トランプ大統領とヘイトクライム 相模原施設殺傷事件は,2016年,アメリカ大統領選挙キャンペーン中に起きた事件でした.「ニュースが始まりです」「トランプ大統領は,真実を話していると思いました」(植松被告) 大統領の言動とヘイトクライムの関連性がアメリカでも指摘されています.「ヘイトクライム統計値」によれば,トランプ大統領が就任した2017年に起きた事件は,ほぼ全ての偏見カテゴリーで2016年より増加していました.このような「トランプ効果」を「証明できた」とする論文も現れています.

海外のニュースのはあまり神経が届かないのですが,「トランプ大統領の言動が『ヘイトクライム』とどのような関係があるのか?」には,かなり大きな関心を持っています.

今日は,新聞・ネットの記事を交えて,「トランプ大統領の言動とヘイトクライム」に関連して思いつくまま綴っていきます.

乱雑なまとめになってしまうこと,お許しを.

 

「やまゆり園で見たニュースが始まりです」

「ニュースでは,過激化組織IS,イスラミックステイトの活動と,トランプ大統領の選挙演説が放送されました.世界には不幸な人たちが沢山いる.トランプ大統領は,真実を話していると思いました」

これは,相模原障害者施設殺傷事件の被告,元施設職員・植松聖被告の言葉です.

http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/07/26/013457

yachikusakusaki.hatenablog.com

相模原施設殺傷事件は,2016年,アメリカ大統領選挙キャンペーン中に起きた事件でした.

 

全米の51%が差別主義者だと見なしている(2019年7月30日公表世論調査 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019073100625&g=int )

トランプ大統領

 

当然のことながら? 日本の首相,韓国の大統領も,彼の差別的言動の対象となっています.

www.tokyo-np.co.jp

f:id:yachikusakusaki:20190904225330j:plain

 

そして,アメリカの基準で考えれば,相模原障害者施設殺傷事件は,典型的なヘイトクライム,とのこと.

yachikusakusaki.hatenablog.com

トランプ大統領のレトリック(大げさな言葉)が,ヘイトクライムを誘導していることは,相模原殺傷事件をみても明らか」と私は思いますが,当然,大統領の言動とヘイトクライムの関連性がアメリカでも指摘されています.

 

アメリカFBIは,「ヘイトクライム統計値」を公表していて,

トランプ大統領が就任した2017年に起きた事件は,一つを除いて全ての偏見カテゴリーで2016年より増加していました.

「このような増加は,トランプ大統領の言動が後押しした結果」民主党支持者を中心とした指摘です.

f:id:yachikusakusaki:20190904172120j:plain

Hate Crime Statistics | HATECRIMES | Department of Justice

 

このようなヘイトクライムには,全米で相次ぐ悲惨な銃撃事件の幾つかも含まれていると指摘されています.

例えば,

今日,バックに流れていたテレビニュースで,アメリウォルマートが銃弾と拳銃の販売を停止する措置をとったことが報道されていました.

f:id:yachikusakusaki:20190904220624j:plain

 

日本での報道は,銃規制の問題が中心.

アメリカでも当然銃規制が中心の報道でしょうが,ウォルマートによる銃販売規制は2019年8月に起こった銃撃事件(20名死亡 

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019080400112&g=int )を受けたもの.

 

反ヒスパニックのヘイトクライムではないかとの議論があった事件で,トランプ大統領が見舞ったところ,「このような事件が増加したのはトランプ大統領の言動による」との批判が巻き起こりました.

www.jiji.comトランプ氏、銃乱射現場訪問へ=地元からは反発も-米:時事ドットコム

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/16975

 

トランプ大統領の言動によるヘイトクライムの増加は,トランプ効果(the Trump Effect)と呼ばれているそうで,多くの研究者もこの見解を支持し,「証明できた」とする論文も現れています.

(最下欄に,要約の拙訳を掲載)

トランプ氏は,銃撃事件の犯人は精神病者と決めつける発言をしているとのこと.いかにも差別主義者らしい決めつけ.

植松被告のことは,なんと呼ぶのでしょうか?

 

トランプ大統領の言動には辟易とさせられ,世界をどこに向かわせるのか憂鬱ですが,日本でもヘイトクライムを煽りかねない報道やネット記事が数多く見られます.

昨日・今日,週刊ポストの韓国ヘイト記事が問題とされていました.悲しく怖ろしいこと.

しかし,いわゆる「嫌韓」を煽っているのは,「オヤジ系のメディアだけ.オンナコドモは違う」と

斎藤美奈子氏.

信じたいです.信じます.

f:id:yachikusakusaki:20190904230615j:plain

 

ヘイトクライムへのトランプ大統領選挙の影響

The Effect of President Trump's Election on Hate Crimes

Griffin Sims Edwards and Stephen Rushin

The Effect of President Trump's Election on Hate Crimes by Griffin Sims Edwards, Stephen Rushin :: SSRN

 

 

要約

Abstract

 

この小論は,ドナルド・トランプが力を高めたことと,ヘイトクライムの報告が最近増加したことの関連性を,実際に起きたことから評価するものである.多くの評者が,大統領選挙キャンペーンと選挙戦中のトランプ大統領の軋轢を生むレトリックが,ヘイトクライム加害者を大胆にさせ,その結果,より多くのヘイトクライムを生むことに荷担したと推論している.メディアのコメンテーターは,このことをトランプ効果と名づけている.

This Essay empirically evaluates the relationship between Donald Trump’s rise to power and the recent increase in reported hate crimes. A number of critics predicted that President Trump’s divisive rhetoric during the presidential campaign and his subsequent election would embolden hate crime perpetrators, thereby contributing to more hate crimes. Media commentators have dubbed this the Trump Effect.

 

我々は,トランプ効果仮説を支持する説得力のあるエビデンスを見つけている.'時系列分析(time series analysis )'の手法で,2016年11月のドナルド・トランプの選挙が,全米にわたったヘイトクライムのうねりと統計的に有意に関連性を持っていることを示した.別の可能性を照合して確かめてみたときでさえ,関連性が見られた.さらに,‘パネル回帰手法 (panel regression techniques)’を用いることによって,大統領選挙で大差でトランプ大統領に投票した地方ではヘイトクライムの報告が大きく増加していることがわかった.

We find compelling evidence to support the Trump Effect hypothesis. Using time series analysis, we show that Donald Trump’s election in November of 2016 was associated with a statistically significant surge in reported hate crimes across the United States, even when controlling for alternative explanations. Further, by using panel regression techniques, we show that counties that voted for President Trump by the widest margins in the presidential election also experienced the largest increases in reported hate crimes.

 

この研究のデータを用いて,ヘイトクライムの原因に関する現存の論を発展させる新しいセオリーを提供する.我々の仮説では,ヘイトクライムを増加させたのは,政治キャンペーン中の扇動的なレトリックのみでない.むしろ,当選後の大統領として行った選挙がヘイトクライムを増加させ,犯罪を起こそうとする人の目の前でこのレトリックを公認し,ヘイトクライムへの高まる気持ちを煽ったのである.

Using the data from this study, we offer a novel theory that builds on the existing literature on the causes of hate crimes. We hypothesize that it was not just Trump’s inflammatory rhetoric throughout the political campaign that caused hate crimes to increase. Rather, we argue that it was Trump’s subsequent election as President of the United States that validated this rhetoric in the eyes of perpetrators and fueled the hate crime surge.

 

Keywords: Hate Crime, Causes of Crime, Donald Trump

 

SSRN(Social Science Research Network)

24 Pages Posted: 18 Jan 2018 Last revised: 31 Jan 2019

Griffin Sims Edwards

University of Alabama at Birmingham - Department of Marketing, Industrial Distribution & Economics

Stephen Rushin

Loyola University Chicago School of Law

Date Written: January 14, 2018