おとめ座テュケー 番外編:姉妹「オーケアニデス(オーケアニス)」(3)クリュメネー 年長のオケアニデスで,名声と誉れを司るティターンの女神.彼女はティターンのイーアペトスの妻にして,プロメーテウスとアトラースの母.古代ギリシャの壺絵では,彼女はヘーラーの侍女で,ヘーラーが与えた名誉という贈り物を擬人化した存在のように描かれています. 

4. テュケー 番外編:姉妹「オーケアニデス(オーケアニス)」(3)

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TYCHE CULT - Ancient Greek Religion

テュケーは運命(fortune),運/巡り合わせ(chance),摂理(providence),宿命(fate)を司る女神.

 

ヘーシオドスによればその数三千人の女神/ニンフ,オーケアニス(オーケアニデス)の一人.

 

オーケアニスの中でよく知られた女神の一人にドーリスがいます.

yachikusakusaki.hatenablog.com 

また,オーケアニデスの一人クリュムネーは,ティターンイーアペストの妻で,アトラース,プロメーテウス,エピメーテウスの母.

 

 

「オーケアニデス(オーケアニス)」(3) クリュメネー

the Theoi project CLYMENE (Klymene) - Greek Titan Goddess of Fame の記載は以下の通りです.

 

クリュメネーは,年長のオケアニデスで,名声と誉れを司るティターンの女神.彼女はティターンのイーアペトスの妻にして,プロメーテウスとアトラースの母(*)でした.

クリュメネーはアシアーとも呼ばれ,この表記はアナトリア小アジア)の名前の由来となった神としての役割を表現しています.

 

古代ギリシャの壺絵では,彼女はヘーラーの侍女として描かれています.下の絵では彼女はパリスの審判に臨席し,ヘーラーが提案したパリス皇子へ贈り物・名誉(**)を擬人化した存在のように思われます.

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CLYMENE (Klymene) - Greek Titan Goddess of Fame

 

他にメノイティオス、エピメーテウス.⇒下欄,ヘーシオドス神統記の記述参照.

**

ヘーラーはパリスへの贈り物として,全アジアの支配権を与えることを約束した.

 

KLYMENE (Clymene) was one of the elder Okeanides and the Titan goddess of fame and renown. She was the wife of the Titan Iapetos and the mother of Prometheus and Atlas.

Klymene was also named Asia and in this guise portrayed as the eponymous goddess of Anatolia (Asia Minor).

In ancient Greek vase painting she appears as a handmaiden of the goddess Hera. In the scene (right) she attends the Judgement of Paris and likely personified the gift of fame the goddess offered the prince. CLYMENE (Klymene) - Greek Titan Goddess of Fame

 

 

ヘシオドス,廣川洋一訳「神統記」,岩波文庫

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イアペスト(イーアペトス)の子

イアペストは,足首優しい乙女 大洋(オケアノス オーケアノス)の娘クリュメネ(クリュメネー)を娶(めと)り ひとつ床に入った.

そして,彼女は,彼に剛毅な心の息子 アトラス(アトラーズ)を生まれた.

また栄えあるメノイティオスと 入り組んだ さまざまな策に富むプロメテウス(プロメーテウス)と 思慮浅いエピメテウス(エピメーテウス)を生まれた.この者(エピメテウス)は

はじめから 穀物(パン)を喰う人間どもにとって禍いの因(もと)であったのだ.

というのも ゼウスの創られた女性 乙女をはじめて受けとったのは 彼だったから.

さて 傲慢なるメノイティオスを 見はるかすゼウスは

燃えさかる雷電で撃ち 幽冥(エレポス)へと送り込まれた

彼の傲岸不遜な態度と度を越えた慢心のゆえに.

また アトラスは 強い強制(アナンケ)のもとに 広い点を支えている

大地の涯(はて) 声澄める黄昏の娘たち(ヘスパリス)の面前で

疲れ知らぬ頭と腕で 立ったままの姿勢で.

この持ち分(モイラ)を 賢いゼウスが 彼に定められたからである.

そしてゼウスは 策に長けたプロメテウスを縛りつけた 桎梏(かせ) すなわち

冷酷な縄目でもって. 桎梏縄を 太い柱のまん中に打ち込まれたのだ.

そして 彼に 翼長い鷲をけしかけられた この鷲は

彼の不滅の肝臓を日毎喰ったが 肝臓は同じ分量だけ生え出すのだった

夜のまに 翼長い鳥が昼のまに食ったのと同じ分量だけ.

 

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