シダレヤナギ/ヤナギ (キントラノオ目の植物8) 多くの日本人がイメージする柳は,シダレヤナギかと思います.学名はSalix babylonicaですが,バビロンにこの柳はありません.聖書の詩篇137篇の冒頭に記載されている木(ヘブライ語からするとポプラを意味する)が柳だと長く誤解されていたため,babylonicaが種小名となりました.万葉集に詠まれていることから,日本へは奈良時代後期までに渡来していたと考えられます.春さればしだり柳のとををにも妹(いも)は心に乗りにけるかも 万葉集

キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています.

 

今日は,シダレヤナギ(枝垂柳)/ヤナギ(柳)

https://en.wikipedia.org/wiki/Salix_babylonica

ヤナギは,スミレとともに,キントラノオ目の中で最もよく目にする植物でしょう.

ヤナギ属の植物全般の総称が柳ですが,多くの日本人がイメージする柳は,シダレヤナギかと思います.また,単に「柳」と書かれている場合,多くはシダレヤナギを指していると考えられます.

 

シダレヤナギは,キントラノオ目ヤナギ科ヤナギ属シダレヤナギSalix babylonica.

学名はbabylonicaですが,バビロンにこの柳はありません.

 

英語版ウィキペディアによれば,https://en.wikipedia.org/wiki/Salix_babylonica

(DeepL翻訳)

中国語では 垂柳で,中国北部の乾燥地帯に自生するヤナギの一種.数千年前からアジアの他の地域で栽培され、シルクロードに沿って南西アジアやヨーロッパに取引されていました.

babylonicaが種小名に用いられたのは,聖書の詩篇137篇の冒頭に記載されている木(ヘブライ語からするとポプラを意味する)が柳だと長く誤解されていたため.

実際,欽定英語版聖書(1952)まで,「willow 柳」と訳され,新国際訳聖書(英語、1978年)なってポプラと改められました.

欽定英語版聖書(1952)

By the waters of Babylon, there we sat down and wept, when we remembered Zion.

On the willows there we hung up our lyres....

われらはバビロンのかわのほとりにすわり,シオンをおもしてなみだながした.

われらはそのなかのやなぎにわれらのことをかけた.

 

新国際版聖書(1978)

 the New International Version of the Bible (English, 1978):

By the rivers of Babylon we sat and wept when we remembered Zion

There on the poplars we hung our harps.

 

万葉集(垂柳しだりやなぎ、四垂柳しだりやなぎ)と詠まれていることなどから,日本へは奈良時代後期までには渡来していたと考えられています.https://kotobank.jp/word/シダレヤナギ-840038

 

たのしい万葉集: 柳(やなぎ)を詠んだ歌

https://art-tags.net/manyo/flower/yanagi.html

春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨

春されば しだり柳の とををにも 妹(いも)は心に 乗りにけるかも   柿本人麻呂歌集より 万葉集巻十 一八九六

(意味: 春がやってくると,しだり柳がたおやかにしなるように,あの女(ひと)が私の心によりかかってきましたよ. 楽しい万葉集

 

梅花 四垂柳尓 折雜 花尓供養者 君尓相可毛

梅の花 しだり柳に 折り交へ 花に供へば 君に逢はむかも  作者不詳 万葉集巻十 一九〇四

(梅の花をしだり柳におりまぜて,花としてお供えしたら,あなたに会えるでしょうか  楽しい万葉集)

 

 

古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)によれば,

枝垂柳は,枝振りと同時に若い芽・葉,花,実から飛び出す種子も美しく,万葉以降も,多くの詩人・歌人の心を引きつけてきました.

「早春に,萌葱(もえぎ)色の芽を吹き出し,葉が伸びる前,または同時に花を開く.

https://www.google.com/search?枝垂れ柳の芽

https://www.google.com/search花の咲いた枝垂れ柳

--- 晩春に実を結んで熟すと,長い白毛のある綿のような種子をとばす.これが『柳の絮(わた)』であり柳絮(りゅうじょ)ともいう」

https://www.google.com/search柳絮

春霞ながるるなべに青柳(あおやぎ)の枝くひもちて鶯鳴くも  作者不詳 万葉集巻十・一八二一

 

さかしらに柳の眉のひろごりて春のおもてを伏する宿かな  清少納言 枕草子 

 

空に満ち照日の下に百枝(ももえ)刺す柳の芽ぶき見の飽かずけり  岡 麓 冬空

 

ふわふわと柳の絮のまひあがる町のはづれに春はたゆたふ   四賀 光子 藤の実

 

 

今まで取り上げたキントラノオ目の植物

ビヨウヤナギ・キンシバイ・セイヨウオトギリ

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/06/16/235559

コカノキ・マンゴスチンアセロラ

https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/06/17/235744