先週出かけた国立博物館特別展「毒」.
前回は「行ってきたよ」というだけのブログ記事になってしまいました.
https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/02/17/235453
今日から,何回かに分けて少しずつ内容を紹介していきたいと思います.気になって私が調べたことをつけ加えながら.
写真が頼りですが,うまくまとめられるかどうか----
この特別展は5つの展示(第1章〜最終章)に分けられていて,前回は「第1章 毒の世界へようこそ」の一部を紹介しました.
今日は,「第2章 毒の博物館」1.
「毒の博物館」は5つの展示の内で一番人気.
入場者が列をなし,全く進まないかと思わされたところです.当日の列の進行に合わせて(?),ゆっくり紹介します.今日は冒頭のほんの一部だけになります.
このコーナーでまず目を惹くのは,前回も紹介した拡大模型.
ハブは約30倍.スズメバチは約40倍.
「毒の博物館」は,次のように紹介文から始まっていました.
○毒の博物館
この世界にはどんな毒があるでしょう?
本章では自然界に存在するさまざまな毒と,毒をもった生物を紹介します.
生物が毒をもつ理由は,「身を守るため」と「攻撃するため」と考えられます.生物以外の世界にも毒は存在します.また,人間が作った毒もあります.
さあ,毒の多様な世界を探検してみましょう.
「守るための毒」と「攻めるための毒」.この展示のコンセプトの1つになります.
ハブとスズメバチは「攻めるための毒」をもつ代表といえるでしょう.
「攻めるための毒」は.人間に対しては守るためにも使うのでしょうが.
本物のハブも,もちろん展示されていました.こちらも迫力ありますね.
(私には見分けがつきませんが,模型/レプリカ表示がない=本物と判断)
ハブの毒牙は,長く恐ろしい形状ですが,これが「格納されている」「注射針のように穴が開いて管状になっている」とのこと.知りませんでした.
一方の「守るための毒」.
このような毒をもつ代表選手として取り上げられていたのが,「セイヨウイラクサ」と「イラガの幼虫」.こちらもかなり大きな拡大模型が用意されていました.
イラクサは漢字で刺草.イラガは刺蛾.毒をもつ草と蛾の代表といってよいかと思われます.
拡大すると恐ろしさを感じますが,攻撃してこないことを知っているので,ハブやアシナガバチの恐ろしさとは程度が異なります.
イラクサの針は,サボテンやバラなどのトゲとは異なり毒を含んでいる!
しかもしかも---調べてみると:
蕁麻疹はイラクサ由来の言葉.そして,イラクサの毒性成分の1つは,アレルギーを引き起こす体内成分と同じ物質ヒスタミン.動物と同じ成分を作っている.
https://kotobank.jp/word/刺毛-75330
ただ,知らなかった私が驚いているだけで,隣の昆虫イラガの幼虫もヒスタミンを作っているとのこと.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmez/58/0/58_0_66/_article/-char/ja/
しかし,イラガの幼虫も拡大すると迫力ありますね.
”調べてみました!”
少し長くなりますが,ハブ,イラクサ,イラガについて調べてみました.出典は一部記載しておきましたが,記載なしの項目も含め,ニッポニカが主で,他に日本国語大辞典,字源,ウィキペディア等からまとめてあります.
◎ハブは,クサリヘビ科Viperidaeマムシ亜科 Crotalinae,ハブ属.
▽マムシ亜科のヘビ
マムシ属 Gloydius Gloydius blomhoffii
ヤマハブ属 Ovophis
Ovophis okinavensis ヒメハブ
ハブ属 Protobothrops
Protobothrops elegans サキシマハブ
Protobothrops flavoviridis ハブ(ホンハブ,オキナワハブ,リュウキュウハブとも)
Protobothrops mucrosquamatus タイワンハブ
Protobothrops tokarensis トカラハブ
(日本で見られないマムシ亜科の毒蛇:▽ガラガラヘビ属 Crotalus,▽アメリカマムシ属 Agkistrodon 等)
▽コブラはコブラ科コブラ属に含まれるヘビの総称.インドコブラ,エジプトコブラ等.
◎ハブ
▽生態
夜行性で,日中は石垣,岩の穴,古墓などの中に潜んでいるが,夕方から活発に行動する.
生息場所としては,巣穴となりうる穴の多い石灰岩地域がとくに多いようである.樹上で活動したり人家内に侵入することも多く,3月ごろから11月にかけて巣穴から出てよく活動し,この時期には咬症(こうしょう)者も多い.冬季にはサトウキビ畑に隠れている場合があり,収穫作業中の咬症がみられる.
餌はおもにネズミ類であるが,ときに鳥類,トカゲ,カエル,無毒ヘビなどを食べ,これまでに65種の脊椎動物(せきついどうぶつ)が記録されている.輻射熱を感知する穴「類窩」があり,これで夜間でも餌動物を正確に探知する.毒牙は上顎に2本あり,かまれると毒液が深く注入される.
▽ハブ毒
ハブ毒はほとんどタンパク質からできており,タンパク質分解酵素等,多種の酵素を含有.
その毒作用は,出血,腫脹(しゅちょう),壊死(えし)などの激烈な局所炎症をおこすことが特徴である.すなわち,受傷局所は内出血のため暗紫色となり,強く腫(は)れる.また,筋肉組織を融解して壊死に至らしめるので,手足をかまれた場合は機能障害をおこすことも多い.治療には「ハブ抗毒素」を早期に注射する必要がある.
鹿児島,沖縄両県ではそれぞれハブによる咬症が年約400件あり,うち約1%の死亡者がいる.
毒性はニホンマムシよりも弱いが,毒牙が1.5センチメートルと大型で毒量が100 - 300ミリグラムと多い(フィールドワーカーのための毒蛇咬症ガイド 堺 淳, 森口 一, 鳥羽 通久).
▽マムシ毒も主成分は出血毒で,毒性はむしろハブよりも強いが,平均注入量が少ないため,致命率はきわめて低い.
▽コブラ毒は急性に作用する神経毒(運動神経シナプス膜上のアセチルコリン受容体に強く結合して神経伝達を遮断する)を含み,致死作用が強い.
▽ヤマカガシは分類上は無毒ヘビであるが,上顎(じょうがく)後方の葉の基部にある腺の分泌液には出血性成分が含まれて,奥歯で深くかんだ場合など,体質や毒量によっては皮下出血や毒ヘビの咬症(こうしょう)に似た症状がおこるケースがまれにある.また,頸腺の液が天敵の目や口腔(こうこう)粘膜に付着すると炎症をおこさせ,自衛手段として有効なようである.
◎イラクサ
いらくさ / 刺草 Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.
(いらくさは「刺草」の他,「莿草」「蕁麻」とも表記される)
▽イラクサの刺毛(しもう)と刺激物質
バラ目イラクサ科の多年草.植物体全体に特殊な刺毛があり,触れると激しい痛みを感じる.
イラクサの刺毛では,先端部がケイ酸質化,基部が石灰化して,鋭い毛細管となっているばかりでなく,ヒスタミンやアセチルコリンなどの刺激性物質を含む.
イラクサの刺毛は表皮の一部分に由来し,毒液を分泌する一種の腺毛(せんもう)といえる.バラ,タラノキなどの刺は,表皮だけでなく,皮層も加わった突起物であり,一種の毛状体である.植物の刺としては,他に,器官の変態した茎針,葉針,根針がある.
▽総称としてのイラクサ
イラクサは,イラクサを含め,以下のような種を含むイラクサ属Urtica L.,およびそれに近縁で,中にギ酸を含む特殊な刺毛を植物体に生じる,ムカゴイラクサ属Laporteaやオニイラクサ属Girardiniaの草本の総称としても用いられる.
イラクサ属
セイヨウイラクサ (Urtica dioica)(英名:Stinging nettle)
Urtica pilulifera L.(英名はRoman nettle)
蕁麻(じんま)(タイワンイラクサ)Urtica fissa E.Pritzel
▽イラクサの利用
イギリスでは若芽はゆでたり粥(かゆ)に入れたりして食べ,葉は煎(せん)じてじんま疹やリウマチの民間薬に使った.日本でも若葉は食用にされる.イラクサは英語ではNettle(ネトル)と呼ばれるが,日本でもハーブティーの一つ(ネトルティー)として利用されている.
ヨーロッパでは古代から中世にかけて,茎からとった繊維で衣料やロープをつくったり,茎葉を家畜の干し草に,また種子を飼料にした.このような実用面を無視して,花ことばは「残酷,中傷,悪意,あるいは私の心を破る」とされている.
▽「刺」と「いら」
刺 字源
❶さす.
❷かりとる.
❼とげ.はり.のぎ.同莿し類棘きよく・針・芒ぼう
いら【刺・莿・苛】日本国語大辞典
①草木のとげ.〔新撰字鏡(898−901頃)〕 ②魚の背びれのとげ. ③植物「いらくさ(刺草)」の略称.〔新撰字鏡(898−901頃)〕 ④昆虫「いらむし(刺虫)」の略称. ⑤金平糖こんぺいとうの角つの. ⑥「くらげ(水母)」の異名.
▽「じんま疹」という言葉はイラクサ由来
じんま疹という言葉は,その症状が,蕁麻(じんま=イラクサ/タイワンイラクサ)の刺毛に刺されてできた火ぶくれに外見的に似ることからついた.
また,じんま疹の英語は ' urticaria'.ラテン語の urtīca「イラクサ」に由来することば.
(蕁麻疹はurticariaの翻訳語?)
◎いらが【刺蛾】 日本国語大辞典
イラガ科のガ.はねの開張一~一・五センチメートル.全体に黄褐色を帯び,前ばねに二本の褐色の縞がある.幼虫はイラムシと呼ばれ,体長約二・五センチメートルの毛虫.さなぎは「すずめたご」 「すずめのしょうべんたご」と呼ばれる卵形の堅い繭の中で越冬し春に羽化する.日本各地に分布.
https://kotobank.jp/word/ハブ-7444
https://kotobank.jp/word/毒牙-104669
http://www.drugsinfo.jp/2007/08/17-195000
https://kotobank.jp/word/ヘビ毒-130032
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハブ_(動物)
https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/syoho/documents/50-p57-61.pdf
https://ja.wikipedia.org/wiki/クサリヘビ属
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tmh1960/7/2/7_2_1/_pdf/-char/ja
https://kotobank.jp/word/マムシ-137179
https://kotobank.jp/word/コブラ-1535564
https://kotobank.jp/word/コブラ毒-2126940
https://kotobank.jp/word/ヤマカガシ-144025
https://kotobank.jp/word/イラクサ-32353
https://www.1101.com/michikusa/2010-06-11.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/イラクサ
https://www.medicalherb.or.jp/archives/3088
https://kotobank.jp/word/とげ-1568860
https://kotobank.jp/word/刺毛-75330
https://kotobank.jp/word/刺蛾-436292
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmez/58/0/58_0_66/_article/-char/ja/