キャッサバ:タピオカの原料となるトウダイグサ科の植物.マニオク,マンジョカ,ユカとも呼ばれ,熱帯地方では米、トウモロコシに次いで3番目に大きな食用炭水化物源で5億人以上の人々の主食に.タピオカは,このキャッサバの貯蔵根のデンプンの呼び名で,「タピオカパール」と呼ばれる形状のものが飲料用に.リナマリンと呼ばれるシアン化合物とその非グリコシド型が含まれ,急性シアン中毒・甲状腺腫等を引き起こす可能性がありますが,キャッサバの伝統的な加工・調理方法が効果的に実施されれば,安全レベルになります.

トウダイグサ科には,最近人気の園芸品種ユーフォルビア・ダイアモンドフロスト(トウダイグサ属)が属しますが---

タピオカの原料ともなるキャッサバもトウダイグサ科の植物です.

 

▽キャッサバ

トウダイグサ科(Euphorbiaceae)イモノキ属(Manihot,キャッサバ属/マニホット属).

Manihot esculenta

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https://www.researchgate.net/publication/334479852_Euphorbiaceae_Phylogeny_Poster_EuphorbPP

 

以下,キャッサバの利用等について,簡単にまとめてみました.

引用・参考文献は,次の三つです.

Cassava - Wikipedia

Tapioca - Wikipedia

Roots, tubers, plantains and bananas in human nutrition - Toxic substances and antinutritional factors

 

▽キャッサバはそれぞれの国で別の名前で呼ばれています.

:カサーバ(英語: cassava),マニオク(フランス語: manioc)、マンジョカ(スペイン語ポルトガル語: mandioca)、ユカ(カリブ語: yuca)

 

▽キャッサバの利用

タピオカは,このキャッサバの貯蔵根から抽出したデンプンの呼び名.南米先住民のトゥピ語の名前(tipi'óka)に由来し,もともとは「抽出過程で得られるカード状のデンプンの堆積物」を指す言葉とのこと.タピオカは様々な形状で供給され,我が国で一世を風靡した飲料用に用いられているのは「タピオカパール」と呼ばれる形状のもの.

Tapioca - Wikipedia

ブラジルのファリーニャや西アフリカのガリは、キャッサバの根をすりおろし、水分を搾り取った後、乾燥(ファリーニャ、ガリともに焙煎)して得られる粗粉で、食用とされます。

キャッサバは食用のほか,飼料用、工業用(洗濯用デンプンからバイオ燃料まで)としても利用されています。

 

▽キャッサバは,熱帯地方では米、トウモロコシに次いで3番目に大きな食用炭水化物源.

ブラジル原産と考えられ,初めて栽培されたのは10,000年以上前と思われますが, キャッサバ栽培の最古の直接証拠は、1,400年前のマヤ遺跡(エルサドバドル)でみつかっています.

キャッサバは,現在,5億人以上の人々の主食となっています.

痩せた土壌や少ない降雨量でもよく育ち、また多年草であるため必要に応じて収穫できるので、途上国、特にサハラ砂漠より南のアフリカ諸国の農業で特に重要な役割を担っています。また、収穫期が長いため、飢饉時の備蓄として、また労働力の確保に非常に有効です。自給作物としても換金作物としても利用できるため、資源の乏しい農家にも柔軟性を与えています.

世界最大のキャッサバ生産国はナイジェリアで、タイはキャッサバ澱粉(タピオカ)の最大の輸出国.

Cassava - Wikipedia

 

▽キャッサバの毒性と解毒

キャッサバには、リナマリン(シアノゲニン・グリコシド)呼ばれるシアン化合物とその非グリコシド型が含まれ(HCNとして10〜110mg/Kg),急性シアン中毒や,ヨウ素枯渇による甲状腺腫,クレチン病(先天性甲状腺機能低下症),麻痺性疾患等を引き起こす可能性があります.

しかし,キャッサバの伝統的な加工(リナマリン分解酵素リナマラーゼによる分解/水への長期間浸漬/乾燥)・調理方法は、効果的に実施されれば、シアン化合物の含有量を安全レベルとすることが可能です.

近年では,食品中のシアンの解毒メカニズムがより理解され、キャッサバの加工に関する推奨事項が改善されました.

なお,蛇足ですが---

デンプンとして精製されたタピオカには,シアン化合物はゼロと見なして良い状態と考えられます.