予言と神託,音楽,歌と詩,弓術,癒し,疫病と病気,若者の保護を司るオリンポスの神,アポローン.
今回は,よく知られているアポローンの神話の中から,
「デルポイ(Delphoi)の神託を下す神殿を守っていた蛇/龍のピュートーン(ピュトン)の殺害」
the Theoi project にある“アポローンの最も知られている12の神話”で2番目にあげられています.
the Theoi projectのピュートーンの解説は,次の通りです.
(DeepL.com/Translator無料版で翻訳)
PYTHON DELPYNE - She-Dragon of Delphi of Greek Mythology
ピュートーン(ピュトン 英語名 パイソン)は,ガイアがデルフォイ(デルフィ)の神聖な神託を守るために置かれた極悪な大蛇です.
ある人によると、この生き物は大洪水によって残された腐ったスライムから生まれたと言われています(⇒*).
その後,デルフォイの神託と祭りは、怪物の腐った死体からPytho and Pythian(ピュトー?とピシアン?)と名付けられました.
アポロンがこの怪物を殺したのは,この大蛇に長い間追われていた母レートーの仇を討つためであったという説もあります(⇒**).
ピュートーンはオスかメスの大蛇と様々な文献でいわれていました.
ホメーロス風讃歌「アポローンへの賛歌」や古代ギリシャのアートでは、雌蛇をEkhidna (Echidna)と同一視しています.これは半分は女で半分は蛇のドラキナで、巨人テューポーンと一緒に行動していました。
下の図では,デルフォイのオムファロス石の上に座っていたアポロンが,矢でピュートーンを倒しています.ここでは、女性の頭と胸を持つ雌蛇、エキドナとして描かれています.
アポローンによるピュートーンの殺害は,多くのギリシャローマ原典に記載がある物語ですが,その記述は必ずしも一致していません.
上記の解説中の記載中の*,**をつけた部分はその好例でしょう.
⇒*
オウィディウス「メタモルポーセース 変身物語/転身物語)」にこの記述があります.ガイア母親説の根拠の一つと思われます.「ガイアの息子」ときっぱり言い切っているのはヒュギーヌス「神話集」(日本語訳 ギリシャ神話).
一方,ホメーロス風讃歌「アポローンへの賛歌」では,母親はヘーラーと記載しています.しかも,ゼウスの頭頂部から生まれ出たアテーナーに対抗して,大地や他の神々に祈って自らの独力で産み落としたと.
⇒**
ヒュギーヌス「神話集」(日本語訳 ギリシャ神話)には,次のように記されています.
ヒュギーヌス ギリシャ神話 松田治 青山照男訳 講談社学術文庫
ガイアの息子ピュートーンは龍であった.彼はアポローンより以前に,パルナッソス山の神託所から神託を与えるのを常としていた.
彼に,レートーの子どもによって殺されるという予言が下された.
このときゼウスはポーロスの娘レートーと同衾した.このことを知ると,へーレーはレートーが太陽の届かない場所で子を産むようにさせた.
ピュートーンはレートーがゼウスにより身ごもったことを知ると,彼女をなきものにしようと,追いかけはじめた.
しかし,ゼウスの命令により風塵ボレアースがレートーを吹き上げて,ポセイダーオーンのもとに連れていった.
the Theoi project “アポローンの最も知られている12の神話”
1. デロス島での誕生.
2. デルポイ(Delphoi)の神託を下す神殿を守っていた蛇のピュートーン(ピュトン)の殺害.
3. 神の母レートーを連れ去ろうとした巨人ティテュオスの殺害.
4. ニオベーが自慢話でレートーを怒らせたためかの女の子供たちを殺害.
5. サテュロスのマルシュアース(マルシュアス)との音楽コンテスト.敗れたマルシュアースは生きたまま皮を剥がされた.
6. 円盤投げで殺されて花になった青年ヒャアキントスへの愛.
7. 彼から逃れて月桂樹に変身したニンフのダプネー(ダフネ)への愛.
8. 不義のためにアルテミスに殺させたコローニス(コロニス)への愛.
9. 彼の息子アスクレーピオス(アスクレピオス)を殺すために使われた稲妻を捏造していたキュクロープス(キュクロプス)の殺害.
10. アドメートス(アドメトス)の使用人となって奉仕した.
11. デルポイの三脚の鼎(かなえ)をめぐってヘーラクレース(ヘラクレス)との争い.
12. ギリシャ人に疫病をもたらし,パリスがアキレウスを倒すのを助けたトロイア戦争.