ギリシャ神話の姉妹女神たち二組を,本ブログで取り上げてきました.
▽音楽・歌・ダンスの女神たちで,詩人のインスピレーションの源ともなったムーサイ (単数形ムーサ/英語ミューズMuses).
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ムーサイ / ミューズ 5 - yachikusakusaki's blog
▽優雅と美の女神たちカリテス(単数形カリス/英語グレースGraces).
彼女たちは,いずれもゼウスの娘で,母の血筋も立派.前者の母はティターン12神のムネーモシュネー.後者の母は,オーケアニデスの一人エウリュノメー.
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カリテス5 - yachikusakusaki's blog
もうひと組,ゼウスの娘で,ティターン女神を母とする女神たちとして時間,季節,秩序をつかさどるホーライHorai(単数形ホーラ/英語Horae)が知られています.
HORAE (Horai) - Greek Goddesses of the Seasons & the Natural Order
ムーサイ,カリテスに続いて,このホーライを話題にします.
ホーライ.
知らない方も多いかと思いますが--(私も知らなかったのでそう思うだけで,知らなかったのは私だけ?)
英語hourの語源となったギリシャ語hṓrɑ̄ をその名に頂く女神たち!
hour ランダムハウス英語辞典
[中期英語(h)oure<アングロフランス語;古期フランス語(h)ore<ラテン語 hōra<ギリシャ語hṓrɑ̄ 時,季節
ヘーシオドスによれば,ホーライの母は,ティーターンのテミス.三姉妹の名前は秩序(エウノミア/ エウノミアー) 正義(デイケ/ ディケー) 咲き匂う平和(エイレネ/ エイレーネー).
(他の名前も,ヒュギーヌス等により伝えられています)
”神統記”「ゼウスと女神たちの結婚」に彼女たちの名が.母テミスは,ゼウスの2番目の妻で,ヘーラーは7番目.
この一文では,ホーライの姉妹にモイラの名があげられています.ただし,神統記の別の箇所でモイラは夜の女神ニュクスの娘とされ,これが一般的のようです.
なお,アルテミス,アポローンの母レートーは6番目の妻とされ,後に伝えられているヘーラーの嫉妬の下にレートーが出産したとする話しと食い違っています.
ヘシオドス "神統記” 廣川洋一訳 岩波文庫
ゼウスと女神たちの結婚
さて 神々の王ゼウスは 神々と死すべき身の人間どものうちでも
並びなく賢いメティスを 最初の妻となさった.
だが まことに彼女が 輝く眼の女神アテナを出産されようとしていたその折に
彼は 策を用いて 言葉も巧みに 彼女の心を欺き
彼女を 己れの腹中に呑みこんでしまわれた
大地と星散乱(ちり)ばえる天の勧めるままに.
すなわち 両神は こう勧められたのだ たれか他の者が
ゼウスに代わって 常磐(とこわ)にいます神々の王たる特権を得るようなことがあってはならぬと.
というのも 彼女(メティス)から 並外れて賢い子供らが生まれる定めになっていたからだ.
すなわち はじめに 輝く眼をもつトリトゲネイア(アテナ) つまり
父親に劣らぬ気性と賢い思慮を備えた娘御を
そのつぎには 傲慢な心もつ息子を
神々と人間どもの王として 生むこととなっていた.
ところが その前に ゼウスは 彼女を己れの腹におさめてしまわれたのだ.
この女神が 彼に 善きこと 悪しきことを助言してくれるように と.
2番目に ゼウスは 輝かしいテミスを娶(めと)られた.彼女は 季節女神(ホーラ)たち すなわち
秩序(エウノミア) 正義(デイケ) 咲き匂う平和(エイレネ)を生まれたが
この方々は 死すべき身の人間どもの仕事に 心を配られる.
また,運命(モイラ)たちを生まれたが この方がたに 賢いゼウスは抜群の特権を与えたもうたのだ.
(この方がたとは)クロト ラケシス アトロポスだが かの女たちは
死すべき身の人間どもに 善運と悪運を授けるのだ.
さて 大洋(オケアノス)の娘 容貌(みめ)美(うるわ)しいエウリュノメは
彼(ゼウス)に 頬美しい優雅美人(カリス)たち すなわち
アグライア エウプロシュネ 愛らしいタリアを生まれた.
彼女たちが眼差(まなざし)を向けると その眼からは 四肢の力を萎えさせるエロスが 溢(あふ)れ出た.
彼女たちは その眉の下で 美しく眴(めくばせ)なさるのだ.
また ゼウスは 数多(あまた)を育(はぐく)むデメテルの臥床(ふしど)に入られ
彼女は 腕(かいな)白いペルセポネを生まれたが アイドネウス(ハデス)が彼女を
母親のもとから 攫(さら)っていかれた 賢いゼウスが授けられたのだ.
さてまた ゼウスが髪美しいムネモシュネに情けをかけると
彼女からは 黄金(こがね)の 冠つけた 詩歌女神(ムウサ)たちが生まれた 九人の方々で
彼女たちは 宴と詩歌の楽しみを愛(め)でたもう.
レトは アポロン 弓矢を悦ぶアルテミス
天の裔(すえ)の神々(ウラニオネス)のなかでも とりわけ愛らしい子供たちを生まれた
神楯(アイギス)もつゼウスと 情愛の契りして.
いちばん最後に ゼウスは ヘラを 咲き匂う花嫁となさった.
彼女はヘベ アレス エイレイテュイアを生んだ
神々と人間どもの王者と 情愛の契りをなさって.
そして ゼウスみずから 輝く眼のアテナを生まれたのだ ご自身の頭から.
この方は 畏(かしこ)い方で 鬨(とき)の声を惹(ひ)き起し軍勢を導き 疲れを知らず また女王である.
彼女は 喚声 戦い 闘争を楽しみたもうたのだ.
さて ヘラは 名にし負うヘパイストスを生まれた ゼウスと情愛の契りもせずに.
というのも 彼女は 夫に腹を立て 仲違いしていられたからである.
この方(ヘパイストス)は 天の裔(すえ)の神々(ウラニオネス)のなかでも 技にかけては 衆に秀(すぐ)れて長じたもう.
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