おとめ座の候補テュケーは
運命(fortune),運/巡り合わせ(chance),摂理(providence),宿命(fate)を司る女神.
ヘーシオドスによれば
その数三千人の女神/ニンフ,オーケアニス(オーケアニデス)の一人がテュケー.
オーケアニデスには名がよく知られた女神たちが幾人もいます.
ドーリス http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/20/003942
クリュメネー http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/04/21/000500
ディオーネ http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/05/18/005509 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/05/19/024202
メーティス http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/05/27/010513
今日は,昨日
http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/05/28/024831
に続いて
エウリュノメー2.
(昨日は娘神のカリテス(グレーシス)を描いた絵画・彫刻を集めただけなので,実質一回目.
実は,今日もカリテスの続きを--と調べたのですが,うまくまとめられませんでした.またの機会に)
エウリュノメーについて,the Theoi projectのサイト
EURYNOME - Greek Titan Goddess of Meadows & Pastures
では次のように概説しています.
エウリュノメーはエルダーオーケアニデスの1人で,灌漑用地と牧草地を司るティターン女神.彼女はゼウスの3番目の妻で,優雅と美の女神カリテスを生みます(⇒2).
彼女の名前は,ギリシャ語のeuys "wide” とnomia "pasture(牧草)"から,「広い牧草の彼女」を意味しています.
彼女は,同じ名前をもってるオピーオーン(蛇神)の妻であるティターンの女王とおそらく同一人物です(⇒1).
EURYNOME was one of the elder Okeanides and the Titan-goddess of water-meadows and pasturelands. She was the third of the brides of Zeus who bore him the Kharites (Charites), goddesses of grace and beauty. Her name means "She of Broad-Pastures" from the Greek words eurys "wide" or "broad" and nomia "pasture."
She was perhaps identified with the Titan-Queen of the same name--Eurynome wife of Ophion. EURYNOME - Greek Titan Goddess of Meadows & Pastures
(1)エウリュノメーをオピーオーン(蛇神)の妻であるティターンの女王として書き記しているのは,アポローニオス(アポロニオス)"アルゴナウティカ”.
世界文学全集 (1) ホメロス オデュッセイア / アポロニオス アルゴナウティカ 講談社 より
アルゴナウティカ(岡道男訳)
オルペウスもまた竪琴を左手で持ち上げ,歌を試みた.
彼は歌った,大地と天と海と,
かつてまだ一つの形で混ざり合っていたものが,
いかにして怖ろしい争いから別々に切り離されたかを.
また星辰(せいしん 星のこと)と,月と太陽の進む道とが,いかにして
つねに定められた位置を天上に占めているかを.
また,いかにして,山々が盛り上がり,うなりをあげるあまたの河が
水にすむニンフとともに現われ,地をはうすべての生き物が生まれたかを.
かれはさらに歌った,最初にオピオンとオケアノスの娘
エウリュノメが雪深いオリュンポスを支配したこと.
そして二人とも両腕の力に屈し,夫はクロノスに,妻はレイアに
支配権を明け渡し,オケアノスの波間に落ちて行った次第を.
(2)カリテス(グレーシス)の親について,the Theoi projectのサイトによれば6つの説があるそうですが,
CHARITES (Kharites) - The Graces, Greek Goddesses of Pleasure & Joy
ゼウスとエウリュノメーの娘神としているのは,ヘーシオドス(ヘシオドス)"神統記”.
ヘシオドス "神統記” 廣川洋一訳 岩波文庫
ゼウスと女神たちの結婚
さて 神々の王ゼウスは 神々と死すべき身の人間どものうちでも
並びなく賢いメティスを 最初の妻となさった.
だが まことに彼女が 輝く眼の女神アテナを出産されようとしていたその折に
彼は 策を用いて 言葉も巧みに 彼女の心を欺き
彼女を 己れの腹中に呑みこんでしまわれた
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2番目に ゼウスは 輝かしいテミスを娶(めと)られた.彼女は 季節女神(ホーラ)たち すなわち
秩序(エウノミア) 正義(デイケ) 咲き匂う平和(エイレネ)を生まれたが
この方々は 死すべき身の人間どもの仕事に 心を配られる.
また 運命(モイラ)たちを生まれたが この方々に 賢いゼウスは抜群の特権を与えたもうたのだ.
(この方がたとは)クロト ラシケス アトロポスだが 彼女たちは
死すべき人間どもに 善運と悪運を授けるのだ.
さて 大洋(オケアノス)の娘 容貌(みめ)美(うるわ)しいエウリュノメは
彼(ゼウス)に 頬美しい優雅女神(カリス)たち すなわち
アグライア エウプロシュネ 愛らしいタリアを生まれた.
Primavera (painting) - Wikipedia 三美神 (ラファエロの絵画) - Wikipedia
彼女たちが眼差(まなざし)を向けると その眼からは 四肢の力を萎えさせるエロスが 溢(あふ)れ出た
彼女たちは その眉の下で 美しく眴(めくばせ)なさるのだ.
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