トウモロコシの伝播と栽培種の起源/玉蜀黍(とうもろこし)を詠んだ短歌3  アメリカ大陸から,いわゆる「コロンブス交換」で世界に広がったトウモロコシは,その後,世界に広まり,現在,最も多くの人が主食としている作物となっています.アメリカ大陸でのトウモロコシの起源については,現在,かなり解明され,原種としてバルサス・テオシントが同定され,また,約9,000年前に一度だけ栽培された品種が,その後,南北のアメリカ大陸全体に広がったことがわかっています. 枯れながら玉蜀黍も稔るべし寂しき雨と思ひつつ寝る 近藤芳美 

今日の藤沢は晴れ,

関東地方の梅雨明けは,7月22日頃と報道されていますが---

https://tenki.jp/forecaster/tanaka_masashi/2024/07/04/29434.html

向こう一週間の藤沢市の天気予報:傘マークは1日.しかも一時雨かもしれないという閉じたマーク.

ほとんど降らずに梅雨が終わる?大雨はごめんですが,夏の水不足が頭をよぎります.

 

話題は,引き続きトウモロコシ.今日は,トウモロコシの伝播と栽培種の起源について簡単にまとめてみます.

 

「トウモロコシは,日本へは1579年にポルトガル人が長崎に入れたのが最初.その後,明治初年にアメリカから北海道に入り,北海道で盛んに栽培されました」(ニッポニカ).

アメリカ大陸から,いわゆる「コロンブス交換」で世界に広がったトウモロコシですから,日本への初めの到来はコロンブスアメリカ到達の100年以内とかなり早いといえますね.

一方,江戸時代には栽培されていた記録があるものの(例えば本朝図鑑1697年に記載あり:現在のスイートコーンではなく,おそらくフリント種:粉にして食べる),栽培がひろがったのは遅かったことになります

 

コロンブス交換」では,現在世界で重要な役割を演じている様々な作物(*)がヨーロッパへ渡りました.

(*)トウモロコシ,カボチャ,インゲンマメ(以上は北米先住民の農業の中心となる「三姉妹」として知られます)

ジャガイモ,

サツマイモ(ただし、オセアニア-東南アジアにはそれ以前に到達していた),

トマト,

トウガラシ(ピーマンやパプリカ等も含む),リママメ,カシューナッツラッカセイ,ペカン,アマランサス(ハゲイトウ),キャッサバ,キヌア,ヒマワリ,

アボカド,パイナップル,パパイヤ,イチゴ(現代の交配に使われるアメリカの品種),バニラ,ココア / チョコレート,

綿(長繊維の品種など.現在栽培されている綿の90%はアメリカ原産),ゴム,タバコ,コカノキ,チクル(ガムの元になる),アキギリ属(サルビア).

 

中でもトウモロコシは,その後,多くの人々の主食となって,現在でも世界の命を支えている植物と言えます.

本家のアメリカでは,その多くを工業製品として消費していますが---

 

スペイン人入植者たちは,トウモロコシよりも小麦のパンを好んだものの,トウモロコシは,多様な気候で育つことができるため,世界中に広まりました.

コロンブスの航海からわずか数十年後にはスペインで栽培され,その後イタリア,西アフリカ,その他の地域へと広がっていきます.

ヨーロッパでは,18世紀までには,南フランスとイタリアの農民の主食となり,特にイタリアではポレンタとして食べられていました.(https://en.wikipedia.org/wiki/Maize

 

世界に広まったトウモロコシは,現在,最も多くの人が主食としている作物です.

https://www.statisense.co/infographics/agriculture/most-important-staple-foods-in-the-world

https://www.agrivi.com/blog/corn-a-vital-staple-food-in-africa/

特にサハラ以南のアフリカでは,トウモロコシは最も重要な主食作物であり,推定耕作地の17%近くを占めています.サハラ以南のアフリカでは,3億人以上が食料と生計をトウモロコシに依存しているとのこと.

 

アメリカ大陸での栽培トウモロコシの起源については,現在,かなり解明されてきています.栽培トウモロコシは,種子を人の手で撒く必要があるため,人為的に広められたことは確実ですが---

https://en.wikipedia.org/wiki/Maize

2004年,ジョン・ドーブリーはメキシコ南西部高地のバルサス川流域(初期の栽培が行われたと考えられている地域)に自生するバルサス・テオシントZea maysssp.parviglumisを,現代のトウモロコシに遺伝的に最も類似した野生の相対種として同定し,現在,その結果は,ほとんどの科学者によって支持されています.

一方,ドエブリーらは,トウモロコシが約9,000年前に一度だけ栽培され,その品種が,その後,南北のアメリカ大陸全体に広がったことを示しました.
アメリカ大陸にコロンブスが到着した頃には,トウモロコシはアメリカ全土の先住民に主食として食べられ,その栽培法,保存法,調理法も洗練されたものとなっていました.
ただし,問題点が一つありました.
アメリカ先住民は,少なくとも紀元前12001500年頃から,トウモロコシをトネリコと石灰で作ったアルカリ水に浸し,トウモロコシの外皮を除去していましたが(ニクタマリゼーション),この時,ビタミンB群のナイアシンも除去され,ナイアシン欠乏症ペラグラの問題が起きました.現在は高リジン/トリプトファントリプトファンからナイアシンが生合成される)のトウモロコシが開発され,よりバランスの取れた食生活が推進されたことが,ペラグラの消滅に貢献し,また,このトウモロコシは,食糧難の地域や難民キャンプにも供給されているとのことです.
 
 
玉蜀黍(とうもろこし)を詠んだ短歌3
(古今短歌歳時記より)
 
用終へしものの姿はあはれとてとうもろこしの立ち枯れの幹  阿部太 青榛原
 
枯れながら玉蜀黍も稔るべし寂しき雨と思ひつつ寝る  近藤芳美 静かなる意志
 
唐黍の飴煮ぬれし葉押しやりて今夜(こよい)ふけたる窓を閉ざしぬ  高安国世 真実
 
うつつには許せざるものあるゆゑにぽろぽろとむく秋の唐黍  佐藤通雅 襤褸日乗