昨日に引き続き,アポローンへの讃歌から,デロス島での誕生の場面を引用します.
APOLLO (Apollon) - Greek God of Music, Prophecy & Healing
アポローンを身ごもったレートーは,デーロス島に神殿を建てる約束をして,この地で出産することを選びます.
しかし,陣痛が始まっても出産に至りません.嫉妬したヘーラーが,分娩出産の女神エイレイテュイアが立ち会えないように企んだのでした.
アポローンの出産に立ち会った女神たちは,イーリスを使いに出し,エイレイテュイアを連れてこようとします.
この場面には,既にこのブログでとりあげたことがたくさんの女神の名前が出てきます.
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/12/155043
ゼウス兄弟姉妹の母レアー
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/08/26/004423
~http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/08/30/002647
ホーライの母にして法・掟の女神テミス
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/13/155049 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/12/155043
ポセイドーンの妻アンピトリーテー(アムピトリーテー)
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2018/03/18/014411
虹の女神にして神々の伝令役イーリス
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/21/002450 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/22/003205 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/04/23/112218
ヘーラーの娘にして分娩・出産の女神エイレイテュイア.この女神の名前は,1回出しましたが,どのような女神かは全く解説していません.明日少しだけ調べた結果を掲載することにします.
ポイボス・アポローンが関わるよく知られた神話
デロス島での誕生 2
四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』 (岩波文庫)より 逸身 喜一郎 (翻訳), 片山 英男 (翻訳)
アポローンへの讃歌 抜粋
しかしそれからもレートーは九日九夜,いっこうに生まれてこない陣痛の,刺すような
苦しみを忍びつづけなければならなかった.(分娩の女神エイレイテュイアが手伝わなかったからである)
およそ貴い女神は皆,その場に集まった.
ディオーネー,レアー,イクナイエーテミス(テミスの別名 道を正す女神),轟音たてるアンピトリーテー,その他にも女神はいたが,—白い腕(かいな)のヘーラーはいなかった.雲を集めるゼウスの館にいたのである—,
ただ,分娩の女神エイレイテュイアは何も知らず,白い腕のヘーラーのたくらみにかかり,金色の雲に包まれたオリュンポスの頂きにいた.
ヘーラーは髪美しいレートーが,気高く力優った子供を産もうとしているのにひどく嫉妬をし,エイレイテュイアを引きとめていたのだ.
女神たちは(交換条件として)黄金の糸を通した,腕九つ分の長さもある首飾りを約束することでエイレイテュイアを連れてくるよう,人住むによい島からイーリスを使いに出した.
女神たちはイーリスに,ヘーラーに気づかれぬよう,離れたところから声をかけるように命じていた.エイレイテュイアが出かけようとする時になって,ヘーラーが口を出して邪魔しないかと,心配したのである.
風のように足の速いイーリスは,それを聞くと走り去り,全行程を一瞬のうちに跳びこえた.
----(中略)
エイレイテュイアの胸の内なる心は説きふせられたので,二人はふるえる鳩のように歩みを進めた.出産の女神エイレイチュイアがデーロスに歩みを向け始めるやすぐに,分娩は始まった.
レートーは子を産もうと懸命になった.両腕をシュロの木にまきつけ,膝を柔らかな牧草に押しつけた.大地は下からほほえんだ.
子供が光の中へ跳びでてくるや,女神たちはいっせいにどっと声を挙げた.それからあなたを,ポイボスよ,女神たちは澄みきった水で一点の汚れなく洗い清め,純白の真新しい柔らかな布にくるみ,金の紐で結んだ.
黄金の剣を振るうアポローンは,母の乳を吸うことなく,そのかわりにテミスが,ネクタルと美わしきアンブロシアとを不死なる手でふくませた.
レートーよ,喜びたまえ,弓もつ力勝った子供をあなたは産んだのだから.
さてポイボスよ,不死なる食べ物をとったゆえ,元気に暴れるあなたを金の紐は包んでおけず,あなたが遠くに行けないように縛ってもむだだった.どんな試みもことごとく失敗した.
まもなくポイボス・アポローンは女神たちにこう言った.
「竪琴と曲がった弓は,今後,私が司る.それにゼウスの誤謬なき考えを,私は人間どもに予言しよう」
こう言うと遠矢射るポイボスは,鋏をしらない髪そのままに,拾い道走る大地に立ち,歩み始めた.
-----(後略)