カリテス1
(エウリュノメーの娘たちとして既に取り上げているので,以下,重複する部分がかなりあります http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/05/28/024831)
優雅と美の女神たちカリテス(単数形カリス).
CHARITES (Kharites) - The Graces, Greek Goddesses of Pleasure & Joy
英語のthe Graces(グレイシーズ)の名前でなじみ深い神々です.
古代ローマではグラティアエ, Gratiae(単数形 グラティアGratia).
ギリシャ神話原典では,沢山の名前があげられています.また,イーリアス(ホメーロス)には,カリスと単数形で表されます.
CHARITES (Kharites) - The Graces, Greek Goddesses of Pleasure & Joy
しかし,ヘーシオドスらの記述に従って,ゼウスとエウリュノメーから生まれた三人の女神とするのが一般的.
日本語では三美神(The Three Graces)と訳されることがあります.
以下に引用する神統記(廣川洋一訳)では「優雅女神」ですが.
ヘーシオドスによれば,三人の女神が象徴する対象を示した名前が各々に与えられています.
アグライアー(アグライア「輝き (Aglaia)」)、
エウプロシュネー(エウフロシュネ/エウプロシネ「喜び (Euphrosynē)」)、
タレイア(「花の盛り/繁栄 (Thaleia)」)
なお,三美神は後世の絵画にしばしば登場しますが,その時の役割はかなり異なっていて,例えばルネサンスの名作,ボッティチェリ(ボッティチェルリ/ボッボッティチェッリ)「春」に描かれるのは,美・貞節・愛(愛欲)の三美神(高階秀爾 ルネッサンスの光と闇 中公文庫) .
Primavera (painting) - Wikipedia
ヘシオドス "神統記” 廣川洋一訳 岩波文庫
ゼウスと女神たちの結婚
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さて 神々の王ゼウスは 神々と死すべき身の人間どものうちでも
並びなく賢いメティスを 最初の妻となさった.
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2番目に ゼウスは 輝かしいテミスを娶(めと)られた.
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さて 大洋(オケアノス)の娘 容貌(みめ)美(うるわ)しいエウリュノメは
彼(ゼウス)に 頬美しい優雅女神(カリス)たち すなわち
アグライア エウプロシュネ 愛らしいタリアを生まれた.
彼女たちが眼差(まなざし)を向けると その眼からは 四肢の力を萎えさせるエロスが 溢(あふ)れ出た
彼女たちは その眉の下で 美しく眴(めくばせ)なさるのだ.
カリスたちが活躍するギリシャ神話は,あまり知られていないようです.
しばしば描かれるのは,祝宴の場等で,優雅さや美しさの象徴として,アプロディーテーやアポローンの傍らにいる場面.
アポローンへの賛歌(四つのギリシャ神話『ホメーロス賛歌』より 逸身喜一郎・片山秀男訳 岩波文庫)より
名高いレートーの御子(アポローン)は,胴のうつろな竪琴を響かせつつ,香ばしい神の衣をまとい,岩そびえるピュートー(デルポイ)へと向かう.
その竪琴は黄金のばちのもと,人惹きつける音をたてる.
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ムーサたちも皆,一緒に加わり美しい声を交わし,
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髪うるわしいカリスたちや,喜びみちたホーライ,ハルモニア,ヘーベー,ゼウスの娘アプロディーテーが,互いに手をとりあっては踊りの輪をつくる.
もちろんその中には,醜さや背の低さとはまったく無縁の,アポローンの姉神,驚くばかりに美しく背が高い,矢をそそぐアルテミスも加わって,一緒に歌い踊っている.
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