先日出かけた国立博物館特別展「毒」.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/02/17/235453
独自に勉強したことをつけ加えながら,内容を少しずつ紹介することにしました.主催者も「シェアしよう」とすすめていることもあり.
前回は「毒の博物館」1として,攻めるための毒,守るための毒について,ハブ,イラクサを中心に紹介しました.
今日は「毒の博物館」2 -植物の毒の一回目.
この展示では,強い毒をもった植物,身近に見られる有毒植物などを紹介していましたが,今回は強い毒をもった植物の展示内容から.
植物の毒はさまざまありますが,いずれも,機能としては「守るための毒」と考えられます.
植物毒の本体は,生長,生殖・代謝などとは関係がない物質で,二次代謝物の1つということになります.
日本の三大有毒植物と呼ばれ,
「トリカブトは手足のしびれ,嘔吐,痙攣を,ドクウツギは重症の場合,全身麻痺を引き起こします.ドクゼリは目眩,呼吸困難などの症状が出ます.いずれも死に至る場合があります」とありました.
有毒部分は,
ドクゼリ:全草. トリカブト:全草,特に根. ドクウツギ:全草,特に果実.
ドクゼリには,「食用のセリに混在する場合があるため注意が必要です」との解説も.
厚生労働省からも注意が呼びかけられています.
誤食注意:ドクゼリとセリ.
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/higher_13.html
なお,トリカブトも山菜と間違えて食べられてしまうことがあります.
誤食注意:芽生え期のトリカブトとニリンゾウ.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082112.html
どちらも私には見分けられそうにありませんが----
日本で見かける有毒植物としてはイヌサフランも紹介されていいて,こちらは,ギボウシやギョウジャニンニクと間違われてることがあるそうです.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000058791.html
世界に目を向けると,さらに強い毒をもった植物があります.
展示で紹介されていたのは,ゲルセミウム・エレガンス,ジャイアント・ボグウィード,マチン.
「ゲルセミウム・エレガンスはゲルセミンなどの神経毒を含み,呼吸中枢を麻痺」
「ジャイアント・ホグウィードは,光毒性がある毒物を生産し,樹液に触れた後で太陽光に当たると深刻な皮膚炎を発症」
「マチンには有名な神経毒のストリキニーネが含まれ,激しい痙攣を引き起こす」
とありました.
ストリキニーネは,とてもよく知られていて,聞いたことがある方も多いかと思います.
インド、東南アジア、オーストラリア北部に分布するマチンの種子に含まれます.マチンは中国名で漢字では馬銭.英語でstrychnine tree.リンドウ目,マチン科マチン属の植物で,学名Strychnos nux-vomica.種子はホミカと呼ばれています.
ストリキニーネはあまりにも猛毒で一般には出回らないのかと思っていたら,イヌの殺処分用に使われていた(いる?)とのこと.これが殺人に流用されて,驚いた覚えがあります.
https://www.sankei.com/article/20170327-LORVOUOLKNPQFBHTMDFJJUSTUU/
ゲルセミウム・エレガンス(リンドウ目ゲルセニウム科ゲルセニウム属)は,東南アジア〜中国原産.和名「冶葛(やかつ)」で正倉院御物に保管されているとのこと.
私は全く知りませんでしたがとても強い毒をもつと有名な植物だとのこと.世界最強植物毒説も.https://gkzplant.sakura.ne.jp/mokuhon/syousai/kagyou/ke/gerusemiumueregannsu.html
英語でネット検索してみると,2012年,2017年の殺人事件にこの植物が使われたという記事がみつかりました.
1つは中国億万長者の殺人事件.
https://www.bbc.com/news/world-asia-16409523
もう一つは,ロシア人の内部告発者の死亡事件.こちらは殺人と認定されたのかどうかこの記事では不明.
https://www.bbc.com/news/uk-england-surrey-39258525
ジャイアント・ホグウィード(セリ目セリ科ハナウド属)はコーカサス山脈と南西アジアが原産で、ヨーロッパ、イギリス、カナダ、アメリカに園芸用の珍しい植物として持ち込まれたとのこと.
その光毒性は欧米ではかなり有名で,警告する論文もみつかります.
https://www.mmsl.cz/pdfs/mms/2017/03/06.pdf
そして
「公園で遊んでいた少女(4歳)が恐ろしい火傷を負う、ジャイアント・ホグウィードに注意喚起(2022年6月15日)」という記事も.
https://www.lbc.co.uk/news/giant-hogweed-warning-girl-burns-bolton/