札幌の名物料理であり,現在では,各地の町おこし等にも取り入れられているジンギスカン.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジンギスカン_(料理)
世界的にその品質の評価がとても高く,Tasteatlasの世界の肉料理ランキングでは,全体の11位,日本の肉料理の中ではトップにランクされています.
https://www.tasteatlas.com/meat-dishes
Tasteatlasによる解説は次の通り.
Jingisukan
(ジンギスカン, Genghis Khan, Genghis Khan Mongolian BBQ)
https://www.tasteatlas.com/jingisukan
ラム肉料理 マトン肉料理
(Jingisukan, Genghis Khan, Genghis Khan Mongolian BBQ)
ジンギスカンは,羊肉または子羊肉のグリル料理で,北海道の名物です.この料理は,凸型の鉄板を使ってテーブルで調理します. 客にはスライス肉が提供され,肉はプレーンまたは漬け汁につけたもののどちらかです.そして,玉ねぎ,キャベツ,ねぎ,ピーマンなどのさまざまな野菜と一緒に,自分で肉を焼くよう勧められます.
一般的な付け合わせには,醤油ベースの特製調味料,チリソース,おろしニンニクなどがあります.
羊肉を日本で食べるようになったのは,1918年に政府が羊の牧場を推進したことがきっかけですが,その習慣は北海道にのみ残り,ジンギスカン料理専門店は北海道以外にも見られるものの,この料理は北海道,特にその中心都市である札幌で今でも人気です.
ジンギスカンという名称は,モンゴル帝国の創始者チンギス・ハーンに由来すると言われています.名称の由来については諸説ありますが,最も有力な説は,鉄板の凸状の形が戦士の帽子に似ていること,またモンゴル人が羊を好んで食べていたことで知られていたことが影響しているというものです.
日本国外では,台湾,中国,タイでもこの料理が食べられています.
日本人から見ても,しっかり解説されていますね.
帽子型のジンギスカン鍋と共に特製醤油ベースのタレがジンギスカンの味を決めているように思いますが,ウィキペディアによれば,「タレには醤油,味噌,砂糖,リンゴ果汁,ショウガ,ニンニク,ごま油などが配合される」
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジンギスカン_(料理)
とあります.
気になるのは「台湾,中国,タイでもこの料理が食べられています.」という部分.
それぞれの国でのラム/マトン料理を調べてみました.確かにそれぞれの国で,ラム/マトンは名物料理としてあるようですが,日本のジンギスカンとはかなり違うことが,その画像からうかがえます.
最も似ているのは台湾の「モンゴルバーベキュー」かと思いますが,かなり新しい料理で,1951年に考案されたとのこと.
https://en.wikipedia.org/wiki/Mongolian_barbecue
https://www.google.com/search? chinese grilled mutton
https://www.asiaculturaltravel.co.uk/inner-mongolian-cuisine/
https://www.marionskitchen.com/thai-style-panang-grilled-lamb-cutlets/
ジンギスカンの起源については,諸説あるようですが,日本語版のWikipediaが,引用文献もかなりしっかりしていて,信用できそうなので,以下一部を改変引用します.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジンギスカン_(料理)
ジンギスカンの歴史
ジンギスカン料理の起源自体は,現在の中華人民共和国に当たる地域にあるとされ,日本陸軍の満州(現中国東北部)への進出(1931年)などを機に,中国の烤羊肉から着想を得たものが日本人向けに改良され,現在の形となったものとみられる.なお,烤羊肉は現在の北京では羊肉だけではなく牛肉も使う炙子烤肉として普及している.
「成吉斯汗鍋」(じんぎすかんなべ)という言葉が初めて掲載されたのは1926年(大正15年)の『素人に出来る支那料理』で,支那(中国)在住の日本人が命名したもので「本当の名前は羊烤肉と云う回々料理」とあり,当時のものは屋外で箱火鉢や鍋に薪の火をおこし,上に金網や鉄の棒を渡して羊肉をあぶり,現地の醤油をつけて食べた「原始的な料理」としている.
なお,ジンギスカンについて,論文としてまとめた記事がネット上にありました,その要約部分を以下に引用します.
From Chinese food to Japan’s Hokkaido heritage: The transformation of the grilled mutton or lamb dish ‘Jingisukan’
中華料理から日本の北海道遺産まで:羊肉または子羊肉のグリル料理「ジンギスカン」の変遷
https://routledgeopenresearch.org/articles/3-2
Kazuhiro Iwama
要約
ジンギスカンは,中央が凸状に盛り上がった独特の形状の鍋を使い,羊肉や野菜を焼く料理です.
この料理は,中国で人気の高い「羊肉のグリル(烤羊肉)‘Kao Yang Rou’ (grilled mutton),」を起源とし,北京で日本人が発見し,改良を加えたことで,独特の名称「ジンギスカン」が生まれました.その後,満州国として知られる中国東北部の日本人社会に伝わり,満州国の名物料理として知られるようになり,日本軍にも重宝されました.
第二次世界大戦後の敗戦により,ジンギスカンは北海道の郷土料理となり,2004年には「北海道遺産」に認定されました.ジンギスカンが日本で広く普及した背景には,ジンギスハーンGenghis Khanとジンギスカンが関連付けられていることが挙げられます.
本研究では,ジンギスカンを「植民地料理」の一種と捉え,イギリス料理のカレーなどを例に比較しながら,その普及の過程を明らかにします.さらに,この料理を評価するのが難しい「遺産」と捉え,第二次世界大戦後の日本人がジンギスカンと帝国主義の関連性をどのように認識し,それを北海道の郷土料理へと変容させていったかを検証しています.
ジンギスカンは第二次世界大戦後に広く普及し,当初は中華料理と認識されていました.この関連性は,日本帝国が戦前・戦中に影響力を拡大していた中国本土への郷愁を呼び起こします.北海道では,ジンギスカンは屋外での食事として特に好まれるようになりました.1960年代には,海外から羊肉が輸入されるようになり,ジンギスカンは全国的に知られるように.同時に,ジンギスカンは札幌や北海道全体の観光名所として積極的に宣伝されるようになりました.