繁殖力が強く,一般的には余り好まれないドクダミですが,民間薬として広く知られ,愛好者も少なくありません.
花もよく見ると白さが際立ち美しいと言え,八重花種は園芸ショップでも販売されています.
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このように,見方によっては美しい花を咲かせ,民間薬等で親しみのあるドクダミは,短歌にも取り上げられてきました.
以下,鳥居正博 古今和歌歳時記(教育社)の記述から.
短歌に取り上げられてきたといっても古歌には見えず,蜻蛉日記にドクダミの古名「しぶき」の記載があるとのこと.
しりへのかたなる池にしぶきといふ物おひたる(蜻蛉日記 中)970
俳句では仲夏の季語.
どくだみのわれはがほなる二葉かな 富安風生 (朴若葉)1950
明治以降には,著名な歌人に詠われるように.
中には「十薬」(十通りの薬効があるとされるため)として詠まれている歌も見えます.
道のべにどくだみの花かすかにて咲きゐることをわれは忘れず 斎藤茂吉 (ともしび)1950
どくだみの花のにほひを思ふとき青みて迫る君がまなざし 北原白秋 (桐の花)1913
青臭ふどくだみの花芯立てて咲き群るるかな昨日も今日も 宮柊二 (多く夜の歌)1961
つくばひは苔むしてゐつ隙間なく十薬は生ひて花かげりゐつ 大西民子 (印度の果実)1986
蕺菜(どくだみ)の昼ふかくして蔵のなか息つめて我のあぶな絵みつむ 辺見じゅん (雪の座)1976