地域では「いばらだんご」という。

尚、野上りは田植えなどの農作業の終わりを祝う行事である。この行事にちなんで「野上りまんじゅう」ともいわれている。このように5月の節句以外にも農作業の合間のおやつとしても食べられ、野上りの行事でも農作業を手伝ってくれた人々と共に食べ、労をねぎらうという風習がある。

 

ネット上に記事を集めてみると,「サルトリイバラを用いた行事用の餅は,西日本一帯にかなり広まっていて,かしわ餅の代用としても用いた」と考えるのが妥当のように思われますが,あくまでも私の印象で,実際どうだったかは不明です.専門の先生方には,もう一歩,つっこんだ食文化研究をしてもらいたいですね.

 

一方の柏で包んだかしわ餅.節供にかしわ餅を食べる風習が江戸から広まったとしても,関東地方には,柏で包んだ餅を節供以外に食べる風習はなかったのでしょうか?

(事典和菓子の世界にはかしわ餅が街道の茶店でも売られていたとの記事はあります)

繰り返しになりますが,

「かしわ」には,「上代、飲食物を盛り、また祭祀具として用いられた木の葉の食器」の意味もある(精選版日本国語大辞典).

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/カシワ

ブナ目 Fagales

ブナ科 Fagaceae

コナラ属 Quercus

コナラ亜属 subgen. Quercus

カシワ Q. dentata