キントラノオ目の植物を取り上げ,簡単な解説を探して掲載しています.
ビヨウヤナギ・キンシバイ・セイヨウオトギリ
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/06/16/235559
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/06/17/235744
トウダイグサ科の植物1(ポインセチア,ナンキンハゼ,マンチニール等)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/06/21/235737
今日は,
ただし,この二つの植物は本ブログで昨年取り上げていますので,今日は,かなりの部分がその繰り返しになります.
トウゴマもキャッサバも有用作物として,世界で栽培されています.
Ricinus - Wikipedia Castor oil - Wikipedia Castor Oil - StatPearls - NCBI Bookshelf https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3384204/
種子からヒマシ油が得られます.主に工業用に利用され,石けん,潤滑油,染色助剤、乳化剤,塗料の材料等として用いられています.
世界のひまし油生産量は年間約200万トン.主な生産地はインド(世界の収穫量の4分の3以上)、中国、モザンビークで、エチオピアでは作物として広く栽培されています.
Cassava - Wikipedia Tapioca - Wikipedia
キャッサバは,ブラジル原産と考えられ,初めて栽培されたのは10,000年以上前と思われますが, キャッサバ栽培の最古の直接証拠は、1,400年前のマヤ遺跡(エルサドバドル)でみつかっています.
現在,熱帯地方では米、トウモロコシに次いで3番目の食用炭水化物源で,5億人以上の人々の主食となっています.途上国、特にサハラ砂漠より南のアフリカ諸国の農業で重要な役割を担っています.キャッサバの生産量は世界で3億300万トン.キャッサバ生産国第1位はナイジェリア.
キャッサバの貯蔵根から抽出したデンプンがタピオカです.タピオカは様々な形状で供給され,我が国で一世を風靡した飲料用に用いられているのは「タピオカパール」と呼ばれる形状のもの.タイはタピオカの最大の輸出国となっています.
なお,食用のほか,キャッサバは飼料用、工業用(洗濯用デンプンからバイオ燃料まで)としても利用されています.
トウゴマとキャッサバの毒性
Ricinus - Wikipedia Castor oil - Wikipedia Castor Oil - StatPearls - NCBI Bookshelf https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3384204/ CDC | Facts About Ricin
Cassava - Wikipedia Tapioca - Wikipedia
昨日取り上げた,ポインセチア,ナンキンハゼ,マンチニールには,共通した毒成分(ホルボール)がありますが--
トウゴマとキャッサバには,それぞれ異なった,しかし,強い毒性成分が存在することがよく知られています.
トウゴマの毒性成分はリシンと呼ばれるタンパク質で,非常に強い毒性(タンパク質合成阻害作用)をもちます.
吸入の致死量中央値(LD50)は3~5 µg/kg,経口のLD50は20 mg/kg.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4986263/
ヒマシ油をつくる過程で分離されるので,ヒマシ油がリシンの毒性を示すことはありません.
キャッサバに含まれる毒性成分は,リナマリン呼ばれるシアン化合物(シアノゲニングリコシド).
シアン化合物をもつ食品としては,他にびわの種子,亜麻の実,杏子の種子,梅の種子,ビターアーモンド等があります.
これらのシアン化合物は,急性シアン中毒や,ヨウ素枯渇による甲状腺腫,クレチン病(先天性甲状腺機能低下症),麻痺性疾患等を引き起こす可能性があるので,適切な処置が施されないままこれらの食品を食べるのは危険です.
キャッサバの場合,伝統的な加工(リナマリン分解酵素リナマラーゼによる分解/水への長期間浸漬/乾燥)・調理方法が効果的に実施されれば、シアン化合物の含有量を安全レベルとすることが可能です.
近年では,食品中のシアンの解毒メカニズムがより理解され、キャッサバの加工に関する推奨事項が改善されました.
なお,デンプンとして精製されたタピオカには,シアン化合物は含まれません.