早朝の散歩で見つけた,というノブドウの写真を送ってきてくれました.
ブドウ科 Vitaceae, ノブドウ属 Ampelopsis, ノブドウ A. glandulosa. var. heterophylla
以前,開墾した?ガーデンでよく見かけ,ジャマもの扱いしていました.
でも,ゆったりした気分のときに見るとかわいらしく美しい実です.
観賞用としても育てられているとか.
そして,このノブドウにはもう一つよく知られていることが:
「ノブドウには虫こぶ(虫えい)ができる」
野山の植物をよく知る方々の間では,当たり前の話題らしい.写真を送ってくれた彼女も触れていました.
でも,私は全く知りませんでした.
虫こぶって,あの虫こぶ?私が思い浮かべるのは次の画像のような姿.
http://chemicalecology.agr.ibaraki.ac.jp/gall.html
虫こぶの別名は,虫えい.
こちらが,多分,専門用語.英語では一般的にゴール(ただし,ゴールは虫が作るもの以外も含む).
名前の付け方にはルールがあって,
「シバヤナギハウラタマフシ」(上図)は,
「シバヤナギ」の「葉の裏」に形成される「玉状」のゴール
の意味だそうです.
http://chemicalecology.agr.ibaraki.ac.jp/gall.html
では,ノブドウの虫こぶって?
元々がノブドウの「実」の虫こぶなので,何という名前で呼ばれているのか?
「ノブドウミフクレフシ」
なんと巧妙かつ大胆な名前.場所といっても特定できる場所はなく,全体がふくれるということですね.
グーグル検索の画像は以下の通り.
上図の上最上段左端から1〜4番目,2段目1,3番目画像からは,色づく前の実がふくれているのが,よくわかります.
2段目左から2番目の画像は,寄生するノブドウミタマバエのさなぎだそうで,この幼虫が実をふくらませる!
ここまでは,あ〜そうなのか,で皆が納得する話なのですが---
植物愛好の諸氏を悩ませている話題があるようで---
「虫えい果実は様々な色になり、正常な果実はほとんどない(少ない)」 (牧野新日本植物図鑑、樹に咲く花、植物の世界)
http://www.geocities.jp/kinomemocho/sanpo_nobudo.html
さらにこれを発展させたような:
「白い実は本来の実であり、青色や紫色の実は虫が寄生している寄生果」
とういう記述.
そしてこの記述の内容が,ネット上で,また口コミで広まっているらしい.
ウィキペディアを信用しない方でも,
あの「牧野新日本植物図鑑」に記載している!(私は確認していません.上記引用させていただいた方の記述通りならば)
ということで,普通なら信じてしまう.
しかし,観察してみるとそのような事実はなさそう----
悩ましい.という方が,ネット上で何人かおられました.
もっと野の草花に入れ込んでいたら,私も,多分同様に悩んでいたのでしょう.
しかし,
「多くの方々が,色づいたノブドウの実からノブドウミタマバエの幼虫は発見できていない」というネット上の検索からわかる事実.
突然この話題に飛び込んだものの強みで,気楽に結論づけてしまいました.
寄生で色が変わることはないんだな,と.
一例としてこんな記事を目にしました.
「色彩の変異は,実が熟す過程の変色や,ノブドウミタマバエの寄生が原因で起こると言われています.
因みに,写真の実を10数個割いてみましたが,いずれの実もノブドウミタマバエの幼虫は発見されず,食害されていない大きな種が見つかりました」ノブドウのカラーバリエーション | 北杜市オオムラサキセンター公式サイト
これだけの数,様々な色のノブドウに,一つも幼虫が発見されないのですから,「牧野新日本植物図鑑」「ノブドウ/ ウィキペディア」の記事は,間違え.
ですよね?
(それにしても,ノブドウの実のこの写真!なんと美しいことでしょう!)
もちろん,このような結論をはっきり書いてておられる方,ほぼその結論に達しておられる方はおられます.
もちろん,私と違って,ご自分で観察実験して.
不思議な虫えい③ ノブドウミフクレフシ ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界 五色のノブドウにもエビヅル虫 ( その他自然科学 ) - 岩井渓の自然と遊ぼ! - Yahoo!ブログ ノブドウの果実
さらに,とても詳細な観察記録が記載されていて楽しく読ませていただいたサイト(上記の3番目に当たります)
http://www.geocities.jp/kinomemocho/sanpo_nobudo.html
には,他の図鑑類の記述も記載されています.
果実は(緑色から順次)白色,(淡)紫色,青(碧・空)色となって成熟する.
(日本の野生植物、原色日本植物図鑑、APG原色牧野植物大図鑑)
なお,「ノブドウミフクレフシ」をつくる虫については,こんな記載がありました.
“ノブドウの果実にはタマバエの幼虫が寄生して虫えい(虫こぶ)を作ることが多いのですが,インターネットで「ノブドウ」や「ノブドウミフクレフシ」で検索すると「ブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生して虫えいを作ることが多く・・・」という記述が多く見られます.
これは山渓ハンディ図鑑の引き写しだろうと思われますが,正確にはブドウタマバエとかブドウトガリバチという虫は存在せず,この虫えい(虫こぶ)はノブドウミタマバエ(ノブドウタマバエ)によって形成されたものがほとんどなのです.”
虫えい(虫こぶ):ノブドウミフクレフシ - かわ遊び・やま遊び雑記
この記事の真偽については私には分かりません.しかし,いかにもありそうなことだな,と思います.