や座5 「ヘーラクレースの矢」:や座の星座物語としては「アポローンの矢」より広く知られている物語.ヘーラクレースは,ティターンのプロメーテウスを痛めつけるために放たれていた鷲を,その矢で殺しました. 鷲と矢は,隣り合わせに天に置かれ,わし座とや座になりました.殺された鷲は,「カウカーソス(コーカサス)の鷲」と呼ばれています.ティターン・プロメーテウスの永遠に再生し続ける肝臓をついばむように,ゼウスによって送り込まれた巨大な鷲です.プロメーテウスは神々から火を盗んだことをとがめられ,カウカーソス山の頂上に

 

ギリシャ神話では,や座の矢の持ち主とされているのは,とてもよく知られた弓の名手二人.

アポローンとヘーラクレースです.

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 星座図鑑・や座

 

アポローンの矢」とこの星座物語に登場する人物については,3回にわたって取り上げました.

 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/13/234632 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/14/234034 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2019/09/15/234752

 

今日,取り上げるのは

「ヘーラクレースの矢」

や座の星座物語としては「アポローンの矢」より広く知られている物語.

 

ヘーラクレースの矢 (Hyginus 2.15.)

 Star Myths | Theoi Greek Mythology”より拙訳 ”

ヘーラクレースは,ティターンのプロメーテウスを痛めつけるために放たれていた鷲を,その矢で殺しました.

鷲と矢は,隣り合わせに天に置かれ,わし座とや座になりました.

ARROW OF HERACLES The arrow with which Heracles slew the eagle set to torment the Titan Prometheus. The eagle and arrow were placed side by side in the heavens as the constellations Aquila and Sagitta. (Hyginus 2.15.)

 Star Myths | Theoi Greek Mythology

 

殺された鷲は,「カウカーソス(コーカサス)の鷲」と呼ばれています.その解説は,わし座のブログで既に取り上げました.以下再掲です.

 

カウカーソス(コーカサス)の鷲 THE AETOS KAUKASIOS (Caucasian Eagle)

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CAUCASIAN EAGLE (Aetos Kaukasios) - Giant Eagle of Greek Mythology

カウカーソスの鷲は,ティターン・プロメーテウスの永遠に再生し続ける肝臓をついばむように,ゼウスによって送り込まれた巨大な鷲.プロメーテウスは神々から火を盗んだことをとがめられ,カウカーソス山の頂上に縛りつけられていました.

この鷲は,様々に説明されています.ヘーパイストスによってつくられたブロンズのオートマトン(自動人形),もしくは,drakina(蛇の怪物?)エキドナが産み落とした怖ろしい被造物.

ヘーラクレースがプロメーテウスの縄を解いたとき,彼は矢でこの鷲を撃ち落としました.その後,鷲は星座とされ,the Titan とや座Arrow,the Kneeler(ヘラクレス座のギリシャ語名が意味するもの「ひざまづく人」)とともにわし座となっています.

THE AETOS KAUKASIOS (Caucasian Eagle) was a gigantic eagle sent by Zeus to feed upon the ever-regenerating liver of the Titan Prometheus after he was chained to a peak of the Kaukasos (Caucasus) Mountains as punishment for stealing fire from the gods.

The eagle was variously described as a bronze automaton constructed by the god Hephaistos (Hephaestus), or as a fell creature spawned by the drakaina Ekhidna (Echidna).

When Herakles set out to free Prometheus from his bonds, he felled the eagle with a volley of arrows. Afterwards the Eagle, as well as the Titan and Arrow, were placed all amongst the stars as the constellations Aquila, the Kneeler and Saggita.

 

プロメーテウスはギリシャ神話のトリックスターとも言えるティターンティターン十二神の一人,イーアベトスの子として生まれます.

ティターノマキアではゼウスに味方し罪を免れたとされていますが,天上から火を盗み,人間に与えたため,ゼウスの怒りをかうことになりました.

 

ヘーシオドスは次のように記しています.

▽ヘシオドス "神統記” 廣川洋一訳 岩波文庫

イアペトスの子

さて イアペトスは 足首優しい乙女 大洋(オケアノス)の娘

クリュネメを娶(めと)り ひとつ床に入った.

そして彼女は 彼に 剛毅な心の子 アトラスを生まれた.

また

栄あるメノイティオスと 入り組んだ さまざまな策に富むプロメテウスと

思慮浅いエピメテウスを生まれた.この者(エピメテウス)は

はじめから 穀物(パン)を喰う人間どもにとって禍いの因(もと)であったのだ

というのも ゼウスが創られた女性 乙女をはじめて受けとったのは 彼だったから.

さて 傲慢なるメノイティオスを 見はるかすゼウスは 燃えさかる雷電で撃ち 幽冥(エレポス)へと送り込まれた

彼の傲岸不遜な態度と度を越えた慢心のゆえに.

また アトラスは 強い強制(アナンケ)のもとに 広い天を支えている

大地の涯(果て) 声澄める黄昏の娘(ヘスペリス)の娘たちの面前で

疲れ知らぬ頭と腕で 立ったままの姿勢で.

この持ち分(モイラ)を 賢いゼウスが 彼に定められたからである.

そしてゼウスは 策に長けたプロメテウスを縛りつけた 桎梏(かせ) すなわち

冷酷な縄目でもって.桎梏縄を 太い柱のまん中に打ちこまれたのだ.

そして 彼に 翼長い鷲をけしかけられた この鷲は

彼の不滅の肝臓を日毎喰ったが 肝臓は 同じ分量だけ生え出すのだった

夜のまに 翼長い鳥が昼のまに喰ったのと同じ分量だけ.

その鳥を 足首優しいアルクメネの雄々しい息子

ヘラクレスが退治した イアペトスの息子(プロメテウス)の酷(ひど)い苦悶を払い

苦痛から 彼を 救ったのだ.

もっとも これは

高空に知ろしめすゼウスのご意向に 悖(もと)りはしない

テバイ生まれのヘラクレスの誉れが

数多(あまた)を養う大地の上で 以前にも優(まさ)っていや増すようにとのご意向に.

このように思案した彼(ゼウス)は 名にし負う息子(ヘラクレス)を 賛えられた

立腹はしていたが 彼は 以前(プロメテウスに)抱いていた その怒りを 鎮められたのだ

というのも 知略にかけては(プロメテウスが)尊大なクロノスの御子(みこ)と 互角に張り合うほどであったから.

 

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