昨日までは,“植物をたどって古事記を読む” シリーズとして,
・「長さ10センチのガガイモの実でできた船(アメノカガミ船)に乗って現れたスクナビコナにまつわる話題」や
・「ガガイモの名称と漢字」を取り上げてきました.
今日・明日は,締め括りとして,植物としてのガガイモとその仲間たちについて.幾つかの話題を集めようかと思います.
ガガイモ(カガミ)5
▽ガガイモ属からイケマ属へ
ガガイモは,従来は
ガガイモ科,ガガイモ属,
ガガイモMetaplexis japonica (Thunb.) Makino / Metaplexis chinensis / Metaplexis stauntonii
とされていました.
APG体系では,キョウチクトウ科の植物という事になり---
https://lovegreen.net/succulents/p194768/
つい最近になって,
ガガイモ属もなくなって,イケマ属 Cynanchumへ.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.12705/653.3
リンドウ目 Gentiales,キョウチクトウ科 Apocynaceae,イケマ属 Cynanchum,
ガガイモ C. rostellatum
イケマ属へは,従来のMetaplexisガガイモ属以外に
Adelostemma,Glossonema,Graphistemma,Holostemma,Metalepis,Odontanthera,Pentarrhinum,Raphistemma,Seshagiria,Sichuania等の属が統合されたとのこと
多くの方が,旧ガガイモ科の花を愛しておられるようで---
ネット上では,ガガイモ科が無くなってしまったことを惜しむ気持ちと共に,旧ガガイモ科の植物の画像を集めたサイトが立ち上げられています.美しい花,珍しい植物があるようです.是非立ち寄ってみて下さい.
https://lovegreen.net/succulents/p194768/
このサイトも参考にさせて頂きながら,ガガイモとその仲間たちの話題を幾つか拾っていきたいと思います.
毒性/可食かどうか,薬効
今日も,様々なサイトの記事の羅列になってしまいます.
一因は,結論がつけられないから.
多くのサイトの記事は,かなりバラバラで,まとめると
「毒性があって食べられる.強精剤にもなって腫れ物の塗り薬になる」
しかし,実際に毒に当たったり,接触皮膚炎を起こした例は報告されていません.
レシピも見つからず,食べたという記事もない.
薬として利用したという経験談も見つかりません.
そして,信頼に足る出典も掲載されていません.
▽ガガイモの毒性は?ガガイモは食べられる?
ガガイモには毒性があると記載しているサイトがいくつかあります.
例えば
http://wwwts9.nibiohn.go.jp/zukan/kagyou.html
ただ,このサイトでは,出典,及び,どのような毒性がどの部位にあるか,を記載していません.
家畜の中毒が予想される雑草を集めた農研機構のサイトでは,
https://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/weed.html
「 原色牧野植物大図鑑では根が有毒とあるが,TOXLINEでは該当がない」とのこと.
どちらも有名な図鑑/データベース.この記載をどう捉えたらいいのか?
(TOXLINE:アメリカ国立医学図書館製作の毒物学分野のオープンアクセスデータベース群,TOXNET*を構成するデータベースのひとつ)
別のサイトでは,新しい分類で同じ属(イケマ属)となったイケマの根は有毒と記述しつつ,ガガイモの毒性には触れていない
;言外に「ガガイモには毒性はない」と言っているかのようにも思えます.
http://www.e-yakusou.com/sou/soum047.htm
毒があるとしても根ならば,人が口にすることはまずないでしょう.
一方,葉/茎の汁液が皮膚炎を起こすとの記載も散見.
例えば,
http://infoseek_rip.g.ribbon.to/kitola.hp.infoseek.co.jp/dokusou/gagaimo.html
毒草名 ガガイモ、ゴガミ、クサパンヤ、カガミイモ、羅摩(かがみ)、クサワタ
毒部位 汁液
成 分 シナンコトキシン(Sinankotokisin)、シナンコゲニン、プレグナン配糖体
症 状 皮膚炎
ここまで書かれると,信頼できそうに思ってしまいますが,なぜか,その他の多くの記事は汁液の毒性に触れていません.
それどころか,
「茎葉から出る白い汁は,イボやヘビ,虫刺されに患部に塗布します」と書かれています.
http://www.e-yakusou.com/sou/soum009.htm
断定は出来ませんが,ガガイモの汁液の毒性は,「皮膚が敏感な方は注意した方がいい」といった程度?
そして,何と言っても,ガガイモは食べられる!
「若芽は,熱湯でゆでて,水にさらしてアク抜きをしてから,油いため,煮物,混ぜご飯などにして食べます」
http://www.e-yakusou.com/sou/soum009.htm
「若い実は天婦羅や味噌漬けにして,若芽や蔓は天婦羅,御浸し,和え物,酢の物などにして食べることができる」
「中国:葉は塩味で炒めて食べる」
China: leaves eaten with oil and salt
https://www.purdue.edu/hla/sites/famine-foods/famine_food/metaplexis-chinensis/
しかし,レシピを検索しても見つかりませんでした.
皆さん,このような記事に対して,半信半疑なのでしょうか?
▽ガガイモの利用:綿/薬
ガガイモを解説している多くの辞書,そしてウェブサイトが,ガガイモの利用として
1. 綿の代用,2. 薬としての利用(生薬 羅摩子らまし),に触れています.
例えば,
「種子は扁平で絹糸のような白い長毛を多数もち,風に乗って飛ぶ.
種子の毛は古くは綿の代用にされ,現在でも印肉などに使われる.また,葉とともに乾燥させて強精薬にもする」
植木ペディア
「実は長さ10センチほどで垂れ下がり,熟すと割れて中から長い綿毛のある種子が顔を出す.この綿毛を集めて針指しやスタンプの印肉を作ることができる」
「長い旅先でガガイモとクコを食うな(=強壮効果が絶大であり,旅先での浮気につながる)」という言い伝えがある.若い実は天婦羅や味噌漬けにして,若芽や蔓は天婦羅,御浸し,和え物,酢の物などにして食べることができる」
「葉はイモと同じように細いハート型.表面には艶があり,裏面は白い.葉や蔓を切ると乳液がにじみ出るが,これには解毒作用があり,虫刺されに効果があるという」
イー薬草・ドット・コム
http://www.e-yakusou.com/sou/soum009.htm
和名:蘿摩 / 生薬名:羅摩子(らまし)
初秋に果実,種子,葉を採取して,日干しにして乾燥させます.果実を乾燥したものを生薬で,羅摩子(らまし)といいます.
なお,同属イケマからは生薬“牛皮消(いけま)”が作られます.
生の葉は,随時採取します.
滋養強壮に,乾燥した種子,茎葉を粉末にして1日2回2~3グラム服用します.
茎葉の粉末と,クチナシの果実の粉末を,酢で練って,腫れ物などに外用として塗布します.
生の茎葉は,解毒,腫れ物に,細かく切ってから,麦粉・酢と良く練って外用で患部に塗布します.
茎葉から出る白い汁は,イボやヘビ,虫刺されに患部に塗布します.
種子の白毛は,切り傷の止血になります.
(イケマも,ガガイモと同様に,茎葉を折ると白い汁を出し,似たような薬効がありますが,根には,アルカロイドを含み毒性があります)
明日は,ガガイモの仲間たちの話題を幾つか.
例えば次のような:
幼虫が旧ガガイモ科のキジョラン、カモメヅル、イケマ、サクラランなどを食べているアサギマダラ.
ガガイモは食草として記されていません.