昨日からとりあげている,山や洞窟のニンフ(ニュンペー),オレイアス(Oreias 複数形はオレイアデスOreades).
オレイアスは,木や森のニンフ,ドリュアスに属すとみなされ,山のコニファーのニンフとされています.ギリシャ神話の時代,山と木々(特に山を象徴するコニファー)とは一体化して,切り離せないものと考えられていたようです.
よく知られているエコー(エーコー)
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/11/20/235546
そして,昨日取り上げたアドラーステイアーとイーデー.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/04/22/235333
今日,三番目にとりあげるのはオトレーイス.
ゼウス,そしてアポローンという,ギリシャ神話でもっとも女性関係が華やかな?二人の神と結ばれ,それぞれの子をもうけたオレイアスです.
ただし,彼女のことを伝えるギリシャ神話原典は,アントーニーヌス・リーベラーリス「メタモルフォーシス」のみ.そして,ここでは,彼女自身の物語はほとんど語られていません.このような華やかな経歴であるにもかかわらず.
彼女とアポローンの間の子供メリテウスが建設した町メリテー市で,メリテウスの死後かなり経った後に起こった出来事が物語のメインテーマになっています.
オトレーイスの名前が登場する部分のみ,講談社文芸文庫から引用させて頂きます.
アントーニーヌス・リーベラーリス「メタモルフォーシス」 安村典子 訳 講談社学芸文庫
第13話 アスパリス
メリテウスはゼウスと妖精オトレーイスとの間に生まれた子供であった.
オトレーイスは,ゼウスが彼女と交わったことをヘーラーが憤るであろうと恐れて,この子を森に捨てた.しかし,ゼウスの配慮により,その子は死んでしまうこともなく,蜜蜂に育てられて成長していったのである,
さて,パグロスという男が羊を放牧していた時,たまたまその子供と出会った.パグロスはアポローンと妖精オトレーイスの息子であったが,この母オトレーイスこそ,メリテウスを森に産み落とした,あの同じ母親であった.
パグロスはその子供の大きく成長した身体に驚き,蜂たちが養育したことに対しても更に一層驚嘆して,その子供を拾い,家へ連れて帰ることにした.
蜜蜂(メリ)によって育てられていたので,メリテウス(蜜蜂の男)と名付け,パグロスは大いに心を尽くしてこの子を養育した.
以下略