先日出かけた国立博物館特別展「毒」.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/02/17/235453
独自に勉強したことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介しています.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.
今日は「毒の博物館」2 -植物の毒の二回目.
身の回りの植物の毒の紹介になるかと思います.
強い毒の話に比べて,かなり退屈な内容かもしれません.
しかし,生活する上での知識としては,最も大切なコーナーといえるでしょう.
パネルには次のように記述があり,続いて「日本における過去50年間の種子植物による食中毒」の表が掲載されていました.
根・茎・葉を守る
植物にとって根・茎・葉は体を支え,栄養分を作る大事な器官なので,刺(とげ)などの物理的な方法やさまざまな毒で守ろうとします.
ヒガンバナの鱗茎にはリコリン,ジャガイモに生じる新芽にはソラニンという毒性アルカロイドが蓄積されています.
多くの植物で特に根に毒が多いのですが,たいてい葉や茎などにも同様の成分が含まれます.
国内の食中毒で被害人数が最も多いのは実はジャガイモですが,理科の授業で栽培・収穫したものを学校で調理したことによる集団食中毒が多いのが要因です.
「日本における過去50年間の種子植物による食中毒」の表の内容に関連した展示がもっとあってもよかったと思います.
以下,少しつけ加えさせていただきます.
頻繁に食中毒が報告される植物は,ジャガイモを除いては,「誤食」が原因といってよいでしょう.
このことはとても重要と思います.
誤って食べられることがないのなら,強い毒性を持つ植物でも,それほど危険とはいえない.もちろん悪意をもって混入された場合の危険性は別の話題になります.
日常生活を過ごす中では,誤食しやすい毒草・毒果実が危険なんですね.
例えば,
2位のバイケイソウの新芽は,山菜「オオバギボウシ」の芽とそっくりです.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077675.html
チョウセンアサガオは,薬用として栽培されてきましたが(薬用に使用されるスコポラミン,アトロピンを含む),現在は,園芸用として栽培されることが多くなっています.中毒が多いのは根をゴボウと間違える例.その他,開花前のつぼみをオクラと,葉をモロヘイヤ・アシタバなどと,種子をゴマを間違える例もあるそうです.
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_det_11.html
https://www.pref.okayama.jp/site/712/465877.html
トリカブトは,ニリンソウと間違われることは前回取り上げました.毒性が強いため,最も多くの死者も報告されています.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082112.html
5位の「ヤマゴボウ類」という表記はわかりにくいですね.多くはヨウシュヤマゴボウかと思いますが,これも若い根がゴボウと間違われます.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079871.html
6位のスイセンには,ヒガンバナと同じ毒性成分リコリンが,ヒガンバナと同程度の量,存在しています.細いスイセンの葉はニラと,小さいスイセンの球根は,ノビルと間違えて食べられることがあります.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075843.html
なお,ヒガンバナをニラと間違えた例も報告されていますが,中毒件数はランキング外になっています.
https://www.niph.go.jp/h-crisis/archives/136656/
展示に戻ります.
毒性を知っておいた方が良い標本の展示が続いていました.
インゲンマメとモロヘイヤの毒性は知りませんでした.
花・果実・種子を守る
生殖器官である花や果実は,植物が最も守りたい代表的な部位です.
レンゲツツジは花の蜜にツツジ科特有の毒成分グラヤノトキシンを含み,吸うと嘔吐や目眩(めまい),視覚異常などの症状を起こして中毒します.
インゲンマメには,嘔吐や下痢を起こす毒成分が含まれるため,よく加熱して食べることが必要です.
モロヘイヤやビワの種子にも毒があります.