でん粉からつくられる「糖化製品」と「加工でん粉」  輸入トウモロコシの3/4は飼料として消費され,2番目がコーンスターチ用.コーンスターチの80%は,「糖化製品」「加工でん粉」に.糖化製品のうち重要かつ多量に作られているのが異性化糖.ぶどう糖と果糖が混合した液状の糖で,例えば,清涼飲料水には砂糖の1.8倍用いられています.一方,日本人の1日の加工でん粉の消費量は約8グラムと試算されています.輸入トウモロコシの加工製品を知らず知らずかなり大量に摂取しているのが私たちの食生活と言えます.

夏の風物詩ともいえるトウモロコシ.

スーパーで売られ,また焼きトウモロコシとして縁日に並ぶのはスイートコーンという種類.輸入量はゼロではありませんが,ほとんどが国産でまかなわれます.

https://www.alic.go.jp/content/001165977.pdf

 

一方,日本はトウモロコシ輸入大国.小麦の3倍近くの量を輸入しています.ほとんどは,デントコーンという品種の子実.

輸入トウモロコシの3/4は飼料として消費されます.

そして,2番目が加工用.この二つの用途で国内消費の99%になります.

「加工用」といわれても,何に加工されるのか,素人にはよく分かりませんが---

加工用=コーンスターチ用と考えて良いようです. 

https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001399.html

 

上の表では,3387千トン=338万トンのトウモロコシがコーンスターチの原料として用いられていることになります.このコーンスターチは,一体何に使われているのでしょうか?

以下,やや専門的で退屈な内容になるかと思いますが,少しだけ調べてみました.

 

コーンスターチに限った用途を調べることはできませんでしたが,「でん粉」の用途は,日本スターチ・糖化工業会が報告しています.

日本で作られる「でん粉」は,その85%がコーンスターチ.従って,まとめられている「でん粉の用途」のほとんどは,「コーンスターチの用途」と重なると考えて良いと思われます.

https://www.starch-touka.com/denpun/

2番目に多いでん粉の種類は,片栗粉としても販売されているばれいしょでん粉.

3番目は輸入でん粉.この輸入でん粉に何が含まれているのかは正確には調べきれませんでした.多くはコーンスターチと想像しますが,世界的にはかなり多く生産されているタピオカでん粉も,おそらくここに含まれているのでしょう.

 

いよいよでん粉の用途ですが:

https://www.starch-touka.com/denpun/

用途としては,「糖化製品」「加工でん粉」で80%を占めています.

糖化製品とは,異性化糖ぶどう糖,水あめ(デンプンを酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料.ブドウ糖麦芽糖デキストリンなどの混合物)などです.

https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/chiiki/220927.html

この内,最も高付加価値が期待できるのが「異性化糖」.

異性化糖(HFCS:high-fructosecornsyrup)とは,ぶどう糖と果糖が混合した液状の糖で,でん粉から製造できます.

液体で利用しやすく,甘みがシャープ.低温で甘みが強く感じられる.そして安価.

このような特性を持つ異性化糖の約50%は清涼飲料水に用いられています.その量は砂糖の1.8倍にあたり(2023年の報告),特に気をつけることなく甘い清涼飲料を飲めばほぼ確実に「異性化糖」を摂取していることになります.

他に乳製品,酒類,調味料にも用いられています.

https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/iseikato/attach/pdf/iseikato-1.pdf

 

でん粉から異性化糖をどの様に作るか?

https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/iseikato/attach/pdf/iseikato-1.pdf

でん粉は,単糖であるぶどう糖が多数結合した構造をとっているため,加水分解酵素(αアミラーゼ,グルコアミラーゼ 等)を作用させることでぶどう糖が製造できます.

これにブドウ糖を果糖に変換する異性化酵素グルコースイソメラーゼ:我が国の輸出第一号特許となった酵素)を作用させることで,ブドウ糖の一部を,より甘味度の高い果糖に変化(異性化)させることで「異性化糖」(果糖42%)が得られます.

果糖をさらに分離濃縮すれば,「高果糖異性化糖」が製造でき,「異性化糖」と「高果糖異性化糖」を混合して砂糖と同等の甘さを持つ「標準異性化糖」(果糖55%)が作られています.

 

なお,でん粉の用途として2番目に多い「加工でん粉」は,化工でん粉やでん粉誘導体ともいわれ,でん粉を原料に化学的な加工を施すことで機能を高めたものです.

https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002286.html

加工でん粉は,たれのような液状のものから唐揚げ粉のような粉状のものまで,幅広い食品の原材料として使われるため,食品添加物の中でも目にする機会が多い素材です.ある試算では,日本人の1日の加工でん粉の消費量は約8グラムとのこと.

 

コーンスターチは,粉の状態でも,片栗粉の隣に並べて売られていて,片栗粉と同等の使われ方もされていますが,上記のように,その加工製品を知らず知らずかなり大量に摂取しているのが私たちの食生活と言えます.