アポローンのコローニス(コロニス)への愛は,彼女の不貞によって裏切られ,アポローンは自身の矢で射殺してしまいます.(ピンダロスが伝えるところではアルテミスに殺させた).
そして,彼女が妊っていた赤児を救い出し,ケイローンに預けます.
成長した子アスクレーピオスは,医術の神(医神)として信奉されるようになります.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/12/10/233931
ASCLEPIUS (Asklepios) - Greek God of Medicine & Doctors
ところが,死者をよみがえらせたため,ゼウスの怒りをかい,雷霆(らいてい ケラウノス)で撃ち殺されてしまいます.
これに怒ってアポローンはゼウスのために雷霆を造ったキュクロープスらを殺したとされています.(アポロドーロス ギリシャ神話 高津春繁訳 岩波文庫)
偽ヒューギーヌスによれば,キュクロープスを殺したアポローンの矢は,や座として,またアスクレーピオスはへびつかい座として天にあげられたといいます.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/12/230609
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/13/234632
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/14/234034
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/17/231644
コローニスについてのギリシャ神話の記述は余り多くありませんが,アポローンとの間にもうけたアスクレーピオスは医神とされ,その死は,アポローンの矢による再度の復讐劇へとつながっていきます.
や座とへびつかい座の物語は,コローニスの死まで遡ることができるようにも思います.
なお,へびつかい座,や座については,すでにこのブログで取り上げられていますが,改めて偽ヒュギーヌス「Astronomica 天文学」の記述(英文訳)をさらにDeepL翻訳して以下に掲載しておきます.
偽ヒュギーヌス Astronomica『天文学』2.14 :
ASCLEPIUS (Asklepios) - Greek God of Medicine & Doctors
"[星座]へびつかい座 Ophiuchus ]
蛇を持つ者.多くの天文学者は,彼をアポロンのためにジュピター(ゼウス)が星々の間に置いたアスクレピウスと想像している.というのも,アスクレピウスが人間の間にいたとき,彼は医療技術において他の者よりも非常に優れていたので,彼が人間の病気を治しただけでは不十分で,死者を生き返らせることもできたからである.最近では,エラトステネス(紀元前3年,ギリシャの作家)によると,継母の不義理と父の無知によって殺されたヒッポリュトスを生き返らせたという.また,ミノスの息子であるグラウコスも彼の手腕によって生き返ったと言う人もいる.しかし,彼の技量と,アポロが彼の父であったことから,蛇を持った彼を星座の中に入れたという.
ある人は,蛇を持っているのは次のような理由からだと言っている.
[注]次の神話は,通常,アスクレピオスではなく,予言者ポリイドスについて語られています.
アスクレピオスがグラウコスの回復を命じられ,秘密の牢獄に閉じ込められていたとき,杖を片手にどうすべきか考えていると,杖に蛇が忍び寄ってきたという.気を取り直したアスクラピウスは,逃げようとする蛇を杖で何度も叩いて殺した.その後,別の蛇がやってきて,口に薬草をくわえ,頭に乗せたという.そうすると,二人はその場から逃げ出した.そこで,アスクラピウスが同じ薬草を使って,グラウコスも生き返らせた.
こうして蛇はアスクラピウスの保護下に置かれ,星々の間にも置かれることになった.彼の例に倣って,彼の子孫がその知識を他の人に伝えたので,医者は蛇を利用するようになった.
偽ヒュギーヌス Astronomica『天文学』2.15 :
ASCLEPIUS (Asklepios) - Greek God of Medicine & Doctors
エラトステネス(紀元前3世紀のギリシャの作家)は,(星座)矢について,アポロはこの矢で,アスクラピウス(アスクレピオス)の死因となった雷撃を造ったキュクロプスを殺したと述べている.アポロはこの矢をハイパーボラスの山に埋めたが,ジュピター(ゼウス)が彼の罪を赦したとき,この矢は風に運ばれ,当時育っていた穀物と一緒にアポロのもとに運ばれたという.このような理由で星座の中に入っていると指摘する人も多い.