シソ目の植物について,簡単な解説を探してまとめるシリーズ.
今日は第六回(シソ科第一回)
以後しばらく,シソ目の中心となっていると言って良いシソ科の植物を取り上げていきます.
シソ科といえばハーブ類を思い起こしますが,ハーブ類はほとんどがイヌハッカ亜科に分類されています.
ムラサキシキブ属はシソ科の中では一番端に位置し,少し前はクマツヅラ科に分類されていました.
今日暗くなってから,おんめ様(鎌倉大巧寺)の小径で撮った,コムラサキの花です.
丁度咲き始めたところでした.
秋になると紫色の実が沢山なって,境内を彩ります.
昨年撮った画像です.
(以下の画像,そして内容も昨年の秋にまとめたものとほぼ同じになっていますhttps://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/10/12/235500 )
おんめ様では,このコムラサキに「ムラサキシキブ」の名札を付けていますが,フラワーショップでも同様です.
「ムラサキシキブより,紫色が圧倒的に鮮やかで美しい.でもムラサキシキブの名前で売りたい」ということでしょう.花の名前として属名を用いることも広く行われているので,間違いというわけではありません.
ムラサキシキブ属は,英語ではBeautyberryと呼ばれています.実の美しさが際立っているとの評価かと思いますが---
コムラサキはPurple Beautyberry
ムラサキシキブはJapanese Beautyberry
おんめさまのコムラサキには,白い実をつける品種もあります.
ムラサキシキブは,実の色の鮮やかさではコムラサキに負けていますが,風情のあるなしで言えば,ムラサキシキブに軍配が上がるようにも思います.
ヤブムラサキ Callicarpa mollis クマツヅラ科 Verbenaceae ムラサキシキブ属 三河の植物観察 トサムラサキ (Callicarpa shikokiana) Callicarpa americana - Wikipedia Callicarpa bodinieri - Wikipedia
「ムラサキシキブ」はとても良い名前.
この名前は,当然日本最初で最高の女流作家「紫式部」をイメージしたものでしょうが,直接の関係はないとされています.
ニッポニカ https://kotobank.jp/word/ムラサキシキブ-873314 によれば,
江戸時代には
「実紫」(『立華正道集(りっかしょうどうしゅう)』1684)
「玉紫」(『抛入花伝書(なげいればなでんしょ)』1684)と記載され,
「紫しきみ」「小紫」の名前が方言として挙げられているとのこと.
そして,
「“植木売は紫式部といふ”と,ムラサキシキブの名が,商売上の美飾名から広がったことを示す記述がある(『抛入花伝書(なげいればなでんしょ)』1684)」
とのこと.
ムラサキシキブの実を食べる話はあまり聞きませんが---
「ムラサキシキブの熟した果実を採取して、リキュールを作る。3倍量の35度ホウイトリカーと氷砂糖少し入れて、3~4ヶ月程度で、ハーブの香りのするリキュールができるという.
南太平洋のヤップ島、パラオ島では、野生する、ムラサキシキブやコムラサキ属の枝葉を、石で叩き潰した汁を流して魚を採る.
ムラサキシキブの同属の植物は、魚には有毒で人には無毒であり、水に浮いた魚を集めて食べる.」(http://www.e-yakusou.com/sou02/soumm056.htm)
との記載があります.
また,「アメリカン・ビューティーベリーCallicarpa americana(アメリカ南東部原産)の熟した実からはゼリーができる」(https://en.wikipedia.org/wiki/Callicarpa)
とのこと.