ハス(蓮)1  鎌倉八幡宮のハスの花も咲き始めています.以前も取り上げた蓮について改めて整理します.「はす」は「蜂巣」の略名.英語ではlotusですが,「lotus=はす」ではありません.スイレンと似ているため以前は同じ科に分類されていましたが,系統樹上かなり離れた植物(ヤマモガシ目ハス科)とされています.万葉集では葉にたまった露の美しさが詠われています. ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む  作者不詳

鎌倉八幡宮のハスの花も咲き始めています.

(といっても,夕方に見たので開花はしていませんでしたが)

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/01/235700

平家池のハス

源氏池のハス

 

蓮については,このブログでも何回か取り上げてきました.

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/08/08/014403

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/11/19/023725

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/11/20/005847

 

改めて整理します.ほとんどが再掲もしくは同じ内容になりますが.

 

語源

 

和名「はす」

古事記万葉集(⇨最下欄)では「はちす」.

「はちす」が元々の名前で,「はす」は「蜂巣」の略とされてます.花びらが落ちた花托が蜂の巣を連想させるためですね.

 

和名は「蜂巣はちす」の略で、花托の様子からつけられた。(日本国語大辞典

ハス - Wikipedia

 

漢名「蓮」:形声文字.艸と,音符連レンとから成る.(字源)

 

英語名は“lotus ”ですが,lotus =蓮ではない(lotusはいろいろな植物を表している 下記ランダムハウス英語辞典参照)のでややこしくなります.

「蓮」と特定するためには,Indian lotus, sacred lotusと表現すれば間違いありませんが,実際どの程度使われているのかは不明.

 

lotus ランダムハウス英語辞典

1 ロトスギリシア伝説で,その実を食べると夢心地の忘却状態になるとされた,想像上の植物; ナツメの木またはニレの木であろうと考えられている.

2 ロトスの果実.

3 ハス:ハス属 Nelumbo の水生植物の総称. (旧科名スイレン科の記載があったため削除)

花言葉 eloquence(雄弁),repose(平静).

4 スイレンスイレン属 Nymphaea の植物の総称; 特に white lotus.

5 ロータス,蓮華れんげ模様,蓮華装飾:エジプトの柱頭など,古代建築に広く用いられた模様.

6 ミヤコグサマメ科ミヤコグサ属 Lotus の植物の総称.

花言葉 revenge(復讐ふくしゅう). (また ló·tos

7 ⦅L-⦆ 英国製スポーツ[レーシング]カー.

 

植物種

以前(いわゆるクロンキスト体系の分類で)は,見た目がよく似ているスイレンと同じスイレン科の植物とされていましたが----

現在は,系統樹上かなり離れた位置に分類されています.

 

ヤマモガシ目 Proteales,ハス科 Nelumbonaceae,

ハス属 Nelumbo,

ハス N. nucifera

 

スイレンとハスが同じ系統だと誰もが思ってしまうのは,仕方がなかったと思います.

この話題については明日また.

 

 

万葉集

ハスは,「ハチス」として万葉集で詠まれていて,4首登場します.

ハス全体が1首で残り3首はハスの葉(ハスの葉が美しいが1首.そしてハスの葉の上の水玉が2首).

たのしい万葉集: 蓮(はす)を詠んだ歌

 

万葉人はハスの花よりハスの葉,とりわけ,ハスの葉の上の水玉に歌心をそそられていたようです.

現代では,このハスの葉が水をはじく現象は「ロータス効果」として工学の分野で「自浄性」=きれいな状態を保つ性質,を表す言葉となっているそうです.葉の表面の微細構造にその秘密があるとのこと.

ロータス効果 - Wikipedia 

 

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む   作者不詳(万葉集 巻十六 3859)

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉(はちすば)に 溜(た)まれる水の 玉に似たる見む  

 

 ▽山田卓三 万葉植物つれづれ 大悠社

葉にたまった露の美しさに目をとめた細かな観察の歌として,その情景が目に浮かびますが,この歌には,酒席での詠という後注がついています.

意吉麻呂(おきまろ)の「蓮葉(はちすは)はかくこそあるもの,意吉麻呂(おきまろ)が,---」と同様に,情景そのものでなく,美しい女性がイメージされているのかもしれません.

しかし,ハスの葉にたまった水玉の美しさを知っての作であることには変わりありません.